Scania’s History

スカニアが誇る「モジュラーシステム」VOL.1 〜少ないピースの組み合わせで無限のバリエーション〜

モジュラーシステムという言葉をご存知ですか。互換性が高い少数の部品を組み合わせることで、様々な製品バリエーションを展開する考え方です。これを世界で最初に実現し、リードしてきたのがスウェーデンのトラック・バス・産業用エンジンメーカー『SCANIA(スカニア)』です。スカニアのDNAともいえるモジュラーシステムというキーワードは、GRIFF IN MAGAZINEで幾度も登場しています。そこで、スカニアにとって重要な概念のモジュラーシステムを、さらに掘り下げ、2回に分けてご紹介したいと思います。VOL.1では、モジュラーシステムの考え方やメリットをお送りします。

モジュラーシステムは、スカニアのDNA

あらかじめ用意した少数のピース=「モジュール」を組み合わせ、多種多様な製品を作り出せる「モジュラーシステム」。スカニアは、このモジュラーシステムを長年にわたって採用・発展させてきたリーディングカンパニーです。

スカニアでは、製品開発だけでなく、セールス・アフターサービスからスカニアが扱う保険に至るまで、モジュラーシステムによって製品を作る「モジュラーデザイン」という思想が浸透しているほか、社員教育のプログラムにも盛り込まれています。このように、スカニアにとってモジュラーシステムは思考(マインドセット)そのもの。まさに「スカニアのDNA」と呼べるのです。

スカニアではモジュラーシステムの説明に、「レゴブロック®︎のように組み合わせて様々な立体物を作る」ことを例にします。レゴブロック®︎ではピースの形状やサイズは有限で、種類も定められていますが、ブロックを組みあげでいくことで、無限にいろいろなものを生み出せるのはご存知のとおりです。

モジュラーシステムの概念図。キャブの高さ、エンジンの大小、ギアボックスやアクスルの種類、シャーシのフレーム強度……などで最小限のピースを用意し、それらを組み合わせてモデルを構築するため、ユーザーのニーズやリクエストにも細かく対応できる。また、トラック同士だけでなく、パーツやコンポーネントの多くをバスに流用できるほか、産業用エンジンもトラック・バスとの高い互換性を持たせている。

具体的にモジュラーシステムをトラックに置き換えると、エンジン・補機類・ギアボックス、フレーム・アクスルなどのシャーシ、キャブのドア・ウインドウ・ルーフ・グリルなど最小限度の種類のパーツ・コンポーネントをあらかじめ設計して、組み合わせを変えて膨大な製品バリエーションを展開しています。カタログに掲載する基本車種だけでなく、ユーザーの使用条件・用途、ニーズやリクエストに応じた様々なバリエーションを無限に作ることも可能としているのです。

モジュラーシステムによって生まれた製品例

スカニアのトラックには、基本モデルとしてL(日本未発売)、P、G、R、Sシリーズを掲載しています。たとえば乗降性の良いキャブと優れた経済性を持つ「Pシリーズ」では、日中の配送業務に適した「デイキャブ」以外にも、長距離での運用が多いドライバー用に、より広いスペースと仮眠ベッドを持つ「スリーパーキャブ」を選べるほか、ルーフの高さも数種類を有します。シャーシでは、リジッドトラックもしくはトラクター、アクスル(軸)の本数を選択でき、エンジンも360hpを発生する9ℓ5気筒のほか、13ℓ直6も410hp版・450hp版も搭載が可能など、トラックの使用目的に合わせて自由に組み合わせることができます。

海外では、新モデルに「Lシリーズ」という、モジュラーシステムを極めたような低床キャブも登場している。明らかにキャブの高さが低いため、既存のP、G、R、Sシリーズと印象がかなり異なるが、実際には共通部品が多いことに気づく。

Lシリーズと、P、G(XT)、R、Sの各シリーズではキャブの高さやグリルに違いがみられるが、フロントやドアの窓は、すべて同じサイズ。これほど高さが異なるのに、LシリーズとPシリーズでは、ドアも共用だ。

もう少しキャブにフォーカスしてみましょう。写真の外見からわかりやすい例として、超低床キャブを採用し、都市部で頻繁な乗降を行う業務に最適なLシリーズからP、G、R、そして最高峰のフラッグシップ・Sシリーズまでは全高に種類があり、LシリーズとSシリーズでは着座位置も驚くほど異なっていますが、フロントガラスのサイズは1種類しか設定がありません。すべてのキャブに同じフロントガラスが使われているのです。また、LシリーズとPシリーズではドアが同一、P、G、R、Sシリーズではヘッドライトが共通であるなど、様々なコンポーネントが共通していることもわかります。

5、6、8気筒があるスカニアのエンジン。写真は最新型のV8エンジン「DC16」。シリンダーブロックをモジュール化しており、気筒の数によって排気量を変化させるという手法だ。

エンジンの構造もモジュール化されています。スカニアでは5気筒、6気筒、8気筒(V8)を設定していますが、いずれもシリンダーブロックをモジュール化しているため、シリンダーの数を変えることで排気量を変化させエンジンのバリエーション展開を可能としています。

そしてモジュラーシステムでは、モジュールごとに改良を加えられるのもメリットです。車両が大きなモデルチェンジする間もモジュールをこまめにアップデートしているため、常にスカニア製品は進化を続けることができるのです。

モジュラーシステムの原則

このように優れたモジュラーシステムでも、単純に採用しただけでは内在するメリットを完全に引き出すことはできません。そこでスカニアは、モジュラーシステムによる製品開発に、「原則」を設けています。

