Culture

春の訪れを楽しむスウェーデンの冬の暮らし方

北欧、スカンディナビア半島に位置するスウェーデンの冬は、長くそして暗い。寒いイメージもあるが、メキシコ暖流の影響を受け、高緯度の割に寒さはそれほどでもなく、ストックホルムの2月の日中の平均気温はマイナス1度程度です。四季ははっきりとしており、一般的に冬は11月から3月までとされ、短い夏と一瞬にして終わりを告げる秋が過ぎると、魔の11月が訪れ、日照時間は極端に少なくなります。場所により異なりますが、約半年に渡る長く暗い冬も冬至とクリスマスを境に、1週間で15分ほどずつ日照時間が長くなっていき、1月の下旬になるとだいぶ明るさを実感できるようになります。今回は、そんなスウェーデンの人々の春の訪れを待ちわびながら楽しむ冬の暮らしをご紹介します。

ストックホルムの街でスケートを楽しむ人の様子(Photo_Helena Wahlman/imagebank.sweden.se)

ウィンタースポーツを楽しむ、スポーツ休暇

スウェーデンの冬といえば、ウィンタースポーツ。凍った湖や公園の一部がスケートリンクに早変わり、大人も子どももアイススケートを楽しみます。今年は暖冬で全国的に雪が少ないのですが、雪が降れば「プルカ」と呼ばれるそりで遊んだり、クロスカントリースキーをしたりする人も多くいます。アイスホッケーも人気があるスポーツで、こちらは観戦を楽しむ人も多いです。

スウェーデンの学校には、「スポーツ休暇」という休暇があります。もともとは、暖房費が嵩むことと、風邪などの病気が流行る時期でもあるということで、1週間ほど学校を休みにし始めたのがきっかけでした。その後、野外での活動や冬のスポーツを楽しむ休みへと発展し、現在は、スウェーデン全国の地域で順番に2月と3月に1週間の休暇を取るようになっています。ストックホルム地域は、2月下旬の第9週と決まっており、地域ごとに少しずつずれているので、スキー場などが一度に混むことがなく、多くの人がウィンタースポーツを楽しむことができます。最近では、ウィンタースポーツにとどまらず、スポーツ休暇に合わせて、子ども向けの様々なイベントや活動が企画されており、冬の楽しい休暇です。

休暇中、スキー場でスキーを楽しむ家族(Photo_Niclas Vestefjell/imagebank.sweden.se)

ストックホルムの街中のスケート場(Photo_Helena Wahlman/imagebank.sweden.se)

世界最古のクロスカントリースキー大会、ヴァーサロッペット

スウェーデンの冬に欠かせないスポーツイベントが、ヴァーサロッペット(Vasaloppet)です。ヴァ―サロッペットは、スウェーデン中部のダーラナ地方で、毎年3月の第一日曜日に行われるクロスカントリースキー大会で、スウェーデン国内のみならず、全世界から多くの人々が参加します。スタート地点のサーレン(Sälen)からゴールのムーラ(Mora)までは、約90キロメートルあり、世界一過酷なクロスカントリースキー大会ともいわれています。実はこの大会、スウェーデンの独立の歴史に深く関わっており、その歴史はなんと1520年まで遡ります。スウェーデン最初の国王となった「グスタフ・ヴァ―サ(Gustav Vasa)」がその昔にスキーで歩いたルートをそのまま競技区間として、1922年に始まったヴァ―サロッペットをテレビで見ると、いよいよ春の訪れが近いと実感するスウェーデンの人々なのです。

大勢の人が参加するヴァーサロッペットの様子(Photo_Ulf Palm/Vasaloppet)

ヴァーサロッペットのゴールの様子(Photo_Ulf Palm/Vasaloppet)

恋しき太陽と冬の散歩

北極圏では、太陽が昇らない極夜の時期もあるスウェーデンの冬。首都ストックホルムの2月の日の出は8時ごろ、日の入りは16時頃となり、最も暗い時期と比べると日照時間は3時間ほど長くなりますが、それでも、人々は暗いうちに出勤し、暗くなってから帰宅する日々が続きます。そのため、昼間太陽が出ると、仕事の合間に多くの人々が日光を求めて日向ぼっこをしたり、散歩をしたりする姿を見かけます。この時期の太陽は「春の太陽(Vårsol、ボールスール)」と呼ばれ、長らく日に当たることができなかった人々にとって特別なものでもあります。冬だからといって、室内で過ごしてばかりいるのではなく、休みの日には、家族や友人と自然の中で散歩をしたり、凍った湖の上を散歩したり、森でフィーカをしたり、ソーセージを焼いて食べたりと、その季節だからこそできるアウトドアライフを楽しんでいます。

