Scania’s History

革新の文化を継続してきた「スカニアトラック117年の歴史」VOL.02 〜戦後から1970年代まで〜

連載でお届けしている『SCANIA(スカニア)』トラックの歴史。第2回となる今回は、創業期から終戦の年となる1945年までの前回に続いて、スカニアが大きく成長した1970年代までに生まれたトラックの数々をご紹介します。

「スカニアトラック117年の歴史」VOL.01 〜創業から1945年まで〜 はこちら

【1940年代後半】直噴ディーゼル搭載トラックが登場

現在のスカニアに至る2つの会社「スカニア」と「ヴァビス」は、奇しくもそれぞれ1902年に1.5t積みのトラックの発売を開始した──ということはVOL.01でご紹介しました。1911年の「スカニア・ヴァビス」合併後、トラックの種類、生産台数を増やしていきました。1939年に始まった第二次世界大戦の最中にはスカニアも軍用車を作る企業となりましたが、終戦前の1944年から民間市場向けトラック「L10型」の生産を開始。L10型は1950年代末まで製造され、その後のスカニアトラックの基礎を作りました。

1946年になると、モジュール式の直6ディーゼルエンジンを載せたひと回り大きな「L20型」が登場しました。L20型は、早くもその3年後の1949年、新開発の直噴式ディーゼルエンジンを搭載した「L60型」に進化しています。

1949年型 スカニア・ヴァビス LS23型

革新の文化を継続してきた「スカニアトラック117年の歴史」VOL.02 〜戦後から1970年代まで〜

1946年に登場したL20型は、L10型に直6エンジンを搭載した大型トラック。LSの“L”は「トラック(スウェーデン語でLastbil”)」、“S”は「3軸車」を意味する。1949年まで生産された。

1949年 スカニア・ヴァビス D610型 直噴ディーゼル

革新の文化を継続してきた「スカニアトラック117年の歴史」VOL.02 〜戦後から1970年代まで〜

1949年、8.5ℓから133hpを発生するD610型直噴ディーゼルエンジンを新たに搭載したL60型が発売された。耐久性にも優れていたことから「40万キロエンジン」と呼ばれた。(写真:遠藤 イヅル)

【1950年代】大排気量エンジンを搭載して輸送力増強に対応

1950年代に入ると、輸送力増強に応じるため、さらに大きなエンジンの開発が進みました。1954年、148hpという高出力を誇った9.3ℓの直6直噴ディーゼルエンジンを積んだ「L71型“リージェント”」が登場。パワーステアリングとエアブレーキを備えてドライバーの快適性も大きく向上し、長距離輸送に活躍しました。

1954年型 スカニア・ヴァビス LS71型

革新の文化を継続してきた「スカニアトラック117年の歴史」VOL.02 〜戦後から1970年代まで〜

さらに大きな輸送力をL60型に与えるべく開発された、9.3ℓのD642型 直6直噴ディーゼルエンジンを搭載したL71型“リージェント”。写真のモデルは3軸のLS71型。L70型のトランスミッションは当初ノンシンクロ4速だったが、のちに5速に置き換えられた。

1958年、戦後のスカニアトラックの代表作「L75型」が誕生。エンジンの排気量はついに1万ccを超えました。より過酷な輸送に対応する、後輪2軸を駆動できる仕様も開発されました。

1960年型 スカニア・ヴァビス DLT75型

革新の文化を継続してきた「スカニアトラック117年の歴史」VOL.02 〜戦後から1970年代まで〜

1958年に登場し、細かな改良を重ねて1980年まで製造されたロングセラー「L75型」。同モデルは、それまで独立していたヘッドライトがフェンダーに収まって外観も近代化。内装では、それまでダッシュボードのセンターに置かれていた計器類を初めてドライバー正面に設けた。写真のモデルはダンプで、リアアクスルは両方とも駆動軸。「DLT」の“T”はタンデムアクスルを意味する。1963年には「L76型」に発展。

【1960年代】キャブオーバートラックとV8搭載モデルがデビュー

L75型は1963年にはエンジンを1.1ℓに拡大した「L76型」に発展、現在のトラックに見られる「エンジンの上に運転席がある」キャブオーバー型トラック「LB76型」をラインナップに加えました。キャブオーバー型となったのは、1960年代初頭に欧州各国が実施したトラックとトレーラーの全長規制の流れを汲んだもので、積載量を少しでも多く確保するために短いキャブを採用したのです。

