21年ぶりのフルモデルチェンジとなるスカニアの新モデル「NEXT GENERATION SCANIA」。昨年の東京モーターショーで新モデルが発表された際は、その洗練されたスタイルと内装に注目が集まりましたが、今回はスカニアユーザーにその性能を体感してもらうために、試乗会が行われました。
新モデルスカニア発売開始。試乗会をテストコース内で開催
昨年秋の東京モーターショーにスカニアジャパンが初出展を行い、そこで日本国内デビューを果たした新モデル「NEXT GENERATION SCANIA」。21年ぶりのフルモデルチェンジによって登場した『SCANIA(スカニア)』新モデルの、洗練されたスタイルとハイクオリティなインテリアに大きな注目が集まりました。私たちGRIFF IN MAGAZINEでもブース紹介やスカニア新モデルの速報、アンヴェールの瞬間をレポートしています。
そしてついに2018年4月2日、スカニアの新モデル発売が開始されました。まずはトラクターから、追って「単車」と呼ばれるトラックが発売されます。そこでスカニアジャパンでは新モデルの試乗会「SCANIA SPECIAL TEST&DRIVE」を開催。茨城県東茨城郡城里(しろさと)町にある一般財団法人日本自動車研究所(JARI)の「城里テストセンター」の外周路を借り切り、スカニアユーザーを招待して大きな規模で実施されました。
城里テストセンターには高速周回路など各種テストコースがあります。今回のスカニア新モデル試乗会で使用された外周路は、高速周回路の周囲を1周約5.7kmで巡る郊外の道路を模したコースです。最大5.9%の勾配や連続カーブ、アップダウンがあるなど実際の走行に近い状況で試乗が可能で、また対向車もないため集中して性能や乗り心地を体感できる場所として、スカニアジャパンでは以前から城里テストセンターでの試乗会を行っています。
テストコースに並んだ4台のスカニアトラクター+トレーラー。テストコースは1周約5.7kmの周回路で、試乗会参加者は加速、コーナリング、減速、坂道発進など実際の運転に近いシチュエーションでスカニア新モデルの性能を体感した。
総重量61t!スカニア新モデルの性能を体感できるプログラム
試乗会の主なプログラムは、スカニア新モデルのプレゼンテーションと実際の試乗です。試乗前の注意事項説明やスカニア新モデルの製品説明は、JARIの管理棟内の会議室でスカニアジャパンのスタッフから受けます。そして試乗では管理棟からテストコースに移動。実際にステアリングを握って外周路を周回しながら平坦路での加速、コーナー手前でのリターダーによる減速、コーナーでのハンドリング、登り坂/下り坂での加速と減速、急な登り坂での坂道発進などを体験できるメニューでした。加速ポイント、減速ポイントなどはコース内で決められていて、同乗するスカニアジャパンのスタッフがそれに合わせ指示を出すので、勾配、コーナーなどコースの状況に合わせてより的確にスカニア新モデルの性能を引き出せるようになっていました。
しかもスカニアジャパンが持ち込んだのは、トレーラーに建機や荷物が積まれて車両総重量(GCW)が約44t〜61tに達するという本格的な「輸送仕様」。トラクターヘッドのみの試乗かな?トレーラーを牽引しているにしても重いものは積んでいないかな?と思っていた筆者はその「本気ぶり」にびっくりしました。トレーラーにここまで重量級が積まれているとは!これだけの重さの車両を加速そして減速させるのは大変なこと。試乗会に重量物運搬状態の車両が用意されていたことに、スカニアジャパンの新モデルに対する自信を感じさせました。
スカニア新モデルが牽引するトレーラーには30t以上の重さを持つ建機などの積荷が!一番重い車両の総重量は約61tに達した。重い車両なら発進と停車の性能が高いことがより証明できる。スカニアジャパンの試乗会に対する本気度と、新モデルへの自信が窺えた。
また、試乗コースのスタート地点にはスカニア新モデルで販売の中心となる「Pシリーズ」が、そして管理棟脇には上位モデル「Rシリーズ」のデモ車が展示され、参加者は自由に見学や乗降ができるようになっていました。Pシリーズは乗降性に優れた新しいスタンダードモデルですが、高い性能や安全性、デザインの良さ・品質の高いインテリアなどスカニア新モデルの性能や快適性をしっかりと持っている注目のレンジです。Rシリーズはオプションの本革シートや2トーンステアリングが装備されたオプションインテリアを持つ仕様で、インテリアのフィニッシュレベルの高さは高級車並みと言っても過言ではありません。
試乗会のスタート地点には、スカニア新モデルのベーシックモデルとなる「Pシリーズ」が展示されていて自由に見学が可能だった。展示されていたトラクターはハイルーフの「P410 4×2 P20H」。Pキャブは乗降性も高く、今後販売の中心となる。詳細については次号以降でお知らせしたい。
