2009年のスカニアジャパン発足から、ついに納車2,000台を達成
スウェーデンに本社を構え、世界各国でトラック・バス・産業用エンジンの販売を展開する『SCANIA(スカニア)』。その日本法人であるスカニアジャパンが設立されたのは2009年のこと。以来、重量物輸送に適したトラクターを中心に販売台数を伸ばしてきた。
そして2023年6月、スカニアジャパンは2,000台目の納車を達成した。日本の積載量4t以上の中大型トラック販売台数が年間約5.5万台であることを考えると、多い数字に見えないかもしれない。しかし、これには日本のトラック市場という特殊な事情を鑑みる必要がある。
よりスカニアに親しんでいただけるよう、スカニアジャパン創立10周年を記念して、2019年に開催された「Scania Caravan 2019」。日本全国のスカニアディーラー11カ所をスカニアのデモ車が巡り、展示会や試乗会を行なった。(Photo_濱上 英翔)
全国11ヶ所を巡るスカニア試乗会イベント「Scania Caravan 2019」、皮切りとなった第1回佐賀での模様をレポート
世界有数の自動車大国・日本は商用車生産も盛んである。しかし、欧州と異なる日本の法規に改善を要し、輸送費や為替の影響により車両単価が高くなってしまう輸入トラックは、日本市場へ入り込む余地がほとんどない状態だった。さらに、かつての輸入トラックといえば、製品の耐久性や販売体制、購入後のアフターサービス・メンテナンス体制などの面で、ユーザーからの満足度が高いとは言い難い状況が続いていたのも確かである。そのため、スカニアジャパンが達成した2,000台という数字は、輸入トラックとしては驚くべき数字と言えるものだ。
この数字を達成できたのは、まさにスカニアジャパンが設立されたことによる。スカニアジャパンでは、日本の使用環境・道路状況・ユーザーからのリクエストなどを本国にフィードバック。日本向けに開発されたトラックの輸入を行ってきた。サービス面においても、日本各地にスカニアディーラーを設けてサービス網を拡充するなど、精力的な活動を続けている。
有限会社丸富通商で開催された、2,000台達成の記念すべき納車式
納車2,000台目のスカニアは、有限会社丸富通商に納められた。そこで2023年6月、同社札幌支店にて納車式を開催。まずは有限会社丸富通商 代表取締役 髙野 基緒氏(左)に、スカニアディーラーの株式会社滝川自工 代表取締役社長 滝川 琢朗氏(右)からレプリカキーの贈呈が行われた。
この記念すべき2,000台目が納車されたのは、北海道の運送会社、有限会社丸富通商である。そこで2023年6月、2,000台を記念した納車式が同社の札幌支店で開催された。
6月の北海道の爽やかな空の下、和気藹々とした雰囲気で行われた納車式では、丸富通商にスカニアを納入する北海道のスカニアディーラー、株式会社滝川自工も参加。巨大なレプリカキー、1/50スケールで精巧に作られたスカニアの2,000台納車記念ミニチュアモデル、花束の贈呈が行われた。
なおGRIFF IN MAGAZINEでは、過去2回滝川自工にて取材を行っているので、ぜひご覧いただきたい。
北海道初のスカニアサービスディーラー・滝川自工に、スカニアジャパン創立10周年記念イベント「Scania Caravan 2019」が到着!
