重量物輸送で「スカニアだからこそできること」〜世新建設運輸株式会社〜
スウェーデン生まれの『SCANIA(スカニア)』。様々なトラック、バス、産業用エンジンを製造しており、それぞれに大きなアドバンテージやメリットを有している。中でも重量物輸送に用いられるトラクターは世界各国で高評価を得ており、日本でもスカニアジャパンの主力製品で、その高出力・高品質・快適性から、数多くの採用企業から大きな支持を得ているのは、GRIFF IN MAGAZINEで既報の通りである。特に注目すべきは、「スカニアでなければならない」「スカニアだからこそできること」という導入理由が存在することだ。
今回取材に訪れた、神奈川県横浜市泉区に本社を構える世新(せいしん)建設運輸株式会社も、スカニア製トラクター導入企業のひとつである。同社は、舗装工事を行う企業に付随した、工事に用いる建設機械・大型機械などの重量物輸送を行う会社として1965年に設立された「東京キャリー株式会社」をはじまりとするため、その経緯から、現在でも重量物の輸送を行う「運輸部」と、当初の業態だった舗装工事を行う「工事部」が存在する。なお、運送業と工事業、両方の免許を持っている企業は少なく、神奈川県でも数社しか存在しないという。
横浜市泉区に本社を、千葉県袖ヶ浦市・茨城県那珂郡東海村・宮城県富谷市に支店を置く、世新建設運輸株式会社。重量物・精密機器輸送のエキスパートである。
2020年7月現在、世新建設運輸は千葉県・茨城県・宮城県に支店を擁し、トラクター・トレーラー・ダンプトラック・アスファルトローリーなど合計で183台もの車両を保有する。特にトレーラーの種類は豊富で、低床・エアサス低床・中低床・高床・6輪伸縮・マルチトレーラーなどがあり、フェリーシャーシの専門輸送・重量物・超重量物・精密機器輸送、長尺・鉄道車両・無限軌道付きの車両、航空機といった濶(かつ)大品輸送など、あらゆる物流ニーズに対応することが可能だ。最近のトピックでは、渋谷駅前に保存展示してあった「東急5000系(初代。愛称:青ガエル)」を、「忠犬ハチ公」でゆかりのある秋田県大館市に運ぶ大役も引き受けている。
世新建設運輸では鉄道車両の陸送も得意分野。2020年8月には、渋谷駅前から秋田県大館市まで、「東急5000系」を運んでいる。TVやネットのニュースで、トレーラーに載せて運ばれていく電車の姿を見た人も多いのではないだろうか。
導入済みのスカニアは6台 最新型は新モデル「R650」
世新建設運輸で活躍するトラクターは58台あり、そのうち6台をスカニアが占める。今回取材した新モデル“NEXT GENERATION SCANIA” の「R650」トラクターは、2020年7月にやってきたばかりの新車だ。「R650」のエンジンは、スカニアの象徴であるV8で、車名が示す通り最高出力650馬力を誇る。同社のトラックは、黄色をベースにキャブに紺色と赤いストライプを巻くカラーリングだが、このR650に関してはこれまでの車両と帯のパターンが異なっており、赤い帯は、目立つような入れ方や位置を何度も検討したとのこと。たしかに、紺と赤のストライプによって、スカニアの精悍なデザインを一層引き立てることに成功しているように思う。
世新建設運輸では、2014年からスカニアのトラクターを導入しており、2020年7月現在で6台を保有する。中でも最新の車両が、写真の新モデル の「R650」。黄色+青・赤帯の企業カラーを踏襲しつつ、同社既存車両とは異なる大胆な塗り分けを採用した。赤いラインが目立つように、何度もデザインを検討したという。
「R650」は、スカニアの象徴であるV8「DC16」エンジンを搭載する。排気量16.3ℓから最高出力650馬力(478kW)/1900r/minの強大なパワー、最大トルク3300Nm(950-1350r/min)という豊かなトルクを発生する。
R650のアクスル構成は、リア2軸駆動の「6×4」。トラクターの端部に表示されている「第5輪荷重」とは、トラクターとトレーラーを連結するカプラーに掛けることができる荷重の上限を、隣接軸重はリア2軸に掛かる合計重量の限度を示す。
スカニア導入は、従業員を思う企業の証明
では、どのようにして同社はスカニアを導入することになったのだろうか。その経緯を、世新建設運輸株式会社 代表取締役 菊名 俊宏氏にお伺いした。菊名氏は、1995年に同社代表取締役に就任。以降、千葉・茨城・宮城に相次いで営業所を開設、積載物に合わせて荷台を伸ばせるマルチトレーラーなど各種車両を導入するなどの積極的な施策を実行し、輸送実績と業績を着実に増加させてきた立役者である。
スカニアの導入成果に大きな満足を感じておられる、世新建設運輸株式会社 代表取締役 菊名 俊宏氏。
