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スウェーデンにあるスカニア本社を訪問、企業理念の「スカニアウェイ」について聞いてきた

スウェーデンの経済都市セーデルテリエにある『SCANIA(スカニア)』本社を訪問。世界100カ国以上のマーケットで高く評価されるスカニアのトラックやバスはどのようにして生み出されているのでしょうか。企業理念である「スカニアウェイ」について本社のセールス&マーケティング部門責任者にお話を伺いました。

やってきました、スウェーデンのスカニア本社へ

スウェーデンに本拠を置き、世界規模でトラック・バス・産業用エンジンを展開するスウェーデン生まれの工業メーカー・スカニア。ハイパワーで高燃費を誇るエンジンと高い快適性から評価を得ており、日本でも着実に利用者数を増やしています。

そのスカニア製品を生み出すスカニア本社は、スウェーデンの首都ストックホルムの南部に位置する工業都市セーデルテリエ(Södertälje)にあります。「いつかは訪れてみたい」そんなスカニア本社に、ついに伺う機会を得られました。今回のスカニア本社訪問記を2回に分けてお届けする予定です。第1回となる前編は、本社周辺のアウトラインと、スカニアを支えている企業理念“スカニアウェイ”についてご紹介します。

広大な敷地を誇るスカニア本社

スウェーデンにあるスカニア本社を訪問、企業理念の「スカニアウェイ」について聞いてきた

やってきたスカニア本社。訪問者に合わせてその国の国旗を掲げてくれるのだそうで、スカニア本社前に日の丸の旗が!これには取材班も大いに感激した。

セーデルテリエ中央駅(Södertälje Centrum)から車で約10分のところにあるスカニア本社。車窓からはスカニア工場群が見えます。正門をくぐり、ついにスカニア本社にやってきました。

スウェーデンにあるスカニア本社を訪問、企業理念の「スカニアウェイ」について聞いてきた

本社ビルの隣にある「マーカス・ウォーレンバーグホール」は、ビジターセンターとして一般でも入ることが可能。スカニアミュージアム、レストランなどを併設する。こちらは次回のレポートでお届けする。

まず導かれたのは、ビジターセンター「マーカス・ウォーレンバーグホール(Marcus Wallenberg Hallen)」。マーカス・ウォーレンバーグとは、スカニアの発展に貢献したスウェーデンの銀行家の名前です。

このホールには、スカニアの企業理念や「持続可能な輸送システム」に関するビジョンを学べる展示、スカニアのオフィシャルアイテムを豊富に揃えたショップ、現在の製品群を紹介するメインホール、スカニアのこれまでの歩みを知ることができるミュージアムなどが併設されており、この日も多くの来場者で賑わっていました。ミュージアムについては次回のレポートでお届けするとして、まずはスカニア本社の周辺や広大な敷地内へとご案内します。

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本社屋の裏にある工場の入り口。右側の茶色い建物は、機械工学や産業機器の管理などを学ぶことができる「メランダレン・テクニカルカレッジ(Mälardalens Tekniska Gymnasium)」。質の高い従業員になるための高度な技術教育を受けられる。

ホールを出た我々は、いよいよ本社内の敷地に入っていきました。もちろん通常では立ち入ることができないエリアです。本社の敷地は市内の広範囲に広がっており、従業員数は16,000人にも達します。敷地内にはギアボックスとアクスル、エンジン、シャーシなど部位ごとに分けられた大きな製造工場が建ち並び、スカニアの生産台数の多さを物語っています。

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こちらがテクニカルセンター。入り口からは想像ができないが、奥にはひとつの工場ほどの大きさを持つ建物を有し、約3,500名のスタッフが働いている。工場と開発部が近いことは大きなメリットをもたらすという。

部署によっても建物が分かれており、特にテクニカルセンター(開発部門)はテストコースを含めた広大な敷地を持ちます。また、テクニカルセンター奥の高台にはエンジン工場があり、エンジンに関するパーツもこの一帯で製造されます。現在、近くに新しい鋳造場も建設中とのこと。スカニアの本社工場はまだ発展を続けています。

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エンジン工場のあるエリアから、遠く本社屋方面を望む。先ほど見たトランスミッションの工場もここにある。スカニア本社の敷地がいかに広いかがわかる。

