二階建てバスとスカニアのはしご車が夢の共演!【前編】〜名古屋市消防局中川消防署様のスカニア製はしご車編〜
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二階建てバスとスカニアのはしご車が夢の共演!【前編】〜名古屋市消防局中川消防署様のスカニア製はしご車編〜

JR東海バスと名古屋市消防局中川消防署で活躍するスカニア

『SCANIA(スカニア)』の日本法人・スカニアジャパンの設立後、スカニアではトラクターやリジッドトラック、バスの台数を着実に増やしており、日増しに街中で活躍するシーンを見かけることが多くなった。中でも2016年に、はとバスが初採用したスカニアの二階建てバス「アストロメガTDX24」は、日本の新しい二階建てバスのスタンダードともいえるほどの存在に成長し、導入企業も増えている。

スカニア2階建てバス

ジェイアール東海バス株式会社(JR東海バス)の二階建てバス「J-InterCity DD」。スカニア製シャーシ・エンジンと、「ベルギーのバンホール(VANHOOL)」製の車体を組み合わせた「アストロメガTDX24」に、JR東海バス独自の室内艤装を備える。2020年から、東京〜名古屋間を結ぶ高速バス「新東名スーパーライナー」の運用に投入されている。

名古屋市中川区に本社を置き、東海・中京~東京や京阪神エリアを結ぶ高速バスおよび貸切バスを運行する、ジェイアール東海バス株式会社(JR東海バス)も、2020年6月より、名古屋〜東京間を新東名高速道路経由で走り抜ける「新東名スーパーライナー」に、スカニアの二階建てバス「J-InterCity DD」を導入した。

JR東海バスでは、本社および同敷地内にある名古屋支店の合同で定期的に消火訓練を行なっているが、2022年6月の訓練では、名古屋市消防局中川消防署と連携した訓練を実施し、その際、同署に所属するスカニア製消防車が来場するという情報を得た。ということは、スカニアの二階建てバスと消防車を同時に見ることができ、さらに2台が並ぶかもしれない! そんな期待を胸いっぱいに、GRIFF IN MAGAZINE取材チームは、早速愛知県名古屋市に向かうこととした。

名古屋市消防局中川消防署、スカニア製のはしご車

こちらが、2019年に名古屋市消防局中川消防署に導入された、スカニア製の30m級先端屈折はしご車。スカニア製のシャーシとキャブに、モリタテクノスが供給するドイツの消防車メーカー「マギルス(Magirus GmbH)」が艤装する。

JR東海バス本社・名古屋支店で行われた消防訓練に、スカニアの消防車が登場

JR東海バスの社内消防訓練終了に合わせ、中川消防署から来た4台の消防車が登場。フル装備の消防士による消火活動訓練が開始された。消防指揮車から搬出した移動式指揮盤を用い、報告・連絡を大きな掛け声で行う様子や、ポンプ車による本格的な放水シーンは、訓練とは思えぬ消火現場さながらの緊迫感がひしひしと感じられ、消防士のテキパキした動きや、一糸乱れぬ規律の高さに大いに感銘を受けた。

JR東海バスの社内訓練終了に合わせ、中川消防署から来た4台の消防車が登場。フル装備の消防士による消火活動訓練が開始された。消防指揮車から搬出した移動式指揮盤を用い、報告・連絡を大きな掛け声で行う様子や、ポンプ車による本格的な放水シーンは、訓練とは思えぬ消火現場さながらの緊迫感がひしひしと感じられ、消防士のテキパキした動きや、一糸乱れぬ規律の高さに大いに感銘を受けた。

消火訓練ではあるが、指揮盤を用いた指揮や、消防士間の確認・声がけが行われ、消火作業時の緊迫したシーンを間見ることができた。

続いていよいよ、スカニア製のはしご車による訓練が始まった。本社屋の屋上に逃げ遅れた要救助者を、はしごを伸ばして救助するというシチュエーションだ。転倒を防止するアウトリガを展開すると、はしごの基部が建物に向け回転。はしご自体もスムーズに伸びていき、見る見るうちに先端のバスケットが建物の屋上に到達した。伸ばす時のエンジン音も小さく、「はしごって、こんなに速く伸びるのかな?」と思ったのだが、この感想が間違いではなかったのは、本記事で後述したい。