「この業種は、新規参入が難しいことは確かですが、弊社では、ノーマルな車両だけでなく、同業他社にない車両を持つことで、競争力を得るようにしてきました。それに合わせトラクターもハイパワー化が必要になりました。しかし国産メーカーの多くが、トラクターに対して力を入れなくなっていたのです。厳しくなる排出ガス規制に合わせ、トラックのエンジンも技術開発が必要なのですが、数が出ない車両では、その開発費がペイできないからです。しかし、海外メーカーのトラクターなら、生産台数が多いために技術開発を怠ることがなく、排ガス規制とパワーを両立しています。その中で、私たちはそれらの条件を満たすスカニアに注目しました。
スカニアの使用実績は無かったのですが、様々な方から『スカニアは良いですよ』との話を聞き、2014年に初めてスカニア『R580』トラクターの購入を決めました。(※登録は2016年)弊社の車両は全国、しかも夜間に走っているので、もし出先でトラブルを起こして立ち往生したらどうしよう、という不安は正直あったのですが、立ち往生することもなく、小さな故障への対応も満足できたため、その後も導入を続けることになりました。最近では、フェイモンビルやノーテブームなどの6軸伸縮中低床トレーラーのような超重量物の輸送を可能とするトレーラーも導入していますが、これを牽引できるのも、スカニアだけです。」
菊名氏の、「企業は、働いている人の最大幸福を求めるべし」という言葉に、取材陣は大きな感銘を受けた。
そして菊名氏は、スカニアを採用する理由にまつわることとして「企業は誰のためにあるか」という話を続けられた。そこには、菊名氏率いる世新建設運輸の「従業員への思い」が強く感じられた。
「私は、『企業は、働く人の “最大幸福” を求めるために存在する』と考えています。そのために私たちは、人、従業員を一番大事にします。人は何のために働くのか、と考えた時、まずは自分のため、次に大事な人や家族のために頑張ると思います。それが最大のモチベーションです。会社のために働いても、その先には家族の幸せがあります。人は、何に価値を求めるか。働いている従業員がみな幸せになってくれたら、それは私たちの会社の『証』だと思います。
ドライバーの話になりますが、彼らは常に新しいクルマに乗りたい。特にスカニアなどの輸入車は憧れですので、ステップアップしてスカニアドライバーになれたら嬉しいし、誇りも持てます。そこで弊社では、スカニアのドライバーは会社が決めています。信頼できて実績あるドライバーならスカニアに乗れることがわかれば、他のドライバーもそのレベルに登るためにチベーションを高め、精進してくれる。それは、スカニアだからできることです。」
最新型のノーテブーム社製6軸伸縮中低床トレーラーを見る
今回の取材では、同社最新のスカニア新モデル「R650」だけでなく、こちらも同社の最新鋭となるノーテブーム社製6軸伸縮中低床トレーラーをご用意頂いた。最大積載量はなんと73.5t。公道以外の構内輸送などでは、最大100tの貨物を運搬できるほか、車体を延長すると、トレーラーの全長を約14mから約29mまで伸ばすことができる。前述の菊名氏の話にあった通り、スカニアのパワーなしでは導入が難しい車両でもある。その威容と迫力は、ぜひ写真でご確認いただきたい。
あらゆる運搬ニーズに応えるため、世新建設運輸では様々なトレーラーを用意している。スカニア新モデルが牽引していたトレーラーは、オランダの「ノーテブーム(NOOTEBOOM)」社製6軸伸縮中低床トレーラー「MPL-97-06V」。
トレーラー側の6軸は、トラクターのステアリング操作に同調して、最大角度60度まで舵を切ることが可能。これにより、最小回転半径22.2mを実現している。(※通常時は7,8mとなる)
このトレーラー最大の特長は、2段階に伸縮機能。通常の荷台長は11.36mだが、このように最長26.42mまで伸ばすことができる。
トレーラー部だけでも全長29mを超えるのだが、その「長さ感」は、トラクターを含めた写真だと理解しやすいかもしれない。ご覧のように、最後部は遥か彼方だ。
後部から見たアングル。最大に伸ばすと、広い敷地をいっぱいに使ってしまうほどに長いこと、遠心部分である「背骨」の構造がわかる。細長く比較的軽量な、風力発電用のブレードなどの輸送に適している。
トラブルが少なく、長距離運転でストレスがないスカニア
インタビューには、同社で働く2名のキーパーソンにもご同席いただいた。その2人とは、世新建設運輸株式会社 修理部 課長 西 明彦氏と、6年前からスカニアのステアリングを握り、従来型・新モデル両方のスカニアにお乗りの同社エースドライバー 岩倉 正人氏。スカニアをよく知る両氏から「それぞれの仕事から見たスカニア」のお話もお聞きできた。
スカニアをはじめとした、車両管理を行なっている世新建設運輸株式会社 修理部 課長 西 明彦氏。同社では、緑ナンバーのトラックは「社会への安全性」という責任を持つと考え、「修理部」を擁し、安全運行に努めている。
──西さんは、車両運用のご担当ですね。スカニアについて、どんな印象や感想をお持ちですか。
