Scania’s History

110年の歴史を誇るスカニア製バスの歴史を振り返るVOL.01〜1911年から1960年代まで〜

2019年、GRIFF IN MAGAZINEでは “革新の文化を継続してきた「スカニアトラック117年の歴史」”と題し、『SCANIA(スカニア)』の長い歴史と、時代を彩ったトラックたちを4回に分けてご紹介しました。

VOL.01 〜創業から1945年まで〜 はこちら
VOL.02 〜戦後から1970年代まで〜 はこちら
VOL.03 〜1980年代から1990年代まで〜 はこちら
VOL.04 〜2000年代から現代まで〜 はこちら

ご存じのとおりスカニアは、トラックだけでなくバスの分野でも世界有数のメーカーで、これまでに納入したバスの台数は、長距離バスだけでも17万台以上にのぼります。最近では、日本各地でもスカニア製エンジンを積んだ連節バス・路線バス・二階建てバスが活躍を始めており、その姿を目にする機会が増えています。

そこで今回から2回にわたり、1911年に登場して以来、2021年で110年の歴史を誇るスカニア製バスのヒストリーを、貴重な写真とともにお送りします。第1回は、1910年代から1960年代までの歴史をお送りいたします。

【1910〜20年代】スウェーデン初の国産バスなど、様々なバスを製造

ここで、改めて創始期のスカニアを振り返りましょう。スカニアは、1900年にスウェーデン南部の都市・マルメ(Malmö)に設立されました。さらに、スカニアにはもうひとつルーツがあります。それが、現在のスカニア本社があるセーデルテリエに、1891年に設立された「ヴァビス」です。この2社は1911年に合併して「スカニア・ヴァビス」となり、現在のスカニアへとつながっていきます。

合併時には両社が持つ工場の役割が明確にされ、乗用車をセーデルテリエ、トラックやバスなど大型車両の製造をマルメが行うことになりました。その後1920年代に入ると、マルメの工場閉鎖と乗用車の製造を終了。工場がセーデルテリエに一元化されました。

1911年型 スカニア・ヴァビス“ノルドゥマルク”

スウェーデン初の国産バスは、1911年からスウェーデン西部のアモットとオーリエン間で営業運転を開始した。しかし、当時まだバスは珍しい乗り物だったため、ある日、道でバスとすれ違った馬が怯えたことで、馬の御者が怒ってしまった。その抗議の声は大きく、このバスは湖に沈められてしまったという。時代を感じさせるエピソードである。

合併した1911年、スカニア・ヴァビスはスウェーデン初の国産バスを誕生させています。ボディは鉄道車両が得意だったセーデルテリエのヴァビスが作り、マルメのスカニアはエンジンなどを担当。両社の合併効果が早速あらわれています。この24人乗りのバスは、「ノルドゥマルク」と称されました。

1922年、スカニア・ヴァビスはスウェーデン郵便局に郵便バスを納入しました。郵便局の協力も得て開発されたこのバスは、寒さが厳しく、積雪が多いスウェーデン北部でも使用できるよう、フロントタイヤにはソリを、リアタイヤには無限軌道を装着。高い悪路走破性を実現していました。

1922年型 スカニア・ヴァビス 3241型郵便バス

スウェーデン郵便局で活躍した郵便バス。エンジンは最高出力36hpを発生する3.6ℓの水冷4気筒サイドバルブで、ボディは郵便局の工場が手がけたという。

スカニア・ヴァビスのバスは、その後も次々と活躍の場を広げていきます。1925年にはスウェーデン国鉄が、ディングレ〜フィエールバッカ間の路線バスにスカニア・ヴァビス製の24人乗りバスを導入しました。また、1928年にストックホルムに導入されたバスは、高性能エンジンを搭載していたことから、「レーサー」と呼ばれました。

1925年型 スカニア・ヴァビス 3752型“ディングレ”

3752型は「ディングレ」という愛称を持つ24人乗りバス。この頃のバスは、ボンネットから後部のボディは、馬車などを作っていた工房が担当。3752型は「レオナルド・ヤンソン(Leonard Jansson)」が手がけていた。

1928年型 スカニア・ヴァビス 8406型 “レーサー”

5.8ℓ直6エンジンを積んでいた8406型。全長8.35m、最大で40人が乗れるボディワークは、アルヴィカ(Arvika)によるもの。高性能を誇ったが、1931年までスウェーデンではバスの最高速度は20km/hに抑えられていた。