また、試乗会のベースで説明会や休憩所となった管理棟脇には、「Rシリーズ」のハイルーフ、「R450 4×2 R20H」が置かれ、こちらも自由に車内に入ることができた。
様々なバリエーションのスカニア新モデルと積荷を用意
今回の試乗会では4台のスカニア新モデルが用意されました。内訳はV8エンジン搭載モデルが2台(S650、R650)、直6搭載モデルが2台(R500、R410)で、R410以外はフラットトレーラーに建機を搭載、しかも重量物運搬トラクターのV8搭載モデルに関しては30tオーバーの建機が積まれ、前述の通り車両総重量は約61tもありました。R500、R410が牽引するトレーラーは総重量約44tとなっていますが、こちらも通常では特殊車両通行許可がないと公道を走行できないほどの重い車両です。
V8エンジン搭載モデルのうち1台はスカニア新モデルから登場した新しいフラッグシップ「Sシリーズ」仕様でした。Rシリーズでも十分着座位置が高いのに、Sシリーズのキャブではさらに室内床面がアップしてキャブ内床がフラットフロアに。座席も床面に合わせて高い位置に設けられています。乗降には4段のステップを登る…と書けば、その床面の高さが想像できるでしょう。
スカニア新モデルで注目される「Sシリーズ」の「S650」が重機を載せたトレーラーを牽引してテストコースを快走する。車両の総重量は約61tに達する。Sキャブはキャビン内のフラットフロアと広大な室内空間を実現したフラッグシップモデルで、V8エンジン搭載モデル専用の上質で高級なインテリアを誇る。S650の車名の通り、650馬力(478kW)のV8エンジンを搭載。
こちらは同じくV8エンジンを搭載したモデルで、快適性と高級感を備えたRシリーズの「R650」。こちらも重機を積んだトレーラーを牽引して総重量は約61t。
試乗コースとなったJARIの外周路は郊外道路を想定しているため、このような連続カーブなどが存在。スカニア新モデルの性能や操縦性、乗り心地を感じるには最適だった。写真の車両はRシリーズの「R500」でトラクター+トレーラー+積荷の総重量は44t。各モデルの詳細は、この記事後半の「ギャラリー」でまとめているので、ぜひご覧いただきたい。
試乗用の4台のスカニアのうち、唯一パネルバン(ウイング式)トレーラーを牽引していた「R410」。こちらも総重量は約44tで、日本国内での特殊車両の車両総重量上限(フル積載トレーラー)と同じ数値に設定されている。
「重さを感じない」「リターダーの効きが抜群」とユーザーに大好評
スカニア新モデルの試乗会に参加したスカニアユーザーの中から、感想をお聞きすることにしました。21年ぶりのフルモデルチェンジを受け快適性、性能ともにさらに向上したスカニア新モデル。皆さんはどう感じられたのでしょうか。
最初にお話を伺ったのは、岩手県盛岡市で原木やチップ輸送を行っている、株式会社古里木材物流 代表取締役 畠山 正さん。同社はスカニアを6月に導入予定で、GRIFF IN MAGAZINEでも以前ご紹介したヒアブクレーンを搭載した「北欧トライアングルの林業仕様」の新モデルとのことです。
「変速がスムーズですね。シフトショックが全くありません。リターダーの効きも素晴らしいです。高い視点で見晴らしも良かったです。」
株式会社古里木材物流 代表取締役 畠山 正さんは、林業仕様の新モデルのV8(520)スカニアを発注済みだ。ヒアブクレーンとスカニアの相性は良い、と話してくださった。新モデルについては、AMT(12段セミオートマチック)のショックの無さなどに驚かれていた。
続いて感想を話してくださったのは大阪市住之江区のオー・エス・ライン株式会社で安全運転管理と整備管理を担当されている種子永(たねなが) 良治さんです。同社は冷凍食品、鮮魚輸送を得意としており、現在スカニアの前モデルの単車(冷蔵車)を1台お持ちです。種子永さんはキャブとベッドの広さ、パワーの大きさとトルクの太さ、停車寸前までブレーキを踏まなくてもよいほどに効く5段階のリターダーに特に感銘を受けられたとのことでした。
オー・エス・ライン株式会社 安全運転管理者および整備管理者の種子永 良治さん。スカニア新モデルのベッドがとても広いことに感心していらっしゃった。
この試乗会をはじめとしてスカニアジャパンが城里のテストコースで試乗会を行う際、トレーラー+積載の建機などを用意しているのが千葉県白井市の株式会社SJ・SUPPORTです。スカニアの性能を遺憾なく発揮できる試乗会の環境を作る大事な役目を果たす同社は、スカニアトラクターも保有しています。そこで同社代表取締役 佐藤 大輔さんにスカニア全般やスカニア新モデルの印象をお聞きしました。
