Scania’s History

スカニアが誇る「モジュラーシステム」VOL.2 〜モジュラーシステム発展の歴史を辿る〜

スウェーデンのトラック・バス・産業用エンジンメーカー『SCANIA(スカニア)』が製品開発の基本概念として持つ「モジュラーシステム」は、スカニアにとってDNAともいえる重要な考え方です。このモジュラーシステムを2回に分けて詳しくお伝えする記事のVOL.2では、スカニアがどのようにモジュラーシステムを生み出したのか、そして現在まで発展させてきたのかを辿ります。

【前編】スカニアが誇る「モジュラーシステム」VOL.1 〜少ないピースの組み合わせで無限のバリエーション〜 はこちら

スカニアのモジュラーシステムは、1930年代に早くも萌芽

スカニアという企業の根幹をなす考え方であるモジュラーシステムは、世界中の企業から注目されており、乗用車や家電開発など「ものづくり」全般に活かされています。これを工業製品で初めて取り入れたのは、スカニアでした。その歴史は古く、なんと1930年代まで遡ることができます。スカニアではこの時代に早くも、コンポーネントを標準化するという考え方を持っていたため、スカニアの前身・スカニア・ヴァビスが1939年に導入した「ロイヤル」エンジンには、すでにモジュール式コンポーネントという概念が取り入れられていました。

スカニアの前身となるスカニア・ヴァビスは、1939年に「ロイヤル」というモジュラーシステムのはしりとなるエンジンを導入した。写真は、1949年に登場した直噴エンジン。8気筒版は船舶のみに使用された。

スカニア・ヴァビスでは海外輸出や南米での現地生産を開始したことで1950年代に大きく発展。そして1960 年代以降にはトラックの生産が飛躍的に増大しました。それに応じてユーザーからの要望も高まり、ニーズに合わせたさらなるバリエーション展開が求められました。設計は複雑さを増し、トラックのクラス分けをする必要性も生まれていましたが、当時はまだモジュール化の概念は深く浸透せず、たとえば1 つのエンジン対して、アクスルやギアは対になっているのが当たり前でした。これでは、多くの車種を開発するのは困難でした。そこで、限られたコンポーネント数でユーザーのニーズに応えるというモジュラーシステムの考え方が発展していきました。

分解したキャブ、シャーシ、エンジン、ギアボックス、アクスルと技師たち。この時代すでに、スカニア・ヴァビスはパーツやコンポーネントのモジュール化を始めていた。車種は初のキャブオーバー型トラック「LB76」。1960年代、セーデルテリエのスカニア・ヴァビス工場内で撮影。

1980年、本格的にモジュラーシステムを取り入れた「2シリーズ」登場

そして1980年代。スカニアトラックはモジュラーシステムを本格的に採用した「2シリーズ」にフルモデルチェンジしました。2シリーズのモジュール化は徹底しており、エンジンではシリンダー数の増減だけでエンジンバリエーション展開を容易にしました。同様に、ギアボックス、プロペラシャフト、ファイナルギア、アクスルからキャブに至るまで、広範囲にわたりモジュール化が行われました。

2シリーズのモジュール化は、すでに完璧と言えるほどのレベルに達しており、限られた数の主要コンポーネントから、ほぼ無限といえるトラックのバリエーションを作ることに成功したのです。

モジュラーシステムは生産時間短縮にも大きな効果を与えました。従来設計でこれらをラインナップした場合に比べ、必要な部品点数は約70%減少し、キャブの平均製作時間も約30%削減しました。

現在に続くスカニアのモジュラーシステムは、1980年にデビューした2シリーズで本格的に採用された。エンジン、ギアボックス、アクスル、キャブを構成する部位などを完全にモジュール化したことにより、開発コスト・期間を低減しつつG、P、R、Tという4レンジを製品化できた。G、P、Rレンジでは全高がすべて異なるが、よく観察するとヘッドライト、窓、ドアなどの構成要素はほとんど同じ。

モデルチェンジごとに進むモジュール化

1988年、2シリーズは「3シリーズ」に進化しました。モジュール化はさらに進展し、エンジン、トランスミッション、アクスル、キャブなどのコンポーネントを、注文された内容に合わせコンピュータが分解。用途に応じて細かく指定されたオーダーでも、決まった納期内で完成させることも可能に。複雑化するニーズに合わせた豊富な種類の製品を、より多く、よりスピーディに提供できるようになりました。

