日本全国にサービス拡充を図るスウェーデンのトラック・バスメーカー「スカニア」にとって欠かせないのが、確かな技術力を誇る国内有数の整備能力です。三重県桑名市を拠点に、一般の乗用車はもちろん重機や建設機械の点検整備などを行うセイトー(株式会社整備工場東海)もスカニアのディーラーとしてその一翼を担っているのです。
スカニアディーラーとしても幅広く事業展開するセイトー
北欧スウェーデン・セーデルテリエに本社を構える世界的なトラック・バス・産業用エンジンメーカーの『SCANIA(スカニア)』が日本法人スカニアジャパンを立ち上げたのは2009年のこと。近年では2017年には東京モーターショーに初出展したほか、2年連続で販売台数も倍増。スカニアの新モデル投入も行われて日本国内における知名度もますます上がっている。そして働く道具であるトラック・バスにとって大切なサービス網の拡充を進めており、全国各地にスカニアディーラーが続々と増えている。今回ご紹介するセイトー(SEITO、株式会社 整備工場東海)は三重県を中心としたエリアをカバーするスカニアディーラーのひとつで、三重県北部の工業都市・桑名市に本社を置く。一般の乗用車から大型車、特殊車両の点検整備、車検、修理からトラックのボディ架装、新車・中古車の販売、重機や建設機械の点検整備やリース、保険も取り扱う自動車サービス業務のエキスパートである。
三重県桑名市のセイトー(株式会社 整備工場東海)。こちらの本社のほか重機の整備を行う同市内の葵工場、産業用エンジンの整備を得意とする福島県二本松市にある福島工場を有する。
愛知県と三重県を結ぶ大動脈、国道23号線沿いに立つスカニアのサイン。
取材日には5台のスカニアが集結
取材日にはセイトー本社内の巨大な整備工場前にはイメージカラーをまとった新モデルのトラクター(R450)、現行型トラクター(R450)、日本ではまだ導入例が少ないスカニアのコンクリートポンプ車(P410)3台の合計5台が取材陣を待っていた。敷地が広く整備工場がとても大きいのでスカニアが小さく見えるが、近づくとその巨体に改めて驚かされる。特に1、2、5軸がステアし3、4軸が駆動輪となる5軸(!)リジッドトラック(10×4*6)は大迫力。5軸のシャーシを日本国内で見ることができる機会は稀だ。
敷地内には5台のスカニアが待っていて、取材陣のテンションも上がる。しかもそのうち右側の3台は日本ではまだ珍しいスカニアのコンクリートポンプ車だ。架装部分は性能に定評を持つ韓国のEVERDIGM(エヴァダイム)製。
3台のコンクリートポンプ車はいずれもスカニアのスタンダードモデルで乗降性・経済性に優れるPキャブ「P410」。なお左端のP410はこれまでスカニアとしては筆者が国内で見たことがなかった仕様でびっくり。3台ともに詳細は本記事末尾の「フォトギャラリー」をご参照あれ。
新モデルと現行モデルのスカニアトラクターが並ぶ。実はなかなか見られない光景だ。新モデルがスカニアのアイデンティティをしっかり継承していることやディテールの違いがよくわかる。
広大な敷地に建つ本社工場ではオリジナルボディの架装も可能
セイトーの創業は1961年。当初は車両整備工場として営業を開始している。1965年に株式会社 整備工場東海を設立、その後1970年に自動車整備指定の認定を受け民間車検工場となって一般車の整備をスタートした。翌1971年からは建設機械、産業機械部門の専門工場(葵工場)を新設している。現在の本社と本社整備工場は、1999年に創業地から現在の場所に移転されたもの。幅50m、奥行き約164mという広大な敷地には、大型車を14台も収容できる近代的な整備工場棟、大型車の洗車や鈑金、フレーム修理、の完成検査も可能な施設を備えた検査場棟、そして3階建ての本社屋を構え、自動車に関するあらゆるサービスに柔軟に対応している。
柱がない広々とした構造を持つ本社整備工場。46m×約64m、高さ約10mの大きさを誇る。
建屋が大きいため、本来なら見上げるほど大きな大型トラックが小さく見える。大型車も点検整備が可能なストールを含め合計23のストールを備えている。