【1930年代】キャブオーバー型バス「ブルドッグ」登場 ディーゼルエンジンも搭載開始

バスの有用性や利便性が認められたことで、バスの利用客はさらに増え、一度に多くの乗客を運ぶことも要求されるようになりました。しかし、それまでのボンネットバスでは、ボンネット部分に乗客が乗れず空間効率が良くなかった。そのニーズを受けたスカニア・ヴァビスは、当時では極めて先進的な設計のキャブオーバー型バスを開発。1932年から製造を開始しました。このバスは、その見た目から「ブルドッグ(Bulldog)」と呼ばれ親しまれました。

1932年型 スカニア・ヴァビス 8305型 “ブルドッグ”

エンジン位置はボンネットバスと同一ながらも、前面窓が車体前端まで移動してスペース効率を改善した8305型。乗車定員も増え、36席の44人乗りとなった。エンジンは最高出力100psの6.4ℓ直6ガソリン。「ブルドッグ」にはいくつか架装メーカーがあるが、8305型は「スヴェンスカ・マスキンヴェルケン(Svenska Maskinverken)」の車体が載る。

1930年代 セーデルテリエのブルドック・バス

セーデルテリエでの街に集う「ブルドッグ」。様々な形態があったことが伺える。

1936年、スカニア・ヴァビスは同社初となるディーゼルエンジンを発表しました。予熱燃焼室を持つ、高性能6気筒ディーゼルエンジンにより、スカニア・ヴァビスのトラックとバスの性能は大きく向上。それ以降、従来のガソリンエンジンを置き換えていきました。

1936年 スカニア・ヴァビス初のディーゼルエンジン

1936年、スカニア・ヴァビス初のディーゼルエンジンが開発され、バスにも搭載が行われた。1939年には、モジュラーシステムのはしりとなるディーゼルエンジン「ロイヤル」も登場している。この頃すでに、標準化した部品を使用してバリエーションを展開するアイデアが生まれていたことは、特筆に値する。

【1940年代】車種を急速に拡大

世界各国を巻き込んだ第二次世界大戦は1945年に終わりましたが、中立国だったスウェーデンの経済も疲弊していました。暮らしが再興していく中、物資や人の輸送力増強は大きな課題となり、スカニア・ヴァビスでは終戦前の1944年に発表した「L10型」トラックの製造を続行。戦後の経済復興を支えました。

バス部門では、ブルドッグの発展改良型となる新しいバスのシリーズが1946年に誕生します。重量やホイールベースの長さによってB15/16、B20/21/22、B31などに細かく車種が分かれていました。

1947年型 スカニア・ヴァビス B31型

戦後型となるバスのシリーズは、1946年に登場した。写真はストックホルム市内を走るB31型。ヘグランド&スーネル(Hägglund-&-Söner)が車体を架装する。ボディメーカーは他にもヘルコ(Helko)、ASJ(AB Svenska Järnvägsverkstaderna)など数社が存在。B31にはトロリーバス版の「T31」もあった。

1949年型 スカニア・ヴァビス B21型

こちらは、丸みを帯びたデザインが特徴的なASJ製の車体を架装するB21型で、全長は約10m。フロントには、135hpのD604型ディーゼルエンジンを積んでいた。スカニアがブラジルに輸出した最初のバスも、B21型だった。

【1950年代】近代的な都市交通用の「コンプリート・バス」も開発

B15/16、B20/21/22、B31はその後も改良が続き、1950年代に入ると形式もB10代はB40代・B50代に、B20代はB60やB70代へと進んでいきました。一方、フロントエンジンのまま車体をさらに大きくするために、エンジンをより前方に突き出してオーバーハングを延長、フロントタイヤの前にドアの設置を可能にした「BF型」も登場しました。

1950年型 スカニア・ヴァビス BF61型

フロントエンジンでありながらオーバーハング部にドアを設けることを可能とした「BFシャーシ」を採用したBF型。写真のBF61型は、ヘグランド&スーネルのボディを載せる。D611型ディーゼルエンジンを搭載していた。