「私は弊社修理部におり、車両の故障や不具合が起きた際に、それを解消する仕事をしています。スカニアの1号車は、すでに日本でも十分熟成された車両を導入したため、走らせていてもほんとうに故障が少ないです。また、スカニアは海外メーカーでも部品の提供が早く、休ませる時間を少しでも減らすことができます。バックアップがしっかりしているスカニアのンテナンスパッケージに入っているので、『見ていなかったから壊れた』ということもありません。一番関心したのは、国産の新車で行われる点検では『不具合はありません』という程度のチェックなのに対し、スカニアはある程度走った後にエンジンを分解してタペット調整までするのです。昔ながらの『機械への取り組み方』が感じられました。安心感がありますね。新モデルについては、7月に導入したばかりのため未知数ですが、これまでの弊社でのスカニア運用実績を考えると不安は少なく、期待の方が大きく上回っています」
──プロのドライバーの岩倉さんから見て、スカニアはどのようなクルマでしょうか。
スカニア新モデルのステアリングを託された同社のエースドライバー、運輸部 岩倉 正人氏。これまでも、従来モデルのスカニアを運転しており、スカニアの良さを知り尽くしている一人だ。「スカニアは馬力があるので、牽引できる最大積載量が増やせるのも素晴らしいですね」
「スカニアに乗る前は、ずっと国産車で仕事をしてきました。重量物を運ぶときは、上り坂では速度が落ちるのですが、最初に乗ったスカニアは580馬力、今乗っている車両では650馬力もあり、上り坂でも速度が保てます。また、上り坂で前方に赤信号が見えたようなときは、上り坂でのゼロ発進が苦手な車両では『再発進が大変なので、止まりたくないな』と考えるのですが、スカニアでは再発進も容易なので、細かく神経を使いません。ご存知の通り重量物の輸送は、深夜のみ走行するため、先日の渋谷から大館までの『青ガエル』輸送では、3日かけて移動しました。重量物を牽引して長距離走るのはとても大変ですが、パワーが有り、ブレーキも効いて、快適で、乗り心地が良く、視界も優れたスカニアなら、ストレスや不満がほんとうに少なく、疲労感が大きく減ります。この仕事では、大きな車両でも1cm、2cmという微調整の移動が必要になります。そのような時、微妙なアクセルワークが可能なスカニアなら、『踏めば動きすぎる、踏まないと動かない』ということがないのも、優れています。スカニアならではの美点ですね。新モデルでは視界も広くなり、快適性やパワーも一層増しています。」
岩倉氏お気に入りのポイントである、スカニアのインテリアを改めてご覧いただきたい。岩倉氏は、視界の広さと見晴らしの良さ、質感・デザイン、静粛性なども絶賛されていた。写真からも、高級乗用車のような高品質さが伺える。
運転面でも、正確なステアリングフィール、力強いエンジンに高い評価を頂いた。中でもスカニアが誇る12速AMT「オプティクルーズ」は、「どんな重たい貨物を運んでいても、ほぼマニュアル操作をしたことがない」「シフトチェンジのタイミングが抜群にスムーズで、いつギアを変速したのかわからないほど」とのことだ。
目立つ大きな車両、力のあるトラクターに乗りたいと世新建設運輸の面接を受けた岩倉氏は、電車や航空機などの、特殊な技能やトレーラーが必要な貨物を運ぶことに誇りを感じているという。また、目立つスカニアはトラックや同業ドライバー・お客様から熱い視線や注目を浴びることが多く、会社の看板を背負っているプレッシャーがあるものの、素晴らしいクルマで仕事している嬉しさが大きく優っているとのことだ。なお岩倉氏は、あの「青ガエル輸送」も担当したドライバーご本人でもある。
後方をしっかり確認しながらスカニアを後退させる岩倉氏。その凛とした姿からは、重量物輸送を行うドライバーであることの誇りを強く感じさせた。新モデルでは死角を減らすコーナーアイの装備、全電動ミラーの採用で、より安全運転がしやすくなった、という。
数年後を見越して、今後もスカニアを導入予定
最後に菊名氏は、今後のことについてこのように語られた。
「企業は、当たり前のことをしていれば、その場は乗り切れます。それは、短期的な視点で見れば正解です。でも、3年、5年後を考えると、その時には競争力がなくなっていて、スケールが大きな他社に負けてしまう。そこで、私は数年後に生き残っている会社の条件を想像するのです。先のことはわかりませんが、だからこそ投資を行って、『今、何をしなければいけないか』を考えることが大事だと思っています」
数年後の発展のために、世新建設運輸はこれからもスカニアの導入を続けて行くという。そこにも、「スカニアだからこそできること」があった。日本各地で活躍する同社のスカニアが、さらに多く見られるようになるのが楽しみだ。
社員を想い、安全を第一とし、常に企業とは何かを問い続けてきた菊名氏の元には、その志に共感した優れたスタッフが集まる。
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Text:遠藤 イヅル
Photos:安井 宏充