スカニアの企業理念「スカニアウェイ」についてお話を伺う

スカニア本社ツアーを終えてビジターセンターに戻ります。ここで、セールス部門とマーケティング部門を統括するヨハン・ウインザー(Johan Winther)氏(Head of Sales and Marketing Way Office Sales and Marketing)に「スカニアウェイ」についてのお話を伺いました。

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GRIFF IN MAGAZINEの取材に快く応じてくれたヨハン・ウインザー氏。豊富な例えと的確な解説で、スカニアウェイについてわかりやすく説明してくれた。

── まずはスカニアウェイについての考え方を教えていただけますでしょうか。

「スカニアウェイとは、私たちスカニアの仕事の進め方に根ざした思考で、常に挑戦と改善することを重要視しています。言うなれば、スカニアの世界共通の“働き方”と“考え方”です。“持続可能な輸送におけるリーダー”を目指す私たちを導く、スカニアの企業文化の礎でもあります。

スカニアウェイという考え方が生まれたのは、1980年代にスカニアで起こった従業員のモチベーション低下による離職率の上昇でした。創業から半世紀を超えて順調に成長していたスカニアでしたが、この当時は従業員の4割ほどが離職するという危機的状況に陥っていました。そうした人材不足から、製造物の品質にも影響が出るようになってしまったのです」

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「改善に向けて取り組んでいたところ、北米に工場を持つ日本の自動車メーカーの品質が良いらしいという話を聞き、視察に訪れました。工場も従業員数もスカニアと同等の規模にも関わらず、生産量が4倍にも及んでいたのです。製品の品質も高いものでした」

── 日本人としては大変興味深いお話です。

「その事実を生み出している原動力について様々な検討を行い、研究をした結果、我々が手がける製造物のクオリティや生産数を高める上で重要なのは“人を動かす力=人の内面”なのだと気づいたのです」

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「どれだけ機械や素材、方法を改善して良い製品を作ろうとしても、それを扱うのは人(従業員)です。従業員の創造性や内面から生まれるモチベーションは、海面下の氷山のようにそのほとんどが目に見えないもの。そして、人々の考え方を変えるというのは簡単なことではありません。困難なミッションだと感じつつも諦めることなく、スカニアのあるべき姿について強い決意をもって語りかけていきました。その結果、5年ほど経った頃には品質が向上し、従業員の意識や向上心に変化が表れ始めました」

── それがスカニアウェイの原点なのですね。従業員にはどのようにして伝えているのでしょうか。

スカニアハウス図面

「スカニアウェイ」の基礎となる概念図の「スカニアハウス」。全世界のスカニア現地法人でも使用されており、スカニアジャパンはもちろん、スカニア正規ディーラーでも共有されている。

「我々には『スカニアハウス』という図があり、これを基本としています。一番下は私たちのコアバリューで、最も重要なことです。“お客様第一(Customer First)”“無駄の排除(Elimination of Waste)”と合わせて重視しているのが“個人の尊重(Respect for the individual)”ことです。この3点に“決意(Determination)”“チームスピリット(Team Spirit)”“誠実さ(Integrity)”が加わった6つの基本的価値(Core Value)が土台となることが大前提なのです。それらの上に“リーダーシップ”が備わります。

黄色いゾーンにある“正常な状態”とは、顧客からの注文に対して“どんなトラックを”“どれほどの品質で”“どのような価格で”供給できるのかをすぐに打ち出せる状況を指します。屋根を支える2本の柱は“需要ができてから開発、生産する”ことを表しています。お客様の需要に対して敏感になることで結果的に無駄をなくすことができます。

左の柱にある“Right for me”とは“正しいことを私から”という意味です。前工程から正確に仕事を受け継ぐことでリソースの無駄を省き、高い品質を実現させることができます。その1ステップ上には“継続的な改善”があります。物事を急に変革させるのではなく、段階的に進めることで従業員の考え方を変えていこうというもの。小さいステップを踏んでいるのは、もしそのステップに問題があった場合にすぐに修復でき、最小限の負担で済ませられるから。従業員に“恐れずにもっとやっていい”と勇気を持たせることにつながります」

