『SCANIA(スカニア)』はこの2016年で創業125周年。その記念すべき節目の年に、スカニアと日本の皆さんをつなぐこのWEBマガジン『GRIFF IN MAGAZINE(グリフィン・マガジン)』がスタートいたしました。オープニングに際して、編集部ではスカニアジャパンのCEOであるヨハン・ルンデン氏にインタビューを敢行。ヨハンさん御自身のこと、スカニアが生まれたスウェーデンという国のこと、そしてスカニアという会社について、ざっくばらんに語っていただきました。
幼い頃、日本で育ったヨハン・ルンデン氏
──ルンデンさん、お生まれは?
1975年、スウェーデン生まれです。でも、実は幼い頃、日本で育ったんですよ。父の仕事の関係で、4歳から9歳までを東京で暮らしました。1984年にスウェーデンに戻り、その後大学や大学院で人間工学を専攻し、それを活かした仕事をしたくてスカニアに入社したんです。
──日本で仕事をすることになった経緯は?
ヨハン、日本でやってみないか? やりましょう、みたいな感じでした(笑)。経営陣とのやりとりは、そのくらいカジュアルな感じだったんですよ。日本でもスカニアを発展させていこうという動きの中で、スカニア全体のブランディングなどを担当する部署に私がいて、日本で過ごした経験から他のスカニアの社員よりも日本に馴染みも愛着もあり、また日本というマーケットに可能性も感じていましたから、断る理由はなかったんです。とても自然な成り行き。それで2011年の10月に戻って来ました。
──日本という国について、どうお感じになっていらっしゃいますか?
日本はとてもファンタスティック!食べ物も美味しいですよね。いくつか食べられないモノもありますけどね……納豆とか(笑)。人々はとても親切だし、優しいですよね。大好きな国です。美しい土地がたくさんあるので、そうしたところを週末に訪ねるのも楽しいです。実は初めての子供を授かったばかりで、今は週末は子育て一辺倒ですけど(笑)。
スウェーデンは“好奇心旺盛な国”
──では逆にスウェーデンという国について。ひと言で表すとどんな国ですか?
冬は寒いけれど人々は温かい、という一般的なイメージは確かに正しいですね。でも、私にとっては“好奇心旺盛な国”という印象の方が強いかな。国土もそれほど大きくないし人もあまり多くはないけど、何をしたら面白いかな? とか、あれはどうなんだろう? と常に考えてるような人が多いですね。好奇心を満たすためにどんどん国の外に出てみたり。だから色々なイノヴェーションも生まれます。例えばノーベル賞のアルフレッド・ノーベルもスウェーデン人で、ノーベル賞の本部もスウェーデンにあります。それから好奇心が強くて人々が温かいので、移民や他国の文化に関してもオープンで、互いに気遣うことを尊重したりもしています。
──スウェーデンへ観光に行きたいという人はたくさんいますが、オススメは?“食”についても教えてください。
美しいところはたくさんありますよ。ストックホルムの旧市街や運河も綺麗だし、北部の方まで脚を伸ばすと、雄大な自然に感動すると思います。西海岸ではセーリングを楽しむべきですし、西海岸にも東海岸にも小さな島がたくさんありますから、そういうところを訪ねるのもいい体験になると思います。キリがないですね(笑)。食事は、へリング(ニシン)はやはりポピュラーですね。色々な味付けのニシンをジャーに詰めた料理があって、それをみんなで回しながら食べるのが楽しいですね。それからサーモンも美味しいです。
──スウェーデンの素晴らしい文化をひとつ紹介してください。
“フィーカ”という一種のコーヒーブレークを、スウェーデンではとても大切にしています。1日に2回ぐらい、甘いお菓子をつまんでコーヒーを飲みながら、親睦を深める生活習慣です。特別なことでも何でもないけど、日本ではあまり見られないですね。ひと息つけて1日のいいアクセントにもなるし、そういうコミュニケーションの中から生まれてくるものもあるから、日本でも広まればいいのに、といつも思ってます。
──北欧デザインという漠然とした言葉がありますが、ひと言で表すとどういうものでしょう? スカニアも北欧デザイン?
