9月22日からドイツのハノーファーで開催されたIAA(Internationale Automobil-Ausstellung)の商用車ショーで、『SCANIA(スカニア)』にとっては21年ぶりとなるトラックのニュー・モデルが正式に発表となりました。新しいシリーズである『Sシリーズ』と、2004年にデビューし、日本にも導入されている『Rシリーズ』のフルモデルチェンジ版です。
10年もの歳月をかけて研究開発を進めてきたというスカニアのニュー・モデルの登場は、ヨーロッパの輸送産業界やトラック・ファンの間で大きな話題となりましたが、実はそれに先駆けること1ヶ月ほど前、フランスのパリでお披露目が行われていたのでした。
会場となったのは、1900年のパリ万国博覧会のために建造された歴史的なパビリオン、グランパレ。8月23日の夕方、会場へと集まったのは、1000人を超える世界各国の関係者やお客様達。広大な建物の中は受付エリア、レセプション・パーティの会場、メインとなるプレゼンテーション会場と3つに区分されていました。
プレゼンテーション会場の正面中央にはステージが設えられており、会場の両袖にはこの日にお披露目されるモデルとテクノロジーに関する展示のためのスペースが分厚いカーテンで仕切られてあり、プレゼンテーションが終わるまでは隠されているという演出。
そして至るところに「DRIVING THE SHIFT」「NEXT GENERATION SCANIA IS HERE」の文字が見られます。これを境にスカニアは変わっていく、という明確な意志が会場にいるだけでも伝わってきます。
アペリティフとともにスカニアを愛する人同士が会話や再会を楽しむレセプション・パーティで夕暮れ前のひとときを過ごし、いよいよ待ちに待ったプレゼンテーションがスタートしました。
オープニングとしてスカニアの125年にわたる歴史が映像や写真とともにエモーショナルに紹介された後、次に登壇したのはサプライズ・ゲストの元国連事務総長、コフィ・アナン氏。サスティナビリティ、つまり環境保全のための社会的責任を継続的に考えていくことの重要さを説かれます。
続いてスカニアの社長であるヘンリック・ヘンリックソン氏がステージに上がり、環境保全のための社会的責任と企業としての利益は両立することができると宣言。通信ネットワークを通じて常に20万台以上のスカニアの走行データをリアルタイムに集めて研究開発に活かし、同時に集めたデータからメンテナンスの時期などに関して個々のユーザーにフィードバックしていくコネクティビリティ・システムや、代替燃料の使用やエネルギーの効率化に関する研究開発など、両立していくためのスカニアが企業として取り組んでいる現状について紹介。
そしてステージの両サイドから1台ずつ、この日の主役であるスカニアがドラマティックに登場。会場の空気は一気に熱さを帯びていきます。ニュー・モデルに込められたテクノロジーなどに関しては、販売とマーケティングを担当するクリスチャン・レヴィン副社長が解説。「車体のエアロダイナミクスの追求やパワーユニットの改善などで燃費を5%向上させ、それは1台が年間15万km走行した場合燃料を2000リットル節約させることを意味する、だから環境保全と企業としての利益は両立させることができる」と説明します。またコネクティビリティ・システムを通じてユーザーひとりひとりの実際の走行データを基にした燃費の改善案をフィードバックしていくこと、ECO運転のトレーニング方法を伝えていくことなどを実行していくこともアナウンスしました。
プレゼンテーションが終了すると、会場の両袖のカーテンが開かれ、いよいよニュー・モデルと技術展示が間近で見られる時間に入りました。それまで落ち着きはらっていたような大人達が、波のように新しい『Sシリーズ』や『Rシリーズ』の方へと向かい、取り囲みます。あちこちでカメラのフラッシュが光ります。誰かがドアを開けてコクピットに登り込むと、たちまち順番待ちの列ができます。その列が落ち着くまで、振る舞われたワインやビールとフィンガーフードを楽しみながら、ダッシュボードやキャブのカット・モデル、エンジンやマテリアルなどの技術展示を取り囲んで、熱心に解説のプレートを読んでいる人達も多くいます。驚くほどの熱気です。
日本から来られた何人かのお客様からのコメントも、同様でした。ニュー・モデルを見て、触れてみた感想を訊ねてみると、「いいね。一段階レベルが上がった感じですよ」「おそらく注文することになるだろうね」「日本への導入はいつになるのか・・・早く乗ってみたいですよ」とかなり好評でした。
現時点ではまだ日本仕様がどうなるのかが確定しておらず、混乱を避けるためにニュー・モデルの詳細に関しては時期が来ましたら触れさせていただきます。。が、この日にお披露目されたニュー・モデルが、車体の作りもエンジンのパフォーマンスも居住性も・・・とあらゆる部分が従来のモデル達と異なっていることは確かです。
日本での国内発表はおそらく2017年のうちに行われることが期待されますが、それまでの間にこちらで少しずつ情報をお届けできることになるかも知れません。どうかお楽しみに。
PHOTO GALLERY
Text:嶋田 智之