わずかな期間に7台のスカニアを導入した、マルコー・トランスポート株式会社
近年、日本でも活躍する台数が着実に増加している『SCANIA(スカニア)』。なかでもトレーラーを牽引するトラクターは、広く快適なキャブと強靭なトルクを誇るエンジン、シフトショックが少ない12段AMT「オプティクルーズ」などによって、多くのユーザーから高い評価を得ている。
従来型スカニアG450が3台、スカニア新モデルR450が4台。
2017年に3台の従来型スカニアトラクターを導入、さらに2018年4月から日本でリリースされたばかりの新モデル「NEXT GENERATION SCANIA」を一挙に4台増車したマルコー・トランスポート株式会社も、スカニアの高い総合性能に魅せられた企業である。これほどの短い期間で一斉にスカニアを運行し始めた理由には、同社発展の歴史がリンクする。
困ったときに走ってこその運送会社
新潟県新潟市北区、港湾エリアの一角に広大な敷地を構えるマルコー・トランスポートは、1984(昭和59)年に創業した大広(たいこう)運輸株式会社から発足した運送会社で、大広運輸とともに大広グループを形成する。グループ全体での車両数は120台以上を数え、なかでもコンテナ用トレーラーの31台の導入は急速に行われたという。大広運輸から新たにマルコー・トランスポートを立ち上げた流れ、急速に会社が発展した経緯について、大広運輸およびマルコー・トランスポート代表取締役の齋藤 孝男氏に話をお伺いすることにした。
大広グループ マルコー・トランスポート株式会社 代表取締役の齋藤 孝男氏。チャンスを逃さない発想と運送会社の心得を教えてくださった。スペシャルカラーのスカニア新モデルを前に。
── 大広運輸はどのような会社で、どんなものを運んでいるのですか?
「大広運輸は以前から国内大手の宅配便会社の路線便を担当していました。新潟から中京、関西方面が主です。しかし関西から来る荷物は多いけれど、新潟から出る荷物は少なかった。そこで、まだ私が社長ではなかった時代に、新潟の製菓会社にかけあって、まず1台、関西に行く便にお菓子を積んで運ばせてもらいました。
そうしたら、最初は訝しんでいた製菓会社も、数日ほどの利用でそのコストパフォーマンスの良さに驚かれました。元々積載量の大きい低床トラックを使っていたので、通常より10%ほど多く積めたんです。当時新潟では低床トラックを使っている会社が少なかったので、我が社の持つメリットを最大限活かすことができたのです。その流れから、製菓会社の荷物を運ぶためにマルコー・トランスポートを発足しました。
マルコー・トランスポート設立の機会となった、新潟の製菓会社の製品を運ぶためのトレーラー。こちらは受付に置かれた模型。実際のトレーラーも同様にラッピングされている。
── 急速に台数を増やされた理由は何だったのでしょうか?
「2011年に起こった東日本大震災です。被害が大きかった太平洋側の港(小名浜や仙台)の使用が限定的となり、新潟港の重要性が高まりました。そこに集まる貨物を運搬する輸送力を持つべく、当時5台しかなかったコンテナのトレーラーにさらに5台を追加しました。その後、31台まで増え、現在に至っています」
── その後、各地で勃発した災害にもフレキシブルに対応したとお聞きしました。
「弊社ではコンビニエンスストアで取り扱う飲料水も運搬していたので、あらゆる被災地まで届けに行きました。東日本大震災の後は熊本地震、大阪府北部地震、北海道胆振東部地震……。岡山や広島、愛媛での西日本豪雨の水害地域には製菓会社のお菓子を運び続けました」
── この何年かは本当に災害が多かったですね。このような大変な時期に会社が急成長した理由は、どんなところにありますか?
「大変なときだからこそ、運送会社はトラックを走らせねばならないのです。何事も、タイミングと機転なんだと思います。どんなときでも機転を利かすことが大事。柔軟に対応してきたからこそ今がある、と改めて感じますね」
齋藤氏は、常にタイミングを捉え、さまざまな契機を好機に変えて、大広運輸とマルコー・トランスポートを急成長させてきた。スカニアを一挙に導入した思い切りの良さと素早い判断もまた、同社が発展した道筋と同じように、まさしく「機」を逃さない齋藤氏、そして「機を見るに敏」という同グループの社風の表れと言える。
ノントラブルで低燃費のスカニアに驚いた!