家族で森の中での散歩を楽しむ様子(Photo_Asaf Kliger/imagebank.sweden.se)

焚火したり、外で食事をとったりとアウトドアを楽しむ人の姿も(Photo_Pernilla Ahlsén/imagebank.sweden.se)

外は寒くても、一歩中に入れば、快適な室内環境

外は寒いスウェーデンの冬ですが、一歩建物の中に入れば、セントラルヒーティング(全館集中暖房)になっており、家中が暖かくなっています。室内は、20度前後に保たれており、冬でも家の中では半そでで暮らす人もいるほど、快適に生活することができます。長く暗い冬を楽しみながら生活するために、人々は室内インテリアにこだわり、季節に合わせて、流行を取り入れながら住環境を快適に保つことをとても大切にしています。IKEAやH&Mなど、デザインやインテリアで有名な企業が多いのも納得。機能性の追求はもとより、使ったときの快適さと普段の生活に溶け込む見た目のデザインの良さは、スウェーデンの人々にとって欠かせないものなのです。

真冬でも室内は20度前後に保たれている快適な家の中(Photo_Tina Stafrén/imagebank.sweden.se)

こだわりの室内インテリアとともにリラックスする家族(Photo_Ulf Huett Nilsson/imagebank.sweden.se)

キャンドルやライトを取りいれて

スウェーデンには、夜カーテンを閉めるという習慣があまりなく、カーテンは季節に合わせて変えるのが一般的で、カーテン自体がないこともあります。暗く長い冬は、窓からのわずかな明かりがとても重要であり、窓辺のインテリアにも、スウェーデンならではのこだわりがあります。暗い冬だからこそ、外の自然との調和を考えながら、複数の間接照明を効果的に利用し、暖かく心地よい空間を生み出すことに心がけています。窓辺にはランプやキャンドルを観葉植物や小物とともに配置したり、ソファーの横のランプシェードの素材や色にこだわってみたりと、北欧の冬の生活ならではのインテリアのアイデアが、暗く長い冬の生活を楽しませてくれる心地よい空間づくりにつながっているのです。シンプルでナチュラルな北欧家具だからこそ、クッションやブランケットのファブリックの質感や鮮やかな色使い、植物や動物の大胆なモチーフなど豊富なデザインもアクセントになり、人々の目を潤わせてくれます。

スウェーデンでは一般的な窓辺に置かれたキャンドル(Photo_Elisabeth Edén/imagebank.sweden.se)

シンプルでナチュラルな北欧家具でまとめられた家の中(Photo_Patrik Svedberg/imagebank.sweden.se)

季節のお菓子でフィーカを

スウェーデンにも季節折々に食べられるお菓子があります。そんなお菓子とともに気心の知れた人々と一緒に楽しむフィーカ(Fika)と呼ばれるお茶の時間は格別です。春の訪れを感じさせてくれる冬のお菓子の代表が、クリスマスが終わると出回る「セムラ(Semla)」です。シナモンロールと同じパン生地を丸く焼き、くり抜いた中にアーモンドのペーストを入れ、その上にたっぷりの生クリームがのっています。このお菓子とともに、この時期食べられるのがワッフル。スウェーデンでは、なんと、3月25日はワッフルの日です。スウェーデンのワッフルは、ベルギーワッフルとは異なり、薄くカリカリに焼き、焼き立ての熱々ワッフルに好みのジャムとたっぷりの生クリームでいただきます。セムラもワッフルも食べられるようになった起源はキリスト教に由来しますが、今では、すっかり人々の生活になじんだお菓子となっています。

フィーカタイムの定番・セムラ(Photo_Magnus Carlsson/imagebank.sweden.se)

ベルギーとは一味違うスウェーデンのワッフル(Photo_Moa Karlberg/imagebank.sweden.se)

春の訪れと夏への準備

3月25日のワッフルの日が過ぎるころ、3月の最後の土曜日から日曜日への夜に、時計の針を1時間早め、サマータイムが始まります。スウェーデンでは「時計の針を前に進める」ということにちなんで、片付けてあった夏用のガーデンファニチャーを庭に出し、夏への準備を始めます。日照時間が長くなると、暗い冬の間は気にならなかった窓の汚れが気になり窓掃除をしたり、庭の掃除をしたりするのもこのころで、長い冬の間、凍った道で滑らないようにとまかれていた小石が道から取り除かれると、いよいよ春の掃除もクライマックスです。ちなみに、サマータイムは昨年欧州議会によって廃止が決定され、今後は、また違った形で春の訪れを実感することになるでしょう。