そして訓練後には、スカニア製二階建てバスと、スカニア製はしご車が並ぶという夢のツーショットが実現! この2台は、活躍する場面が大きく異なるため、このように並ぶ機会は限りなく少ないはずだ。ありそうでなかなかない、貴重な瞬間といえよう。

スカニア製はしご車

消防士による、スカニア製はしご車を使った消火活動訓練がスタート。

転倒防止のアウトリガを張り出し、はしごを伸ばしていく。なおマギルス製の消防車では、無段階の張り出しが可能な「バリオジャッキ」をアウトリガに採用。通常のアウトリガは支柱が大きく、高さもあるが、バリオジャッキでは展開時も隊員が跨ぐごとができるため、消防活動時、支障になりにくい。

高さ約30mまで、5段のはしごを伸ばすデモンストレーションも。驚いたのは、その伸びるスピードの速さ!

カバーショットの別バージョンがこちら。放水訓練で撒かれた水が、2台のスカニアを美しく反射する。

スウェーデンのスカニアと、ドイツのマギルスが組む「純欧州製消防車」

2019年4月に、中川消防署に配備されたスカニア製はしご車は、キャブ・シャーシ・エンジンをスカニア。そして消防車として機能する後部の艤装をドイツの消防用施設・消防車メーカー「マギルス(Magirus GmbH)」が担当する。マギルスは1864年創業という歴史ある企業で、世界130カ国以上に6000台以上のはしご車を収めており、消防用設備・その他の消防車に関しても世界有数の納入規模を誇る名門だ。

マギルスは日本では聞き慣れない名前かもしれないが、実は日本初導入は40年前の1982年と古く、以来100台以上が上陸して日本での消防活動に活躍した。マギルスの地元欧州では、マギルス+スカニアの組み合わせは、言うなれば「標準的な組み合わせのひとつ」であるため、そもそもの相性がよく、日本製シャーシへの艤装に比べ、大きな設計変更が不要となる。海外ですべて艤装した状態で輸入が可能な純欧州製消防車のため、コスト削減ができるというメリットがある。

中川消防署に配備されたスカニア製はしご車

現在、スカニア製のはしご車は、日本では中川消防署に所属するこの1台のみ。大きさは全長約10.7m・全幅約2.5m・全高約3.5m。自重は約17.7t。ベースは先代モデルの「P410」で、最高出力410hp、最大トルク2150Nmを発生する12.4ℓ直6エンジン「DC13型」を搭載する。

スカニアのクルーキャブ、スカニア製はしご車、消防車

スウェーデン本国や欧州では多く見られるスカニアのクルーキャブだが、日本での採用例は極めて珍しい。スカニアでのキャブを示す記号は「CP28L」。キャブから後ろの、マギルス製艤装部分は「M32L-AT」というモデルに属し、「32」がはしごの全長、「AT」は屈折式を示している。

シャーシは「P410 LB6×2*4MLB」。後部は2軸で、前側が駆動軸となる。

5段のはしごは最大で約30mまで伸び、さらにはしごの先端は、最大75度の屈折、かつ最大1.2メートル伸縮する「屈折式」となっている。これにより、電線や樹木を避けて建物に接近できるほか、このように屋上に壁・フェンスなどの障害物があっても、救助を行うことができる。後部2軸のうち後ろの軸は、フロントタイヤと逆位相で曲がる「4WS(4輪操舵)」のため、最小回転半径9.2mを実現する。

スカニア製はしご車、消防車

車体最後端には、日本仕様独自のリアバンパーが設置されている。

屈折式の先端を生かし、壁の向こうにいる要救助者の救出も可能。

要救助者を地上に降ろす場面。はしごはここまで下を向くので、バスケットから人を降ろすのも容易。

はしごの基部は回転式。はしごの操作は脇の座席に座り、操作スティックによって行う。座面前のモニターには、はしごの角度など各種情報を表示。座席背面には、マギルスのロゴが貼られている。

命を守る現場でも、高い評価を得るスカニアの性能

スカニアは長距離走行時における疲労の少なさにも定評があるトラックだが、消防車では車両の特性上、近距離の移動にとどまる。しかし、実際に消防活動に使用している消防士からも、スカニアには高い評価をいただいた。