1953年にデビューした近代的な都市交通用バス「C50型」“メトロポール(Metropol)” は、ボディワークもスカニアが手がけた「コンプリート・バス」でした。アメリカのトラック・バスメーカー「マック(Mack)」と共同で開発され、スウェーデン初のモノコックボディを採用したバスでもありました。エンジンはスカニア製のD821型11.3ℓ直8ディーゼルで、後部に横置き搭載したことにより、広い室内と80名という定員を実現していました。ストックホルムに投入されたC50型は200台に上り、ストックホルムの街並みを印象的に彩りました。

1953年型 スカニア・ヴァビス C50型“メトロポール”

アメリカの「マック」との合弁企業を通じて製造されたC50型は、どことなく同時代のアメリカ製バスらしい雰囲気を漂わせる。全長は12m、全幅は約2.5mに達し、従来のバスより大きくなったが、リアエンジンになって前輪の切れ角が増し、小回りは十分に効いた。しかもパワーステアリングも備わり、運転も容易だった。1967年に、スウェーデンは左側通行から右側通行に変更したため、ドアの位置が左右逆になったC50型は、残念ながら全車退役している。

C50型に続いて1955年には、ボディサイズを小さくして使い勝手を向上した「C70型」“キャピタル(Capitol)”が登場しています。車体だけでなく、エンジンも10.3ℓ 直6へと小型化していました。C70型は改良を行いながら、最終的には「C76型」となって1964年まで製造されました。

1955年型 スカニア・ヴァビス C70型 “キャピタル”

C50型の全長を短縮したC70型は、「キャピタル」という愛称を持つ。キャピタルシリーズのC 70/C75/C76は、1981年まで使用された。エンジンはD10型10.3ℓ直6ディーゼルで、定員は66人。

1959年型 スカニア・ヴァビス CF65型

スカニア自製ボディを載せるフロントエンジンバスのCF型も、1959年から1966年という短期間ながら設定されていた。写真は、1959年のCF65型。

【1960年代】環境に配慮したバスも開発

1950年代には輸出部門を創設したスカニア・ヴァビスは、1957年からブラジル現地法人でトラックの製造を開始しており、1959年にはバスも続きました。ブラジルで最初に作られたバスは「B75型」で、ブラジル独自のボディが架装されていました。

1961年型 スカニア・ヴァビス B75型

1959年からブラジルでの製造が始まった際、選ばれたのはB75型だった。独特のデザインを持つ車体は、ブラジルのバスボディービルダー「シフェラル(Ciferal)」製。なおシフェラルは、バスボディを作るメーカーの「マルコポーロ」に吸収され、現在は消滅している。

C70型の発展版「CR76型」の後継として、1966年に登場したのが「CR76型」です。低床による乗降のしやすさ、大きな窓の近代的なデザインを持ち、乗客を快適に運ぶことが可能でした。また、CR76型は車体の軽量化や、排気ガスの低減にも注力が注がれており、環境に対する意識が、すでにスカニア・ヴァビスに芽生えていたことを教えてくれます。

1966年型 スカニア・ヴァビス CR76型

モダンなボディを得たCR76型。11ℓから190hpを発生したD11型直6ディーゼルエンジンを車体後端に横置きする。CR76型には路線バス用に前後ドアを持つ「CR76M」と、長距離バス用の「CR76L」があった。

1968年、スカニア・ヴァビスはスウェーデンの自動車・航空機メーカー「サーブ」との合併を実施。社名も、「サーブ・スカニア」となりました。これを受け、車名の付与方法が変更され、体系づけられていきました。CR76型では、「C」=自社ボディ(例外あり)、「R」=リアエンジンまでは同一でしたが、「76」は「110」に変わっています。「11」は11ℓエンジン搭載を意味し、末尾1の位は「世代」を示すことになりました。

1968年型 スカニアCR110型

スカニア・ヴァビスがサーブと合併した際、CR76型はCR110型に改名された。写真は、一代後のCR111M。なお合併前年の1967年、スカニア・ヴァビスは、カトリネホルムで1940年代から優れたバスボディを製造していたSKV(Svenska Karosseri Verkstäderna)を傘下に収め、バスシャーシおよびバスボディの製造を移管した。そのため、CR76および110型は、カトリネホルムの工場から出荷されている。

日本ではほとんど知られていない、スカニア製バスのストーリーの前半はいかがだったでしょうか。日本のバスとはまた違った発展をしており、興味は尽きません。
次回は、1970年代から現在までの、スカニア製バスの歴史を辿ります。どうぞお楽しみに。

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Text:遠藤 イヅル

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