1963年型 スカニア・ヴァビス LB76型

革新の文化を継続してきた「スカニアトラック117年の歴史」VOL.02 〜戦後から1970年代まで〜

1960年代に入って欧州で決まりつつあった全長規制に対応するために開発されたキャブオーバー型スタイルの「LB76型」。“B”はブルドックから取ったとされる。1961年以降はターボエンジン搭載モデルも用意され、車名には「スーパー」が付与された。この時代のキャブはまだチルトしなかった。

1966年型 スカニア・ヴァビス L36型

革新の文化を継続してきた「スカニアトラック117年の歴史」VOL.02 〜戦後から1970年代まで〜

トラックの大型化が進んだ「スカニア・ヴァビス」では、配送などに適したモデルもラインナップを継続。「L36型」は、1964年から販売を開始した中型トラックだった。また、LB110型とキャブを共用するキャブオーバー型中型トラック「LB80型」も1968年に登場している。

LB76型の後継モデルとなるLB110型が登場したのは1968年でした。丸みが少ない直線基調のモダンなデザインになっただけでなく、キャブが前方にチルトすることが可能になりました。

そして、スカニアの象徴である“V8”エンジン搭載モデルが、いよいよ1969年にその姿を現しました。V8ディーゼルエンジン「DS14型」は、欧州で最も強力な345hpというパワーを得ていました。

1969年 スカニア DS14型 V8ディーゼルエンジン

革新の文化を継続してきた「スカニアトラック117年の歴史」VOL.02 〜戦後から1970年代まで〜

排気量14ℓのV8ディーゼルエンジン「DS14型」。最高出力は345hpに達し、当時の欧州で最も強力なトラック用エンジンだった。LB110型以降のキャブオーバー型トラックは手動ポンプ式でキャブチルトが可能になって、整備性が大幅にアップした。

1970年型 スカニアLB110型

革新の文化を継続してきた「スカニアトラック117年の歴史」VOL.02 〜戦後から1970年代まで〜

1968年、スカニアはLB76型の後継として新たなキャブオーバー型トラック「LB110型」をリリース。一気に現代風な装いとなった。スカニア・ヴァビスが自動車/航空機メーカー・サーブとの合併によって社名が「サーブ・スカニア」となったこの頃から、車名の付与方法に変化が現れた。例えばLB110型の「110」では11ℓエンジン搭載を意味する。

1970年型 スカニアLBS140型

革新の文化を継続してきた「スカニアトラック117年の歴史」VOL.02 〜戦後から1970年代まで〜

LB110型をベースに、強力無比な14ℓV8エンジンを搭載した「LB140型」の登場は1969年。つまり2019年はスカニアトラックのV8搭載モデル50周年のメモリアルイヤーにあたる。

【1970年代】“1シリーズ”が登場。V8エンジンは370hpに増強

1972年に新しいボンネット型トラックが登場しましたが、1958年から小改良を繰り返して継続販売されてきたL75型の末裔「L110型」は、この時点でもスカニアのカタログに載り続けていました。1974年、スカニアの各モデルがマイナーチェンジやエンジンの変更を受けて「1シリーズ」に発展。車名の末尾に「1」が与えられた際も、L110型はしっかりラインナップに残り、「L111型」へとステップアップを果たしました。L111型は1980年まで生産され、スカニア随一のロングセラーモデルとなりました。

1972年型 スカニア L140型

革新の文化を継続してきた「スカニアトラック117年の歴史」VOL.02 〜戦後から1970年代まで〜

キャブオーバー型スタイルが主流となった後も、ボンネット型トラックは一定の需要があることから生産が継続された。1972年にはLB110型と同様の設計思想を持った、近代的なデザインと装備を持つ新型ボンネット型トラックが登場。V8エンジンを搭載した「L140型」もラインナップされ、写真のような木材輸送に威力を発揮、木材運搬業者のあいだで人気を博した。

1974年型 スカニア LB111型 インテリア

革新の文化を継続してきた「スカニアトラック117年の歴史」VOL.02 〜戦後から1970年代まで〜

デザイン性に優れ高い居住性を誇ったLB111型のインテリア。トランスミッションは前進10段のマニュアル式。

1977年型 スカニア LS111型

革新の文化を継続してきた「スカニアトラック117年の歴史」VOL.02 〜戦後から1970年代まで〜

1958年にL75型として登場した姿を、1970年代も色濃く残していたLS111型。1980年まで発売されていた。

1977年型 スカニア LBS141型

革新の文化を継続してきた「スカニアトラック117年の歴史」VOL.02 〜戦後から1970年代まで〜

1974年になってスカニアのラインナップ全体に改良が加えられた「1シリーズ」が誕生、車名1の位に「1」が付与された。外観の差異は少ないが、ユニークなフロントのバッジがトレードマークとなった。LB140型の場合、「141」という数字がグリルに付けられる。V8エンジンは370hpにパワーアップされていた。