まず一つは、「最適なモジュールの数」です。モジュールは必要最小限にすることが必要ですが、ただ種類を少なくするとユーザーニーズに応じた様々な製品を作り分けられなくなります。一方でむやみにモジュールの数を増やすこともできません。そこでスカニアでは、用途ごとにユーザーニーズを正確に把握し、キャブ、シャーシ、パワートレーンごとに、無限のバリエーションを作り上げるためには、何種類のモジュールが必要なのかを考えて製品開発を行っています。

こちらのモジュラーシステムの概念図では、キャブを構成するパーツ、アクスル、ファイナルギアやシリンダー数などを組み合わせれば、高速道路を快走するトラクターも、過酷な環境や悪路で活躍するダンプも容易に作り分けることができることを示している。しかし、モジュール数は少なすぎればバリエーション展開を難しくし、無作為に大量に作っても無駄を招くため、ユーザーニーズを研究することによって最適な種類を導き出している。

次は、モジュールの「標準化と互換性」です。各パーツをモジュール化しても組み合わせられなければ、モジュラーシステムは実現できません。そのため各モジュールはインターフェースを標準化し、互換性を持たせています。例えば、シャーシのフレームにエンジンを載せる場合、数種類あるエンジンのマウントを共通にすることで、あらゆるモジュール同士の接続を可能としています。

最後は「同じ要望には、ひとつの解決策」。例として、ドアミラーを取り上げて見ましょう。構内ダンプでも、長距離トラックでも、後方を見るためのドアミラーを別に作りわける必要はありません。様々なモデルで使用できる最適な共通部品があれば、車種ごとの個別開発が不要になるため、スカニアでは、開発リソースを「最適な共通部品」の開発に充てることで、より機能的で品質の高いモジュールをすべてのユーザーに提供できると考えています。

モジュラーシステムは、ユーザーにも大きな利益をもたらす

ところで、トラックをオーダーする際に乗用車と大きく異なるのは、生産台数が少ない一方で、用途に応じて多くの車種を用意するという「相反する条件」が求められることです。事業者ごとに仕様が異なるため、トラックやバスは1台1台が受注製品ともいえます。

そこでスカニアでは、様々な顧客ごとに異なる個別の仕様要求をすべてカバーできるよう、モジュールを組み合わせた様々な仕様を、あらかじめ詳細に用意。この中からオーダーに応じた車両を選び出してユーザーに届けています。

これにより設計変更や追加を最小限にすることができ、人員・設備などのリソース削減、開発・生産時間の短縮、開発費の低減、納期の短縮、調達性向上に寄与するとともに、販売価格高騰の抑制も実現。ユーザーにも多くのメリットを還元します。

モジュラーシステムでは、トラックのエンジンやラジエターなどの補機もユニット化・モジュール化されているため、バスにも応用可能。少量生産かつ種類が多く、細かなニーズに応える必要があるトラック・バス・産業用エンジンの開発・製造においてモジュラーシステムのメリットは大きい。

スカニアは、ユーザーがどのようなオペレーションするのかを深く理解し、それに合わせてモジュラーシステムを活用した最適な製品を提供しています。無駄のない製品は、運用時のコストを下げることが可能となり、ユーザーに大きな利益をもたらします。

トラックだけではない、スカニアのモジュラーシステムが持つメリット

ここで、スカニアのモジュラーシステムがもたらすメリットの好例として、雪上車にスカニア製産業用エンジンを搭載した事例をご紹介しましょう。その雪上車とは、GRIFF IN MAGAZINEでも幾度かご紹介している大原鉄工所のゲレンデ整備車「RIZIN(雷刃)」です。

豪雪地長岡と北欧SCANIAのタッグで生まれた雪上車RIZIN はこちら

ゲレンデ整備車は冬期にスキー場で用いられるため、雪質、ゲレンデ、気温、天候の違いを冬の短期間でテストする必要があります。そのためゲレンデ整備車開発にはとても時間がかかります。そこで大原鉄工所は、開発日数削減のために、特に開発時間が必要なパワートレーンにスカニアを採用しました。

スカニアが選ばれた理由は、まさにモジュラーシステムにありました。従来の産業用エンジンメーカーからエンジン供給を受けた場合では、ラジエター類の別開発や、他の補機類が流用できるかどうかを調べる必要が生じていました。一方、スカニアでは補機類もモジュール化されているため、実績ある既存コンポーネントを組み込むことで新規設計を省き、パワートレーン開発を短時間で進めることができました。さらに、コンプリートされた部品を装着していくため組み立てる際の手順が少なく、製作時間の短縮にもつながりました。

世界で3社しかない雪上車メーカーのひとつ、大原鉄工所のゲレンデ整備車、「RIZIN(雷刃)」。350hpを発生するスカニア製9ℓ産業用ディーゼルエンジン「DC09」を搭載している。

スカニアのモジュラーシステムを生かして、新規設計することなくバス用をそのまま使用することが出来たラジエター。スカニアが採用された理由のひとつである。

新潟県長岡市にある大原鉄工所・本社工場で組み立て中の、RIZINのシャーシとスカニア製エンジン。これから補機類、油圧系統、車輪、車体、履帯が装着されていく。

このように、モジュラーシステムは大きなメリットを製品とユーザーにもたらします。スカニアがモジュラーシステムを取り入れた歴史はとても古く、なんと1930年代まで遡ることができます。次回のVOL.2では、スカニアがどのようにしてこのモジュラーシステムを生み出し、現在まで発展させてきたのかを詳しくお送りします。

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Text:遠藤 イヅル
Photos:SCANIA、Masato Yokoyama

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