スカニアディーラー網の重要な店舗のひとつ、自興中販
スウェーデンに本社を持ち、世界規模でトラック・バス・産業用エンジンを提供する『SCANIA(スカニア)』。日本では2010年6月にスカニアジャパンを設立以来、東京と大阪に直営ディーラーを設けたほか、全国各地に整備工場、販売代理店(協力ディーラー)、協力整備工場を次々と拡充していることは、このGRIFF IN MAGAZINEでも幾度かお伝えしている。特に、スカニアのユーザーが多い関東エリアには数多くのディーラーと整備工場があり、いずれもネットワークでは重要な店舗である。その中のひとつ、今回ご紹介する「自興中販株式会社(以下、自興中販)」は、埼玉県を中心としたエリアをカバーするディーラーとして盛業中だ。
埼玉県のスカニアディーラーである自興中販。越谷市を走る国道4号線沿いに立地する。看板の脇にはスカニアのトラクターが並ぶ。
中古トラック・トラクター販売のエキスパート、自興中販
1980年に設立された自興中販は、小型から大型の中古トラックおよび中古トラクター、そして牽引される側の中古トレーラーの買い取りと販売を行っている。取り扱いで特に多いのはトラクターとトレーラーで、販売のメインとなっている。同社は東京、千葉、埼玉に事業所を備え、敷地内には親会社である東京自動車興業(1946年創業)の整備棟が併設される。買い取りしたトラックを大きな整備工場でしっかりと整備したうえで販売を行っているため、購入後も安心して使用することが可能だ。
長年トラックの販売を行って来たエキスパートである同社が、スカニアの取り扱いを開始したのは2014年12月。前出の親会社、東京自動車興業が埼玉店に工場を建てるということになり、それを契機とした新たなビジネスモデル展開の一貫としてスカニアの販売を行うことになった。それまでも東京自動車興業が海外製トラックの販売を行っていた実績と経験があり、海外メーカーであるスカニアディーラーになることに大きな問題は無かったという。
もちろん、スカニア購入後のアフターケアと整備はその敷地内の工場で行うことが出来るため、自興中販はスカニアの販売ディーラーと整備工場の2つの顔を持っていることになる。
スカニアディーラーの証、グリフィンを擁した濃紺のエンブレムとロゴが誇らしい。
トラック取り扱いのプロから見るスカニアとは
今年で創業36年目を迎える自興中販は、いうまでもなくトラック・トラクターの取り扱い台数は数えきれないほどだ。まさにトラック販売のプロフェッショナルというべきであろう。その同社から見て、スカニアは製品としてどのように映るのだろう。
同社東京営業所所長 齋藤 昭彦氏、そして埼玉営業所営業スタッフの乙部 伸明氏は、スカニアについてこう語る。
「まず、運転しやすいことがあげられます。12段の2ペダルAMT(自動変速機能付トランスミッション、「オプティクルーズ」)ですので、サイズは大きいですが一般的な自動車のように運転出来ます。これは運転時の疲労軽減につながるのではないでしょうか。内装の質感が高いのも魅力的です。それと、やっぱりスカニアって『かっこいい』じゃないですか(笑)。それって、とても重要なことだと思います」
トラック販売のエキスパート、自興中販株式会社 東京営業所 所長 齋藤 昭彦氏(右)と、同社埼玉営業所 営業 乙部 伸明氏(左)。お二人ともとても気さくで、インタビューも盛り上がった。
お二人とも、スカニアのことを話すときは目が輝く。その眼差しからは、スカニアへの熱い想いが溢れ出ているようだ。そして、話題はスカニアの整備についての内容へと進んだ。齋藤氏によると、「整備に関する考え方がスカニアと国産メーカーでは大きく異なる」という。
「スカニアはたしかに海外製トラックです。その部分に不安を感じる事業者様もいらっしゃるとは思うのですが、世界中で活躍するスカニアの販売台数を考えると、信頼性が無ければその数字にはならないはずです。トラック・トラクターは走行距離100万キロがひとつの壁で、そこから先の耐久性が問題になるのですが、スカニアは日本の法規に準じたサイクルでの法定点検と、スカニア独自の基準で決めたメンテナンスサイクルやフリートマネージメントシステムがあるため、トラブルの可能性になる事象や予防整備、部品交換を行うことで“予防安全”的にトラブルを防ぐことが出来ます。」
この、予防安全としての事前整備は、確かに壊れてから修理するのと違いコストが発生する。だが、トラブルが起きる前にメンテナンスを行っておくことで、長期的なスパンでランニングコストを見た時は最終的には有利に働くのではないか、とのことだ。
なお、フリートマネージメントシステムでは、ユーザーがスカニアとメンテナンス契約をすることでスカニア各車から燃費やブレーキの回数、速度などドライバーごとの走行データが取得出来るため、走行パターンの改善や、ドライバーへの走り方のアドバイスなどが行える。トラックを運用するユーザーにはメリットが多いシステムだ。また、スカニアのメンテナンスサイクルは、メンテナンスの基準が車検のような期間ではなく「距離」になっていることが特徴である。