「重い荷物を積んでも登り坂や下り坂を感じさせません。パワーがあることはこのような重量物を積んだトレーラーでは重要です。長距離運転すると疲れにくくなります。しかもスカニアはズバリかっこいいですよね。ドライバーも喜んでいます。」
トレーラーと積載の建機を用意した株式会社SJ・SUPPORT 代表取締役 佐藤 大輔さんは「重い荷物を積んでも登り坂、下り坂を感じさせない」と語ってくださった。
スカニア新モデルを運転して感じた「総合的に高い質」
スカニア新モデルの試乗会では、筆者も実際に運転する機会を得ました。最初に乗ったのはS650です。よじ登るようにして乗り込むと、驚くほど高い視界が窓の外に広がっていました。一般的な大型トラックよりもさらに高いです。素晴らしい形状のシートに腰掛けてポジションを合わせます。シートベルトを締め、ステアリングホイール右側のレバーのスイッチを「D」に入れ、サイドブレーキを解除してほどよく重いアクセルをゆっくり踏み込むと、650馬力のV8を積んだS650は、いとも簡単にそして何事もなく総重量61tの車両を一切ギクシャクさせることなく発進させました。驚いたのは、重量物が後ろにあるとは思えないことです。重たいトレーラーを牽引している場合、発進時にはトラクターが前後に衝動で揺れることがあります。それに低速、低いギアのセミオートマチックのシフトアップではつなぐ時に変速ショックも多からず少なからずあります。ところがスカニア新モデルではシフトアップも早い上に自然でショックも感じられず、発進時の前後衝動も少なく、スムーズに、そして思った以上の加速で速度を上げていけるのでした。
筆者もS650とR410を試乗させていただいた。アイポイントがさらに高いSキャブからの見晴らしは抜群。着座位置も前モデルに比べて前方フロントウインドウ寄りと側面に移動しており、フロントウインドウ下端も低いため前方の視界に優れる。
減速ポイントでは、助手席のスカニアジャパン株式会社 松井さんが指示を出してくれました。
「リターダーを全部入れてみてください、フットブレーキなしで停車寸前まで」
指示地点でシフトレバー兼リターダースイッチを作動させました。リターダーは5段階で調整可能です。レバーを上に5段階分動かすと、60tオーバーの車両はあっと言う前に時速60km/hからほぼ停止状態まで減速しました。ブレーキペダルは一切踏んでいません。リターダーを下り坂に合わせて上手に調整すれば、ブレーキペダルに足を踏み替えることが大幅に減り疲労低減につながりますね。
半径の小さなコーナーも重量物を感じさせずステアリングはしっかりしています。そのフィーリングはしっかりと丁寧に作られた機械のそれ。ブレーキのタッチや効き、コントロール性も抜群です。そして最後のプログラムは「坂道発進」。坂の角度はかなりあり60tの重量級車両がズルズルと落ちていくことを考えるとドキドキしましたが、ヒルスタート機能が付いていますのでブレーキペダルから足を離しても車両は下がる気配がありません。アクセルを踏むと車両はそのまま、しかも急坂を意識させずに発進していきました。
高級感に溢れたS650のコクピット。手に取るパーツ全ての精度に優れ、全体的な質感も極めて高い。総重量61tの重量級車両を難なく発進させるパワー、フットブレーキを一切踏まずに停車も可能なスカニアが誇るリターダーの効きに驚かされた。見やすく美しいメーターパネル内にはギア段数などが表示され、ドライバーは安全運転に必要な情報を即座に得られる。
この後R410+3軸ウイングトレーラーも試乗しました。410馬力に総重量44tという組み合わせでしたが、こちらはさらに加速が良くて驚きました。20年くらい前の4t積みトラックよりも体感的に加速がいいのではないか?と思ったほどです。
スカニア新モデルでは大排気量エンジンの振動や音は完全にシャットアウトされ、キャブ内にエンジンが発する不快な要素を持ち込みません。ドアは軽い力で閉まるようになって、しかも閉まる音はさらに高級感あるものに。見やすくわかりやすいスイッチ類の操作感覚は統一され、しかもタッチは上質。アクセルの動きもスムーズです。どこにも引っかかるところがないのです。これは、スカニア新モデルの総合的な性能や品質が高い印象でした。
いよいよ日本の路上を走りだすスカニア新モデル。今まで持っていた快適性や性能の高さというアドバンテージが一層増えたのではないかと思います。GRIFF IN MAGAZINEでは、今後もスカニア新モデルの情報を順次お届けします。ご期待ください。
PHOTO GALLERY
Text:遠藤 イヅル
Photos:YosukeKAMIYAMA