7台中唯一、メタリックグレー塗装のスカニアR450。白いスカニアとともに、グリルを紫に塗って大広グループのトラクターであることをアピールする。
── 2017年から1年ちょっとのあいだに、7台ものスカニアを導入されました。その経緯などをお伺いさせてください。
「ちょうどトラクターを新調しようと考えていたとき、これまで購入していた国産メーカーのトラクターが新型化するタイミングということで再考することになりました。とはいえ、そのあいだずっと待っているわけにもいかないので、別のトラックメーカーを当たることにしたんです。そこで検討に入ってきたのがスカニアでした。調べてみると、福井県敦賀市にある湖北モータースがスカニアの正規ディーラーをやっているというので、『福井なら、新潟から関西に向かうルートの途中じゃないか』と早速問い合わせ、こちらが望んでいるグラフィックも含めた見積もりや納車までスムーズに進めていただけ、そうして3台を購入したんです。2017年12月でした。
それから1年使ってみたところ、3台ともまったく故障しないのです。信頼性はありますね。さらに、燃費も良い。例えば新潟〜四国間を往復時すると、国産トラックと比べても200ℓも燃料の使用量が少ないんです。これには驚きました。ドライバーからの評判も良く、再び湖北モータースから新モデルを4台追加購入しました」
新モデルのうち3台は白い車体にグリフィンが大きく描かれて迫力がある。新モデルは注目の的とのことだ。
── 長らく長距離トラックを取り扱ってこられたからこそ体感できたメリットだったんですね。
「スカニアのトラックはトルクが太いので、坂道走行もラクだしまったく疲れません。また新モデルは多くの人から注目されているので、パーキングに停まっていると『写真を撮らせてください』と言われたりするそうですよ。
私もトラックドライバーだったので、ドライバーが気持ち良く仕事ができるトラックが一番ですね。今後も継続してスカニアを入れていきたいです。今、500psのトラクターの導入を検討しています」
快適な室内空間と太いトルクのエンジンは長距離で威力を発揮
続いて、実際にマルコー・トランスポートでスカニアをオペレートするドライバーにもインプレッションをお聞きした。大広グループのイメージカラーである紫色をまとった従来型スカニアに乗る、本林 春彦氏だ。
品位ある紫色に彩られたスカニアに乗る、マルコー・トランスポート株式会社の本林 春彦氏。「スカニアで仕事ができて楽しいです」
もっとも印象的なのは、キャブのデザインと車両そのものの存在感でした。これまで乗ってきたトラックにはない迫力がありますよね。キャブ内の遮音性も高く、天井も高くて広々しているので、これまでにないほど快適に過ごせています。もちろんエクステリアやインテリアの品質もこれまででダントツです。トラックのキャブって、一度出かけるとずっと過ごす空間なので、自分の部屋のように快適であってほしいんです。その点、天井も高く広々としたスカニアトラックには何の不満もありません。
暖房がしっかり効いてくれる機能と空間設計も嬉しいですね。この辺りはさすが北欧スウェーデン生まれだな、と。長らくトラックを手がけているメーカーだけあって、ノウハウは世界屈指なんですかね。同じ北国の新潟の人間として、暖房の性能はしっかり見ちゃいますね。
広々としたキャブの快適さは本林氏の笑顔からもお分かりいただけるとおり。天井も高く広々しているおかげで十分寛げるのだという。
もちろん、走りも言うことなし。特に長距離を走ったときに、トルクの太さを有り難く感じます。独特のエンジン音も好みで、何よりシート性能が高くて快適なので、今まで乗ってきたトラックと比べても全然疲れないです。休憩のときには、他のトラックドライバーからも声をかけられますよ、それも嬉しいですね。
“いいクルマ”で仕事ができるのは本当に幸せです。同じくスカニアに乗るマルコーのメンバーの評判も上々で、もうスカニア以外のトラックには乗れないなって(笑)」
取材に全面的にご協力くださったマルコー・トランスポートのドライバーの皆さん。ありがとうございました。
「機を見るに敏」という社風をこれからも支えるスカニア
齋藤氏から話をお伺いして感じたのは、「機を見るに敏」という言葉だった。好機、つまりチャンスを逃さず、より良い状況を判断して的確に行動することを指す。大広グループを率いる齋藤氏は、その言葉のとおりにトラックを走らせ、多くの地域貢献を果たしてきた。これからも、さまざまな機会を契機、好機に変えていく力を持つマルコー・トランスポート、そして大広運輸を、「ドライバーを想う心」で開発されているスカニアは、しっかりと支えていくことだろう。
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Text:遠藤 イヅル
Photos:堤 晋一