1970年代までの歴史を追うと、スカニアが戦後の復興を支え、経済や社会の発展に合わせてラインナップや性能を強化してきたことがわかります。キャブオーバー型トラックが主流となり1969年にV8モデルが追加されたことで、いよいよ現代の姿に近づいてきました。次回「スカニアトラック117年の歴史」VOL.03では、1990年代までをお送りします。どうぞご期待ください。

Text:遠藤 イヅル
Photo:SCANIA、遠藤 イヅル

>> 次回「革新の文化を継続してきた「スカニアトラック117年の歴史」 VOL.03 〜1980年代から1990年代〜」は2019年6月上旬掲載予定です。

「スカニアトラック117年の歴史」VOL.01 〜創業から1945年まで〜 はこちら

SHARE ON SOCIAL MEDIA

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

SCANIA JAPANの最新情報をお届けします。

スウェーデンの歴史と技術力が生み出す、スカニアの高いテクノロジーと革新性

スウェーデンの歴史と技術力が生み出す、スカニアの高いテクノロジーと革新性

『SCANIA(スカニア)』の母国であるスウェーデンといえば、日本では家具のイメージが強いのではないでしょうか。そこで今回は、伝統工芸品や家具・工業製品など、スウェーデンの技術力や工業化を成し遂げた革新性とスカニアの関係にフォーカスします。

FIKA TIME
スカニアの強力なパワーと快適さは、巨大なクレーンの部材を運ぶための最適な選択〜株式会社大矢運送様〜

スカニアの強力なパワーと快適さは、巨大なクレーンの部材を運ぶための最適な選択〜株式会社大矢運送様〜

2023年3月現在で移動式クレーンを147台有し、全国各地の建設・解体現場で活躍している、株式会社大矢運送を取材。10台以上の輸送用トレーラーセット・大型トラックを有している同社に、スカニア導入の経緯を伺った。

CUSTOMER
スカニアジャパン、国内第3の直営拠点「北九州ディーラー」の落成式&祝賀披露パーティーを盛大に開催!

スカニアジャパン、国内第3の直営拠点「北九州ディーラー」の落成式&祝賀披露パーティーを盛大に開催!

スカニアジャパンは、新たに2022年12月12日3店舗目となる直営店「北九州ディーラー」を開設、さらに2023年2月、オープニングイベントの一環として、スカニアのカスタマーや関係者を招き、北九州ディーラーの落成式および祝賀披露パーティーを開催しました。そこで今回は、その華やかな様子をレポートします。

Dealer

一生に一度は見たい!スウェーデンで楽しむオーロラ鑑賞

オーロラ鑑賞に適しているのが、スウェーデン、フィンランド、ノルウェーの北欧三か国。どの国にも、オーロラが頻繁に表れる「オーロラベルト」の中に含まれている地域があり、オーロラ鑑賞に適している場所がいくつもあります。今回は、そんなスウェーデンのオーロラ特集をお届けします。

Culture

自動車輸送のエキスパートも認める、車載トレーラー用スカニアの実力 〜株式会社ヤマサ様〜

広島県広島市に本社を置く株式会社ヤマサは、スカニア(SCANIA)を10台保有。内1台はイタリアのロルフォ製車載トレーラー「BLIZZARD J1」を牽引しており、車両を活用した輸送を展開しています。スカニアを導入した経緯、ドライバーの皆さんにお話を伺いました。

CUSTOMER
【新年のご挨拶】スカニアジャパン新CEO ペール・ランディアン氏に聞く、2022年の振り返りと、来たる2023年への展望

【新年のご挨拶】スカニアジャパン代表取締役社長 ペール・ランディアン氏に聞く、2022年の振り返りと、来たる2023年への展望

今年最初のGRIFF IN MAGAZINEは、毎年恒例となったスカニアジャパン代表取締役社長へのインタビュー。2022年4月に就任したペール・ランディアン氏に、さまざまな出来事があった2022年の振り返りと、期待に溢れる2023年についてお話を伺いました。

Scania Japan