ひと言で表すのは難しいですね。ミニマルで、カラーもシェイプも自然な感じで……。人の感覚に優しいデザイン、といえばいいのかな。スカニアも本社にデザインセンターがあるので、もちろん北欧デザインの要素は活きてるでしょう。例えばトラックは、いってみれば“箱”でしょう? それを素直に“いいな”と感じられるエモーショナルなものにしているわけですからね。
スカニア・ドライバーには他社のドライバーより幸せでいてもらいたい
──スカニアというのは、どんな会社ですか?
誤解を恐れずにいえば、いい意味でファンキー(笑)です。自由度が高くて、オリジナリティを尊重するところもあって、とても面白味のある会社です。世界的な大企業だけど、まるで小さな会社みたいにフラットな雰囲気。起業家精神を持ったメンバーが多くて、協力し合いながらそれを実践していこうとする気風がありますね。
──スカニアはどのようにしてここまで発展してきたとお考えですか?
スカニアには、短期的な結果よりも長期的なビジョンを重視して物事を考える風土があるんですよ。そして個人を尊重すべきという社訓があって、多くのスタッフが長く務めるという安定感もある。姿勢としてのそのブレのなさが大きいでしょうね。技術的には、自由度の高い基本設計をベースに細かなニーズに合わせた様々なものを構築していく、モジュールシステムという効率のいい仕組みを採用し続けてることが大きいでしょう。ほかにも色々な要素があると思うけど、そうした全てがいいスパイラルを生んでいるのだと思います。
──日本のことを知り尽くした国産競合メーカーが存在する中、スカニアがこの国に拠点を置いた理由は?
日本のメーカーとは異なるアプローチで、日本の輸送や交通、そしてそれに従事する方々に貢献できると考えているからです。例えば私達は、トラックは“働く場所”であると同時に“過ごす場所”でもあるという考え方も強い。だから仮眠のためのベッドの寝心地やエンジンをオフにしても稼働するエアコンのような、ドライバーが快適でいられるための工夫にも力を入れています。疲労や不快は事故につながりがちですしね。もちろん燃費性能や、パワー、ハンドリングなどのドライバビリティも含めて、スカニア・ドライバーには他社のドライバーより幸せでいていただきたいと考えています。それから私達はモジュールシステムを持っているので、既存の製品よりもクライアントのニーズに沿ったものを柔軟に考えて提案することも可能です。日本にオフィスを構えて5年。販売店も順調に増え、サービス体制もかなり充実してきたので、これからは「とにかくスカニアに訊いてみよう」と考えていただける状況を作っていきたいですね。
──プロの方の中にはもちろん、一般の方の中にもいわゆる“はたらくクルマ”に関心を持つ人が一定以上いらして、スカニアというブランドに触れたいと考えてる方々も少なくないと思います。そうしたファンの方々に対して何かお考えになっていることは……?
まず、プロの方には販売店で御覧いただくことができるように、体制の強化を進めているところです。一般のファンの方にも、例えばトラックショーなどで触れていただけるようにしていきたいですね。また“スカニア・トラック・ギア”というアパレルを中心としたマーチャンダイズがあり、ヨーロッパでは高い人気を博しています。それを日本でも簡単にお求めいただけるようにしていきたいと考えています。そちらは、もう少し時間をください。
──最後に、この“グリフィン・マガジン”の読者の皆さんにメッセージをお願いします。
製品に関するものだけじゃなく、皆さんに楽しんでいただけるようなものを、こちらはもちろん、FacebookやInstagramなどのソーシャルメディアを通じて、これからどんどんお届けしていきたいと考えています。日本版だけではなく全世界に向けたスカニア・グループとしてのアカウントもあるので、そちらも御覧いただけると、世界でどんなことが起こってるのかが判って、より楽しんでいただけると思いますよ。
Text:嶋田智之
Photos:横山マサト