スカニアジャパンCEO ミケル・リンネル氏、2019年の成果、そして2020年について語る
2019年の『SCANIA(スカニア)』の日本法人スカニアジャパンは、従来の輸入トラック・バスメーカーと一線を画す新しい製品を続々と市場に送り込み、数々の話題を提供してきました。トラックでは、注目の新ラインナップ「リジッドトラック」が次々とユーザーの元へと届いているほか、リジッドトラックのシャーシを利用した「日本初のスカニア活魚運搬車」など、これまで見られなかったジャンルにも採用が始まっています。バスも、日本の新しいスタンダートとなった「二階建てバス」の導入がますます進みました。そして2019年はスカニアジャパンの創立10周年。これを記念して半年にわたって行われた、日本を縦断する大イベント「Scania Caravan 2019」では、多くの人にスカニア製品を伝えることにも成功しました。
そこで、2020年最初の記事は、スカニアジャパンのCEO、ミケル・リンネル(Mikael Lindner)氏に、記念すべき1年だった2019年のまとめと、2020年の展開をお聞きすることにしました。
様々なニーズに対応するバリエーションの拡充と、スカニア製品へのポジティブな評価
スカニア主力商品のひとつ、リジッドトラック。2018年9月の発売以来、好調な販売を見せている。
──2019年は、日本各地で二階建てバスやリジッドトラックの導入がますます進んだように思います。ユーザーからはどのような評価がありましたか?
「2018年にリジッドトラックを発売しまして、2019年は販売台数が伸びた年となり、手応えを感じています。日本のトラックにおける、主力市場への製品として成功を収めたと考えています。リジッドトラックでは、今までのスカニアジャパンの代表的な製品だった『Rシリーズ』『13ℓエンジン』に加えて、『Pシリーズ』と、『9ℓエンジン』のラインナップを追加しました。Rシリーズ+13ℓ、Rシリーズ+9ℓという組み合わせや、Pシリーズも標準の9ℓ以外にも13ℓという組み合わせの選択も可能です。
それぞれの製品に関して、お客様から多数のフィードバックをいただいております。その多くは、操作性の良さ、快適性の高さなど、とてもポジティブなご感想でした。また、特に9ℓエンジンについては、燃費が良いというご評価もいただいています」
Scania Caravan 2019を振り返って
日本を縦断したスカニアキャラバンでは、各地で多くのユーザーがスカニアを体感した。
──2019年のトピックは、やはり「Scania Caravan 2019」の開催でした。このイベントは、スカニアジャパン、ディーラー、そしてユーザーのみなさんに、どんなことを与えてくれましたか?
「スカニアキャラバンは、二つの目的を持ってスタートしています。まず一つは、日本各地のお客様に、製品の試乗を通じて、スカニアの魅力を“体感”していただくこと、二つ目は、スカニアディーラーとスカニアジャパン、そしてお客様が家族のように近い関係を作るということでした。スカニアキャラバンは、この二つの目的を達成したイベントだったと感じています。
イベントには、予想以上に多くの方にお越しいただき、たくさんのお客様とつながることができました。そして、ディーラーは、スカニアディーラーとしての強い自信にもつながりました。私たちも多くのフィードバックを得ることができましたし、次のイベントに向けての改善点も把握することができ、スカニアキャラバンの開催は正しい選択であったと思います。今年も同様のイベントを開催したいと思っています」
スカニアの多様性は、どんな製品でも不変
──2019年は、活魚運搬車や消防車など、今までなかった市場にも進出していました。このほか、どんなことにチャレンジした1年だったのでしょうか?
「2019年は、いろいろなセグメントに適用・適応できるよう“アプリケーション”の種類を増やしてきました。例えば冷蔵車、クレーン車などを、国内外の架装メーカー様と一緒に開発してきました。スカニアの強みの一つは、お客様のニーズに合わせた様々な製品・サービスをご提供できる多様性です。お客様にとって一番使いやすく、最適なスペックの車両をご紹介するためにも架装メーカー様との協業はとても重要です」
日本初のスカニア活魚運搬車。リジッドトラックのシャーシを用いた、様々な架装の展開が期待される一例だ。
──なるほど! スカニアは日本では重量物運搬用トラクターなど「ニッチ」な市場で強く、ユーザーの要望に対して細かくカスタムした製品をたくさん販売してきたと思います。もっとも販売台数が多い“メインストリーム”な大型リジッドトラック市場への展開でも、完成車以外に、スカニアが得意とするカスタムメイドによるニーズに合わせた多様性が生かされているのですね。
「はい。スカニアはモジュラーシステムと豊富なオプションを用意しており、一般用途のボリュームゾーン向け車両と同じように、ごく限られた用途に合わせた特殊なカスタムメイド車両を作り上げることができます。
私たちは、全国の架装メーカー様との合同ミーティングを2017年から定期的に行なっており、現在はたくさんの架装メーカー様にご参加いただいています。スカニアが様々なニーズに合わせたアプリケーションを持つことで、何がお客様にとっての付加価値になるのかを考えなければなりません。日本市場に特化した日本の製品は高品質です。その市場の中で、お客様になぜスカニアを選んでいただけるのかという理由を私たち自身がはっきりと理解している必要があります。
スカニアは今後も付加価値の高い製品を提供していく
──2020年、スカニアジャパンはどんなことを計画していますか? また、サービスネットワークの拡充予定はありますか?