スウェーデンにあるスカニア本社を訪問、企業理念の「スカニアウェイ」について聞いてきた

基本理念、原則、方法、結果を繰り返すことで品質の向上と質の高いサービスへとつなげるスカニアの思考モデル図。

「スカニアウェイの他に、スカニアには振り返りのサイクルとして、基本理念、原則、方法、結果を順に並べる思考モデルがあります。6つのコアバリューをもとに原則が作られ、導き出された方法に基づいた取り組みが行われます。その結果を分析し、方法を検証して改善するという行動を繰り返します」

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「この改善時に陥りがちな過ちは、組織の外部から人材を投入することです。それよりも組織のなかのスタッフ全員が意識を改善していくことの方が重要だと、スカニアでは考えています」

── 冒頭で「以前はかなりの離職率だった」とのことでしたが、スカニアウェイが浸透した今はいかがでしょうか。

「劇的に回復しました。品質問題も改善し、品質の安定した現在の状況になりました。しかし、私たちにはまだ改善すべき機会がたくさんあります。スカニアウェイはプロジェクトではないので、終わりはありません。施工方法を含めた企業文化ですので、これからも変化し、発展していくものなのです」

すべては最高品質のものをお客様の元へ届けるため

スカニアの本社を訪問して分かったのは、その敷地内の美しさです。池の周辺はモダンに整えられ、社屋、工場を含め、どの場所も綺麗に整理整頓がなされていました。

さらに、スカニアウェイを知ることで、スカニアについてさらに理解が深まりました。

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本社屋の前に広がる大きな池。静かで美しい環境を作り上げているだけでなく、工場の冷却にも使用されている。かつてこのあたりが海の入江だった名残で、以前は船で乗り付けることもできたという。現在もなおパイプで海とつながっているという噂があるらしい。

高い品質の製品を、需要に合わせた的確なソリューションとして提供する“スカニアのものづくりへの考え方”は、これまでのGRIFF IN MAGAZINEの取材を通じてずっと感じてきたことでした。今回の本社取材で、従業員の志を高めるように環境を良くすることが、結果的に良い製品や質の高いサービスを生み、カスタマー・ファースト=顧客を第一に考えることにつながっていく──という考え方が源にあったのだと知ることができました。そう、すべては「スカニアウェイ」という企業理念に沿ったものだったのです。

スカニアでは、「顧客に利益がもたらされて初めてスカニアの成功が語られる」とされます。「スカニアウェイ」は、まさにカスタマー・ファーストのためにあるのですね。

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「マーカス・ウォーレンバーグホール」内、ビジターセンターのマーチャンダイズショップでは、スカニアのオフィシャルグッズを買うことができる。日本では手に入らないものもあるなど、スカニアファン必見のコーナーだ。

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本社の工場エリアとテクニカルセンター及びエンジン工場エリアの間には、セーデルテリエ中央駅から伸びる一般道が走っており、スカニアの工場内の雰囲気と敷地の広さを伺い知ることができる。

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テクニカルセンターの前まで乗りつける道とつながる、一般道のラウンドアバウト式交差点。ここにはスカニアのエンブレムがつけられたモニュメントがあり、セーデルテリエとスカニアの強い絆を感じさせる。

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本社周辺でよく見かけるスカニアロゴ入りのトラックを走らせているのは「スカニアトランスポートラボ」。ユーザーがどのような輸送方法を用いるのかを学ぶためにスカニア自らが立ち上げた運送会社で、テストや部品の輸送などを行っている。

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スカニア本社を公共交通で訪問する場合、まずはストックホルムからバス・地下鉄・トラムなどを走らせるストックホルム公営交通(SL=Stockholms Lokaltrafik)の郊外電車36番もしくは37番に乗り、終点のセーデルテリエ中央駅へ。ここからタクシーを使い10分ほどで到着する。駅前からはバスで行くこともできるが、タクシーの方が便利。なお、スウェーデン国鉄(SJ)のセーデルテリエ駅は「Södertälje Syd(スウェーデン語で南の意味)」で、セーデルテリエ中央駅及ぶスカニア本社奥からはかなり離れているので、注意が必要だ。

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かつてスウェーデン南部の街マルメに居を構えていたスカニアは、1911年にヴァビスと合併して「スカニア・ヴァビス」となり、ここセーデルテリエを本拠地として現在に至る。そんなセーデルテリエについては次回後編でお送りしたい。

Text:遠藤 イヅル
Photos:遠藤 イヅル, SCANIA

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