着々と活躍の場を増やしている、北の大地のスカニア〜株式会社武藤興業運輸様・K.DASH TRANS株式会社様〜
2,000台を記念して製作された1/50スケールのミニチュア・スカニアと、花束も手渡された。
北海道産の「大地の恵み」をメインに運ぶ有限会社丸富通商
本社を北見市留辺蘂町に置き、道内に6拠点を構える有限会社丸富通商。納車式が開催された札幌支店は小樽市に所在する。2011年に札幌市東区に開設後、2013年に小樽市へ。そして2021年に現在の位置に移転した。
本社を北見市留辺蘂(るべしべ)町に置き、北見・札幌(小樽)・登別・苫小牧・旭川の道内6箇所に支店を構える有限会社丸富通商は、北海道産農産物 (馬鈴薯・玉ねぎ・人参・さつまいも)や生乳の道内・本州方面への輸送、各フェリー埠頭に上陸したコンテナのドレージ輸送、JRコンテナによる全国発送、一般雑貨・鉄骨・飲料等の道内輸送などを行っている。2023年6月現在、トラクターヘッド45台、各種用途に向いたトレーラーが約150台、大型・中型ウイング車など豊富な車両バリエーションも有しており、多岐にわたる輸送を可能としているのも特徴である。
同社のルーツは、1985年に現会長の髙野 藤一氏が個人開業した運送業まで遡る。大型冷凍車1台で北見市産の農産物を関東・関西方面へ輸送していた。その後、2000年に法人化を行って登別市で丸富通商を設立。それ以降は、道内便事業、JRコンテナの取り扱い、車検整備業など事業を次々と拡大。2010年代に入ると道内各地への支店開設を行い、効率の良い配車ができる革新的な輸送体制づくりを推進中だ。
納車式に揃えられていたスカニアは3台。手前から、新たに導入されたR500トラクター、R450トラクター、そしてすでに丸富通商カラーをまとって活躍中のR500トラクターだ。手前の2台は、今後丸富通商カラーへと変更される。
2018年12月から採用されている、丸富通商の新しいグラフィックをまとうスカニアR500トラクター。白いボディに鮮やかな青を組み合わせた帯、斬新なデザインの社名ロゴが洗練された印象を与える。「M」をかたどったロゴマークは、「地域の発展」「安心・信頼」「拠点の連携」を表す3本の縦軸と、「挑戦・革新」を表現するシャープな斜線で構成される。髙野氏は「スカニアはデコレーションをせずとも、カラーリングだけで素晴らしい外観を実現する」と語る。
撮影時には、25t積み3軸フラットトレーラーも連結された。18tの鉄骨が積載されていたが、最高出力500馬力(368kW)/1,900r/min、最大トルク2,550Nm(1,000-1,300r/min)を発生するDC13型エンジンを搭載するR500トラクターは、この重さをものともしなかった。
スカニアは求人問題解決の糸口になる
丸富通商では、「時代に応える。北海道を元気な未来へ運ぶ」ことを経営理念に、そして「荷主様が困ったときにこそ、その期待に応えられる輸送のパートナーであること」を社のDNAに据えている。また、「人生を豊かに、家族を幸せに」という想いも大切にしており、顧客や従業員全員が、豊かで幸せになれる関係を保つ会社を目指しているという。
その丸富通商では、どのようにしてスカニアの採用が決まったのだろうか。有限会社丸富通商 代表取締役 髙野 基緒氏は、その経緯とスカニアへの感想を以下のように語られた。
「実は当社では、別のルートで輸入されていた頃のスカニアを、2005年に中古で購入して、数年間使用していたことがあります。スカニアジャパンからスカニアを最初に購入したのは、2019年です。経緯としては、滝川自工さんと出会ったことがきっかけですね。同業の知人から滝川自工さんを紹介されました。以前から、いつか再びスカニアを走らせたいという気持ちはあったのですが、北海道には購入する窓口がありませんでした。現在では、12台までスカニアを増やすことができました」
明確なビジョンを見据える経営者としての逞しさと、柔和な雰囲気を併せ持つ有限会社丸富通商 代表取締役 髙野 基緒氏。
運送業界といえば、現在クローズアップされているドライバー不足、燃料費高騰の問題があげられる。これらに関しても髙野氏は、「スカニアは解決の糸口を持っている」と語る。
「まず求人についてなのですが、スカニアは外観が優れているトラックで、HPやSNSにもスカニアの姿をたくさん載せていますので、スカニアに乗りたいというドライバーがたくさん応募してきます。導入した4年前より、本来なら求人に関して厳しい状況になっているはずなのですが、それを感じていません。入社後は、事故率が低く貢献度が高いドライバーに、優先的にスカニアに乗ってもらっています。モチベーションが高ければ、年齢はあまり関係ありません。