整備工場の作業エリアはすべて屋根に覆われており、建屋も柱がない構造のためとてもスッキリとしている。高さは10mほどあるため、ご覧のように大きな車両もとても小さく見える。19mの長さを持つ大型車用車検ストールが4本、大型車用一般ストールを6本持つなど同時に入庫できる台数も多く、この日もほとんどが埋まっていた。工具類は整理整頓がしっかりされていて、作業現場もとてもクリーンだ。また、あらゆる車両を取り扱うことが可能な同社らしく、冬季に高速道路を除雪する道路維持管理車が3台整備されていた。除雪する車両は前方にスノープラウ、シャーシの上に融雪剤をストックするタンクを備えるが、融雪剤の影響で車体にはサビが発生しやすくなるため、シーズンインするこの時期に整備や修理を行うとのことだ。
同社では建設現場や開発施設で要望される特殊用途の車両も自社で設計が可能で、「東海ボディ」としてオリジナル架装車の設計・施工も展開している。整備工場内にはそのオリジナルボディを製造、架装、修理するブースも用意されている。
道路維持作業車も入庫中。重機を含めあらゆる車両の整備に対応している。工場内は整理整頓がしっかり行われている。
セイトーでは「東海ボディ」としてカーゴ車、ダンプ、クレーン車など様々なオリジナル架装車の製作も行っており、本社工場内に製作ブースを擁する。
コンクリートポンプ車で発揮されるスカニアエンジンの優れた性能
「スカニアとの関わりは2015年にサービスディーラーとなったところからで、2016年からは販売も行えるフルディーラーに移行しています。スカニアジャパンからのお声がけいただいたのがきっかけで、販売についてはお客様から『セイトーさんがスカニアのサービスを開始したのだったら、スカニアを購入したい』との声をいただいたことが始まりです」
と、スカニアディーラーとなったストーリーを語っていただいたのは、株式会社 整備工場東海 代表取締役の林 政孝氏。今回、納車直前の3台のスカニアのコンクリートポンプ車を見ることができたのも、同社は特装車、特にコンクリートポンプ車を得意としているためで、そしてお客様からとても高い評価をいただいていることも教えてくださった。その理由と評判の内容も引き続き林社長にお聞きすることにした。
「以前よりコンクリートポンプ車の整備で持ち込んでいただくお客様が多かったのですが、『スカニアのシャーシを提供してもらえるのなら、それにコンクリートポンプ部分を載せたい』というコンクリートポンプを取り扱うお客様がいらっしゃいました。そのお客様は韓国のコンクリートポンプメーカーであるEVERDIGM(エヴァダイム)社の代理店をやってらっしゃることもあって、昨年はスカニアのシャーシにエヴァダイム製コンクリートポンプを組み合わせた車両を7台販売させていただきました。今回ご覧になられた3台も、これからナンバーを付けて納車をいたします。」
株式会社整備工場東海 代表取締役 林 政孝氏。スカニアディーラーとなった経緯、スカニアの評判、スカニアエンジンが特殊車両にも優れた性能を与えることを教えてくださった。クルマが好きとのことで、同じ趣味の筆者としばしクルマ談義に。
「コンクリートポンプ車では、PTO(パワーテイクオフの略。本来車両を走らせるためのエンジン出力をダンプの荷台、クレーンやポンプを稼働させるために取り出す装置のこと)を入れてポンプを稼働させた際、エンジンのトルクが少ないとポンプから出されるコンクリートの圧が弱くなってブームが揺れ安定しないのですが、スカニアではトルクがしっかりあるので、コンクリートを打っている時に脈動が無いのです。スカニアのエンジン、エンジン特性が素晴らしいところだと思います。お客様も『使ってみたらスカニアは良い』という実感をお持ちいただき、スカニアをリピートしていただいておりますし、口コミで広まって他の業者様もご興味を示していただいています。特装車以外のスカニアでは、高馬力のV8エンジンは重量物を運ぶお客様からは評判が良いです。V8エンジンは現在スカニアしか日本では購入できませんので、それをお客様にアピールしたところ『すぐ欲しい』とのお返事をいただき、ご購入いただきました。購入後は乗りやすく、どこまでも走っていけるほど運転にストレスがない、燃費もとても良い、パワーも申し分ない、という高い評価をいただいております」