モジュール化をさらに進めた3シリーズは、1988年登場。キャブの高さ、アクスルの数、「143E」「93M」などの表記で作り分けを判別できる。

2000年には4シリーズにフルモデルチェンジ。4シリーズではシャーシのクラスが「M、H、E」から「L、D、C、G」と呼び名が変わっている。左の「164C」と右の「164L」ではシャーシの違いによって車高が異なるが、164Lにはハイルーフ仕様になっており、全高はどちらもほぼ同じ。搭載しているエンジンも、双方とも16ℓV8だが、左は580hp、右は480hpと仕様が異なっている。モジュラーシステムによって、自由自在に作り分けができる例。2シリーズ〜4シリーズの詳細は、こちらもご参照いただきたい。

革新の文化を継続してきた「スカニアトラック 117 年の歴史」VOL.03〜1980年代から1990年代まで〜 はこちら

2004年に登場した、4シリーズの発展版「PRT(PGR)シリーズ」。左から「T380」、「R580」、「P230」。ボンネットトラックのTシリーズは2005年で生産を終えた。2007年にはRシリーズとPシリーズの中間を担うGシリーズを追加し、「PGRシリーズ」と呼ばれるようになった。写真の右2台、R580とP230では異なる用途に合わせキャブの高さが異なっているが、なんとボンネットトラックのTシリーズまで、ドアは共通である。徹底したモジュール化が伺える。

1995年にはフルモデルチェンジを行なって「4シリーズ」が登場。インテリアの使い勝手や視認性は一層向上しました。モジュール化も推進され、トラックやバスだけでなく産業用エンジンとの部品の共用化を進めています。4シリーズは2004年に命名方法を一新、各部をブラッシュアップした「PRT(PGR)シリーズ」に発展し、2016年までスカニアトラックの看板を背負って活躍しました。

そして2016年、4シリーズ登場から21年ぶりとなるフルモデルチェンジを行った新モデル「NEXT GENERATION SCANIA」が誕生。10年もの開発期間、スカニア史上最大の約2,500億円という開発費用をかけ、シャーシ、キャブ、パワートレーンすべてを一新しています。走行性能、安全性能、燃費効率、快適性などがさらにアップしました。

日本では2018年から発売されている新モデル「NEXT GENERATION SCANIA」でも、モジュラーシステムが突き詰められている。左から汎用性が高いGキャブにヘビーデューティー仕様のXTシリーズを組み合わせた「G450XT」、新たな旗艦モデル「S730」、キャブ高さを抑え乗降性を向上、経済性に優れたPキャブのXTシリーズ「P320XT」、そして長距離移動に最適な高級モデル「R450」が並ぶ。P、G、R、Sシリーズごとのキャブ4種、5気筒・6気筒・V8のエンジン3種、軸の数、3種の屋根高さなどをモジュラーシステムによって展開しており、この4台だけでも実に細かくバリエーションを作り分けている。

未来のモジュラーシステムは、さらにシステマチック&シンプルに

スカニアNXTは、スカニアが提案する、2030年の都市での使用を想定しているバッテリー式自動運転車のコンセプトカー。

2019年、スウェーデン・ストックホルムで開催された「UITPグローバル公共交通サミット」に、スカニアは近未来の電気自動車「NXT」を展示しました。
現在の社会、交通システムでは、朝夕の通勤・通学時間に稼働するバスの台数は多くなりますが、デイタイムにはその多くが車庫で休んでしまいます。一方、資源や廃棄物の回収、配送も朝夕に行われると、交通ラッシュを招き、車両使用の最適化とは言えない状況になります。

そこでNXTでは、車体前後下部のドライブモジュールを、バス・配送トラック・廃棄物回収車と入れ換えることで、時刻や用途に合わせたオペレーションを行います。つまり朝夕はバスとして、それ以外の時間帯は配送や廃棄物回収を行うトラックとして運用するという考え方です。

NXTも、モジュール化したコンポーネントを目的に合った最適なソリューションに合わせて組み合わせるという、モジュラーシステムと同様の概念を持っています。スカニアが考える「これからのモジュラーシステム」を、NXTは示しているのです。

今後もスカニアでは、さらなるモジュール化の概念を推し進め、ユーザーにとって高い付加価値と利益を還元する製品を生み出していくことでしょう。

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Text:遠藤 イヅル
Photos:SCANIA

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