「スカニアジャパンはいま、成長への旅の途中です。そのためには、優先順位の高いものにリソースを集中させ注力することが必要です。日本市場での存在感をより増すために、スカニアがお客様にとって付加価値の高い製品を提供することを、スカニアジャパンはコミットし続けたいと思います。2019年はもっとも成功した1年になりました。2020年もこの旅を継続していきます。
サービスネットワークにつきましては、中長期的には、拠点数を増やす計画です。そのために、短期的な視点では、サービスのクオリティを向上させる必要があります。2019年も、部品供給やサービス体制強化のため、いろいろな改善にチャレンジしました。今後も質の高いサービスを継続することが重要だと考えています」
日本のトラック市場におけるスカニアの役割
──2019年はスカニアジャパン10周年でした。この間に、日本のトラック市場に与えたインパクトはとても大きかったと思います。スカニアジャパンは、これからの5年、10年に向けて、どんなプランや方向性を考えていますか?
10年前と現在を比較しますと、ビジネスを始めたばかりの10年前は日本市場の需要を理解するためにいろいろな製品を試験的に導入した時期でした。その時の経験があったからこそ、私たちは、重量物輸送用トラクターやリジッドトラックなど、日本市場に適した製品群のプラットフォームを見つけることができました。
今後も、さらにスカニアの価値を高め、お客様、社会、産業全体に貢献していきたいと思います。それは、スカニアが、イノベーションやサスティナビリティにも貢献できる存在になることを意味します。日本市場にとって重要な“パートナー”であることが大切だと考えます」
──いま、サスティナビリティというお話をいただきました。スカニアとスカニアジャパンの取り組みの中でもとくに素晴らしいのは、「持続可能な輸送手段を考える」という、これまで日本の物流業界ではあまりなじみのない、しかし、とても重要な考え方を、スカニアが継続して日本の事業者に広めようとしていることです。社会や経済の発展は必要ですが、一方では、地球規模で未来と向かい合わねばならない。いま、この瞬間にも人間がこの先もこの星に住み続けるために必要な、持続可能性=サスティナビリティの概念は、まだまだ日本には定着していないように思うのです。
「ありがとうございます。世界では、すでに地球環境の悪化や気候変動が現実の問題として起きています。私たちは、その問題から逃げ出すことはできず、すぐにでも行動を起こさねばなりません。スカニアは、業界のリーダーとして持続可能な輸送について考え、アイディアを共有することで私たち自身、そして社会を教育しています。スカニアジャパンは、これからもサスティナビリティに関するメッセージを発信し、コミュニケーションを継続していきます。」
2020年のスカニアも、期待大!
新しい製品が続々と市場に投入された2019年は、スカニアジャパンがさらに大きく躍進した一年でした。製品バリエーションの拡充や、架装メーカーによる様々なジャンルに適合した車両が登場したことで、スカニアの魅力や特長がますます明確になったように感じます。そして、とても興味深かったのは、大きな市場に向けた一般的なリジッドトラックの完成車でも、特殊用途向けトラックでも、「ユーザーの利益を高めることができる最適な製品を提供する」という、スカニアの哲学が不変だというお話でした。ミケル氏は、それをとてもわかりやすく伝えてくれました。今後も、様々な「日本初」のスカニアをたくさん見ることができるに違いありません。
最後に、ミケル氏からのメッセージを添えたいと思います。
「私たちのこれまでの成功について、お客様とディーラーの皆様とのかかわりによるものであり、心より感謝いたします。お客様、ディーラー、パートナーと作り上げる『スカニアファミリー』が大きくなることで、また新しいことへのチャレンジが可能となり次のステージに進むことができます。2019年の成功に続き、2020年も、スカニアは成長への旅を続けていきます」
Text:遠藤 イヅル
Photos:Masato Yokoyama