東京営業所 所長 齋藤氏自らもスカニアトラクターを動かしてくださった。写真のモデルは「G410」で、欧州で最も厳しい最新の排ガス規制「ユーロ6」をクリアした直6エンジン、「DC13」を搭載。410PSを発生する。キャビンは「ハイライン」と呼ばれるハイルーフタイプ。
どんな方がスカニアユーザーになるのか
こちらもGRIFF IN MAGAZINEで幾度かお伝えしていることなのだが、スカニアを語る上で避けられないことなので改めての記載をお許しいただきたい。それは、日本は自動車の開発においては独自の文化がある、ということだ。日本での使用環境に合わせた幅や長さなどの数値的車両規格、運転免許制度、右ハンドル・左側通行などがそれで、トラック・バスは特に「日本独自」の傾向が強く、輸出も行われてはいるものの基本的には日本国内での使用を考えて設計されていることが多い。そのため日本では海外メーカーのトラック・バスの活躍は絶対数でいえばまだまだ少ないのである。このような環境下で、スカニアを自社のツールとして導入するユーザーはどのような基準でスカニアを選択するのだろうか。再び、齋藤氏にお話をお伺いした。
「まず、運送会社のオーナーさんが外国車を好きなことが多いですが、洗練されつつ迫力ある外観を持ち、ブランド力のあるスカニアを導入することによって、スカニアを“広告塔”として活用されるユーザーもいらっしゃいます。スカニアはトラックドライバーの憧れでもありますので、ドライバーの求人や、働いているドライバーのモチベーションアップにつながっているのです。潜在的に“スカニアに乗りたい”と思っていらっしゃるドライバーの方は多いと考えています。今年6月に弊社で行ったスカニア試乗会も、大盛況でした。」
そしてもうひとつ、最近の傾向を教えてくださった。
「長年経営を続けていらっしゃるオーナーさんが、2代目、3代目に移りつつあるのですね。現在では海外に行く機会も多くなりましたし、現地で実際にスカニアをご覧になってスカニアの魅力を知られる方も増えて来ているのではないかと思います。」
たしかに海外製の乗用車も、以前ほど「外車」といった特別な印象は薄くなっている。各自動車メーカーとも販売台数が上昇を続けていることからもそれが伺える。今や海外製トラック、トラクター、バスが日本の路上を走ることは当然の流れなのだ。
スカニアのトラック・トラクターにはバリエーションが多いが、日本国内でも様々なモデルが選択可能。右側のモデルは低めのキャビンが特徴のPシリーズ(P410、スリーパー・ノーマルキャブ)。Pシリーズは乗降性に優れ、短距離輸送や地域内配送などに向く。
自興中販ならでは、のメリットと、夢
中古トラック・トレーラー販売のプロである自興中販では、近い将来スカニアの中古トラックも取り扱っていきたいとのことだ。まだスカニアの中古はあまり市場に出て来ていないが、新車販売台数の増加、時間の経過に伴って流通が始まることは間違いない。そのとき同社では、買い取りで入庫したスカニアを自社工場で整備した上で販売が可能となる。自社で整備を行うため、市場よりも高い買い取り価格の設定が可能だ。そしてその買い取り額をベースに、また新車のスカニアを買っていただけたら、と語る。買い取り額が高いということは、再度スカニアを買う際の大きなメリットとなるのである。
そして、もうひとつ、大きな夢も教えてくださった。
「スカニアの拡販のために、いつか、スカニアをショールームの中に展示したいのです。トラックのディーラーで、乗用車のようなガラス張りのショールームを持った店舗って見たことないですよね。それを作りたいのです。もちろん、その夢を叶えるためにもスカニアというメーカー、ブランドをご存知でないユーザーの方々にスカニアを知っていただけるような営業活動をしていきます。また、それ以外にも車両販売だけでなくスカニアグッズの販売や、スカニアが持っているブランド力という付加価値を提供していきたいと考えています。」
スカニア製品を販売する方々、そして使う方々など、関わる人々の多くには共通する「熱い想い」がある。クールな出で立ちと優れた製品としての資質だけでなく、こうした多くの人々の想いが、より一層スカニアを魅力的に見せているように思う。今回取材をさせていただいた自興中販の齋藤氏、そして乙部氏もスカニアに対する強い想いと暖かさを持っていた。「夢」はきっと叶うに違いない。同社の末永い発展に大いに期待したい。
スカニアの前で笑顔を見せる齋藤昭彦氏(右)と乙部伸明氏(左)。彼らの夢は、ガラス張りのスカニアのショールームを建てること。
美しい整備工場。創業1946年という長い歴史を誇る東京自動車興業(親会社)が持つトラック整備のノウハウにより、確実な整備が行われる。
スカニアの刻印が施されたボルト、そしてグリフィンマークも凛々しいハブ。こうしたディティールにグッと来てしまう。
PHOTO GALLERY
Text:遠藤 イヅル
Photos:横山 マサト