子どもの幼稚園や学童保育、自分の職場に夏の休暇期間の予定を提出するのもこのころで、いよいよ長い冬に終わりをつげ、夏の休暇に向けての準備が、短い春に行われます。
日照時間が長くなるにつれ、人々は春らしい日差しの下でフィーカを楽しみ、庭や森にスノードロップやクロッカス、ヴィートシッパ(Vissippa)などの春の花が咲き始めると、春の訪れを心から喜び、いよいよ近づく夏に心を躍らせるのです。

森に咲き乱れるヴィートシッパ(Photo_Anders Ekholm/Folio/imagebank.sweden.se)

春の訪れを知らせるクロッカス(Photo_Miriam Glans/Folio/imagebank.sweden.se)

Text:サリネン れい子
Main Photo:Christopher Hunt/imagebank.sweden.se

SHARE ON SOCIAL MEDIA

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

SCANIA JAPANの最新情報をお届けします。

操縦性に優れ視界が広いスカニアは、女性トラックドライバーにも運転しやすい! 〜株式会社ハーベスト・ワールド・エクスプレス様〜

操縦性に優れ視界が広いスカニアは、女性トラックドライバーにも運転しやすい! 〜株式会社ハーベスト・ワールド・エクスプレス様〜

GRIFF IN MAGAZINE初の女性トラックドライバー登場!東京都大田区に本社を置く株式会社ハーベスト・ワールド・エクスプレスに勤める近藤 愛さんに、スカニアの良さ、乗りやすさなどを女性目線でお聞きしました。

CUSTOMER
ウェブ上でオリジナルスカニアを仕立てられる「スカニアデジタルショールーム」で、お好みの一台を作ろう【後編】

ウェブ上でオリジナルスカニアを仕立てられる「スカニアデジタルショールーム」で、お好みの一台を作ろう【後編】

スカニアジャパンの公式ホームページで公開中の「スカニアデジタルショールーム」。アプリケーション、キャブ、エンジン、内装、外観などの組み合わせにより、カスタマーの好みや用途に応じた「お好みのスカニア」をウェブ上で仕立てることが可能です。後編では、完成までの操作方法、完成後にできることなどをご紹介します。

Scania Japan

ウェブ上でオリジナルスカニアを仕立てられる「スカニアデジタルショールーム」で、お好みの一台を作ろう【前編】

スカニアジャパンの公式ホームページで公開中の「スカニアデジタルショールーム」。アプリケーション、キャブ、エンジン、内装、外観などの組み合わせにより、カスタマーの好みや用途に応じた「お好みのスカニア」をウェブ上で仕立てることが可能です。今回は、どんなことができるのかについて、画面を用いてご紹介。2回に分けてお送りいたします。

Scania Japan

【スカニアジャパン、納車2,000台目を達成】降雪量の多い厳冬期も快適に、求人問題解決にも寄与するスカニア〜有限会社丸富通商様〜

本社を北見市留辺蘂(るべしべ)町に置き、北見・札幌(小樽)・登別・苫小牧・旭川の道内6箇所に支店を構える有限会社丸富通商にスカニアジャパン記念すべき2,000台目が納車された。納車式の模様ととも、スカニア導入の経緯などを伺った。

CUSTOMER
スウェーデンの歴史と技術力が生み出す、スカニアの高いテクノロジーと革新性

スウェーデンの歴史と技術力が生み出す、スカニアの高いテクノロジーと革新性

『SCANIA(スカニア)』の母国であるスウェーデンといえば、日本では家具のイメージが強いのではないでしょうか。そこで今回は、伝統工芸品や家具・工業製品など、スウェーデンの技術力や工業化を成し遂げた革新性とスカニアの関係にフォーカスします。

FIKA TIME
スカニアの強力なパワーと快適さは、巨大なクレーンの部材を運ぶための最適な選択〜株式会社大矢運送様〜

スカニアの強力なパワーと快適さは、巨大なクレーンの部材を運ぶための最適な選択〜株式会社大矢運送様〜

2023年3月現在で移動式クレーンを147台有し、全国各地の建設・解体現場で活躍している、株式会社大矢運送を取材。10台以上の輸送用トレーラーセット・大型トラックを有している同社に、スカニア導入の経緯を伺った。

CUSTOMER