燃費の良さもありがたいですね。以前乗っていた中古のスカニアは、とても燃費が良かったのです。いま運行しているスカニアも、燃費は優れていますね。国産車と比較して15%ほど燃費数字が良いのではないでしょうか。
また、当社には、北見〜旭川間の石北峠を1日2往復するドライバーがいます。石北峠の勾配は厳しくないのですが、長距離にわたって坂道が続きますので、パワーがないトラックだとじわじわと速度が落ちてしまいます。しかしスカニアなら登り坂で減速せずにグイグイ登っていきます。下り坂でもリターダーが効果的に作用しますので、それもドライバーの疲労軽減につながっていると思います」
さらに興味深かったのが、続けて髙野氏が話された「スカニアが北海道に適していると感じるポイント」である。冬季にトレーラーのみをしばらく駐車しておくと、雪で埋もれてしまうことがあるそうなのだが、使用する時には、これを掘り出さないとならない。しかし雪が邪魔をしてなかなか動かず、場合によっては、雪を1時間以上も掻き出す必要があるという。そんな時はスカニアのトラクターを連結すれば、トレーラーを揺するだけで引き出せる。他社のトラクターではそれができないこともあるという。
これは、「スカニアは路面へのトラクション(駆動力)のかかり方が良いのではないか」と髙野氏は分析する。事実、凍った路面でもスカニアならスムーズに発進が可能だという。
丸富通商のロゴと、同社にスカニアを納める北海道のスカニアディーラー・滝川自工のロゴがダブルで車体を彩る。両社の強いパートナーシップを象徴するかのようだ。同社では2023年6月現在で12台のスカニアを保有。いずれも滝川自工が納車を行っている。
取材に同席してくださった株式会社滝川自工 代表取締役社長 滝川 琢朗氏(右)。同社は、2022年におけるスカニアディーラーで販売台数トップを記録している。
パワーがあり快適!雪道でも運転しやすいスカニア
取材での走行写真撮影にご協力をいただいた丸富通商のスカニアドライバー、中坂 将太氏。寡黙な中坂氏は、スカニアのことをお聞きすると、満面の笑みでその良さを語った。「ベッドのマットに厚みがあって最高です!」
続いて同社で2021年から、札幌支店でスカニアのドライバーを務める中坂 翔太氏に、実際にスカニアに乗って感じたところをお聞きした。過酷な冬の環境が避けられない北海道で、2年半・25万キロを乗車された経験から来る感想は、ぜひとも知りたいところだ。
「函館〜札幌間の定期便のほか、道内各地への輸送を担当しています。北海道は広い(筆者駐:函館〜札幌の距離は、北海道縦貫自動車道・道央自動車道経由で310kmもある。これは新東名高速道路ルートで東京IC〜名古屋IC間に匹敵する)ので、一度支店を出ると長距離を走る必要があります。
そのため、発進時だけでなく走行中も加速できるほどパワーがあること、車内が広いこと、乗り心地が良いのは大事ですね。立って着替えができるのも嬉しいです。スカニアに乗ってしまうと、他のトラックに戻るのは難しいくらいです。出先で声をかけられることも多く、ドライバーとして誇りが持てますね。冬はヒーターの効きも良いですし、ホイールベースが長いこともあって、雪道でも後輪がスリップしにくいように感じます。雪道でも乗りやすいです」
丸富通商札幌支店の前に広がる4車線のストレート道路を用い、走行シーンの撮影も行われた。スカニアのふるさとスウェーデンと北海道は、どこか近い雰囲気が漂っているため、スカニアも北海道にとてもよく似合う。
2,001台以降のスカニアに期待
運送業界を覆う、ドライバー不足などの運送に関わる諸問題は、容易に解決できないのは確かだ。しかし、スカニアの導入は、その問題解決の糸口にもなる可能性を秘めている。今回取材した丸富通商に限らず、GRIFF IN MAGAZINEで取材を行ったスカニアカスタマーの多くが「求人に関して改善した」と話していることが、その証拠と言える。今回の取材でも、それを改めて感じることができた。スカニアが企業にもたらすものは、数字としての利益のみではない。スカニアが納車2,000台を達成したのも、日本市場でそれが理解されたという証明ではないだろうか。
一年を通じて北海道の「大地の恵み」をはじめとした様々な製品の輸送を担う丸富通商と、スカニアを深く愛しトップディーラーとなった滝川自工の発展、そして今後に現れるだろう「2,001台以降の新たなスカニア」に、これからも目が離せない。
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Text:遠藤 イヅル
Photos:大石 隼土