「視界が良いため運転がしやすいです。エンジンのパワーもありますね。はしご車の多くは、キャブ天井のはしごを受ける部位が凹んだ形状になっているので、頭上に圧迫感があるのですが、スカニアは天井がフラットなので、とても広く感じます」

「キャビンが広く、視界も良好」「ステアリングが正確」など、スカニアは消防士の方々からも高い評価を得た。座席の間に置かれるのは、サイレン・スピーカーなどの操作パネルと無線機。モニターは、出動指令の受信、車両動態情報(出動・現着など)や車両の位置情報をセンターへ送信、火災現場への道案内や消防水利を表示することができる車両動態管理装置(AVM)である。

さらに「はしごが伸びるスピードが今まで見たはしご車よりも断然速い」という感想をお伝えしたところ、

「はい、ジャッキ(アウトリガ)を出すのも、はしごを伸ばすのもとても速いです。通常のはしご車では、これからはしごを伸ばすような段階で、スカニアでははしごを大きく伸ばすことができます。消防活動では、1分1秒を競います。そのような状況の中では、スカニアのはしご車のスピードは、とても重要です。そのほか、バスケットに担架を固定できるなど、消防車としてとても完成度が高いです。スカニアの消防車はデザインも良く目立ちますので、中川消防署のプロモーションにも、とても役に立っています」

2022年6月現在、日本におけるスカニア製はしご車はこの一台のみ。つまり日本初、かつ日本で唯一の消防車のため、中川消防署には見学者が日本全国から訪れるという。なお見学の際は、敷地内の見学スペース内であれば消防士の訓練中も自由に見学が可能。もっと近くで見たいという時は職員にお声がけを、とのことだ。(団体の場合は予約で事前連絡が必要)。

中川消防署の竹森 健太氏、伊藤 昌幹氏、伊藤 耕司氏、藤井 瑠希也氏。スカニア製消防車の美点を教えてくださった。

スカニアはしご車の、今後の活躍を応援

一刻を争う過酷な「命を守る現場」でも、スカニアの総合的な性能が光っていた。世界中のさまざまな現場でスカニアが重宝され、活躍する理由の一端を知ることができたように思う。願わくば、火災・災害も起こらず、出動がないことが望ましいが、スカニア製はしご車の今後の活躍を応援したい。

次回は、「二階建てバスとスカニアのはしご車が夢の共演!」の【後編】として、JR東海バスが導入したスカニア製二階建てバス「J-InterCity DD」の詳細をお送りする予定だ。こちらも、どうぞお楽しみに。

訓練を終え、JR東海バス本社を後にするスカニア製消防車。3軸目が前輪と逆方向にステアしていることがわかる。

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スカニアのエンブレムと、消防章が並ぶ。なお、消防章のデザインは「雪の結晶」を元としている。これは、雪の結晶には「水・団結・純潔」などの意味があるため。

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クルーキャブの前後ドアは、ホイールアーチの切り欠き以外は基本的に同じ形状。後部ドアには、「Crew Cab」のプレートが貼られている。

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後部座席を含めた乗車定員は6名。キャビン内に積まれた機材類が、「緊急時に働くクルマ」のリアルさを伝えてくるかのようだ。

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アウトリガ(バリオジャッキ)は、国産の消防車では見られない形状で、このはしご車が海外生まれであることを物語る。

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ジャッキの操作は、車体後部左側にあるパネルで行う。

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後部の中央下部には、はしご車に給水を行う給水口も備える。

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車体の各部には、消防活動で使用する機材・道具類が効率よく格納される。上2枚は運転席側、下の2枚は助手席側だ。バリオジャッキがコンパクトに収まっている事がよく分かる。

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バスケット部には、消火用の電動放水銃やカメラ、LED照明も装備する。

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中川消防署の指導のもと、「エンジン火災」を想定した放水訓練を行うJRバス東海のスタッフ。

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訓練終了後の一コマ。なかなか触れる機会がない消防車(しかもスカニア!)だけに、JRバス東海のスタッフも興味深そうに見学していた。

Text:遠藤 イヅル
Photos:安井 宏充(Weekend.)

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