セイトーが得意としているのがこのコンクリートポンプ車の販売。豊富なトルクを持つスカニアのエンジン特性によって安定したコンクリートの圧送が可能なため、使用する現場からの評判は高いという。
東南アジア各国のビッグプロジエクトに技術者を派遣
セイトーが行う事業の中で注目したいのが、海外への技術者派遣である。これは東南アジア各国で盛んに行なわれているダム、工場用地、港湾や空港、高速道路など様々な建設工事のビッグプロジェクトに積極的に同社の熟練技術者を派遣するもの。大型建設機械や車両のメンテナンス、整備部門に同行して現地に駐在するため、プロジェクトによっては数ヶ月、数年単位で海外出張となることもある。また、同社の優れやメンテナンスのノウハウを現地スタッフに教育が行えるメリットもある。これまでラオス、サイパン、グアム、フィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシア、スリランカ、中国、カンボジア、インド、イラクなど各地に派遣実績を持ち、現在はフィリピンに社内スタッフが常駐しているという。
今回社内をご案内いただき、詳しい業務内容を教えてくださった株式会社 整備工場東海 セイトー工場営業課長の小村 隼人氏は、これまで合計23年、8カ国に渡り現地で活躍をされた貴重なご経験をお持ちである。短いときは1年半、長いときは3年から5年、それ以上滞在したこともあるという。また、同社では管理職はほぼ、本社からはこれまで5〜6名、建設機械部門のスタッフは15名ほどが海外派遣経験があり、中には一度に20名ほどが参加したこともあったとのことだ。
海外への出張歴23年、渡航国8カ国を数える株式会社 整備工場東海 セイトー工場 営業課長 小村 隼人氏。「大変だった国は?」とお尋ねしたら「おおむね大変でした(笑)」とのこと。苦労がしのばれる。
スカニアは触れば触るほど好きになる
続いて同社でスカニア整備のリーダーを務める小杉 英一氏に、整備面から見たスカニアのお話をお聞きした。スカニアの整備担当になってから2年ほどになるという。
「スカニアの整備性はシンプルでかなり良いです。海外、日本の最新排ガス規制に対してとてもシンプルにクリアしていることに感心します。現在の自動車整備では診断機が必須ですが、スカニアの診断機はとても扱いやすいですね。触れば触るほど、スカニアを好きになります。お客様からの評判も高いです」
また、先日納車で現行車を運転する機会があり、その際にスカニアは乗り心地が良くパワーがあることや燃費の良さに感心したという。
「スカニアだったらドライバーとしてずっと乗っていたくなります!」
スカニア整備チームのリーダーを務める小杉 英一氏。スカニアは整備性がとても良いと語ってくださった。
お客様からの「いいね」という声が嬉しかった
インタビューの最後に、林社長にご自身のスカニアへの感想と、今後のことについてお伺いした。
「スカニアの取り扱いを始めてから『スカニア、すごく良いよ』という声をよく聞き、自分でも納車で運転してみて『運転が楽だ』と感じていたのですが、実際に買われたお客様にご挨拶に伺った際に『本当に良いですね、思っていた以上です』という声をいただいて、それがとても嬉しかったですね。今後のスカニアの販売につきましては、特装車以外にトラクター関連の需要が多い土地柄ですので、今後はトラクターにも力を入れていきたいと思います」
明るく取材にご対応いただき、撮影中も車両の移動などまで手伝ってくださった林社長率いるセイトー。美しく整理整頓された工場からは、同社の車両への愛情の深さや仕事への真摯な姿勢が感じられた。スカニア製品の美点をとても良く理解され個性ある車両のセールスにつなげ、セイトーがプロデュースするさまざまなスカニアの活躍を、今後も応援したい。
取材最後にはスカニア新モデルとともに本社スタッフ一同で記念撮影。皆様ありがとうございました。
PHOTO GALLERY
Text:遠藤 イヅル
Photos:真弓 悟史