「GRIFF IN MAGAZINE」の記事では、『SCANIA(スカニア)』製品を通じてスカニアジャパンスタッフの情熱や奮闘、協力ディーラーのユーザーへのあたたかさやスカニアを販売していくことへの強い意志、そしてスカニアを導入する企業の熱い想いを伝えてきた。取材ではスカニアジャパン、各ディーラー、導入企業への訪問だけでなく、インドアの講習会、製品発表会、試乗会など様々な場所にお邪魔させていただいているが、今回いよいよ当マガジン初掲載となる「納車式」の密着レポートをすることになった。納車式といえば、あの大きなレプリカキーが思い出されるのだが、「あのキー」の贈呈式ももちろんしっかりと行われた。
それではさっそく納車式の模様を、スカニアを今回一気に5台(!)増車した「大川運輸株式会社」のご紹介と合わせてお送りしよう。
カシマサッカースタジアムの偉容に負けないスカニアの迫力
取材直前までの雨、曇り空が、撮影時だけ嘘のように一瞬だけ晴れ渡った。その青空とスカニアのグリフィンマーク、大川運輸グリーンのコントラストが美しい。
納車式は2017年6月8日(木)、大川運輸の本社所在地である茨城県鹿嶋市で行われた。同社ではすでに3台のスカニアトラクターを運用していたが、前述のとおりこの度5台のスカニアトラクターを追加導入することとなり、それを記念して納車式が開催される運びとなった。そこでまず今回納車されるスカニアのうち、先行して鹿嶋入りした3台を集め、なんとカシマサッカースタジアムの駐車場を貸し切ってスカニアの撮影会が行われた。北欧・スウェーデンデザインのスカニア車両しか視界に入らず、モダンなデザインで海外スタジアムのような雰囲気も備えるカシマサッカースタジアムが作り出す風景は、まるで欧州にいるような錯覚さえ与える。朝から生憎の雨だったのに、撮影時に偶然雲の切れ目から差し込んだ6月のまだ少し弱い太陽が、収容人員4万人オーバーという巨大なスタジアムの前に美しく並べられた3台のスカニアG410トラクター・ハイラインキャブの存在感を強調してくれた。その非日常感は、スカニアに普段から接しているスカニアジャパン、そして大川運輸のスタッフからもこの光景を嘆賞する声があがるほど。もちろん、取材チームにはさらに刺激的に受け止められたことは言うまでもない。
扉カットを少し別のアングルから。スカニアの存在感はスタジアムの巨大さにまったく引けを取らない。このとき並べられたのは先行して鹿嶋に到着していた3台だが、それでも充分な光景だ。
追加で投入された5台は、いずれもGシリーズの「G410」、ハイラインキャブ仕様で、シャーシレイアウトは前1軸・後1軸で後輪を駆動する「4×2」となる。「G410」の410は最高出力410psを意味する。そのパワフルなエンジンは、EGR無しの総排気量12.742ℓ直列6気筒ディーゼルターボ「DC13」。
3台並べて撮影する準備中の1カット。青空から差し込む太陽がスカニアのデザインを彫刻的に浮かび上がらせる。
スカニアロゴ入りレプリカキーの贈呈式へ
撮影を終えた3台は、スタジアムからクルマで数分の近さにある大川運輸本社へと移動した。残りの2台も同時に本社に到着し、ここで5台すべてが出そろった。そして本社前の駐車場に5台のスカニアを入れて何をするのかな?と思ったら、なんとそこに5台を並べるのだという。確かにトラクターなのでそれほど長くない(それでも全長5mほどある)とは言え、5台のセッティングが終わると駐車場はさすがにいっぱい!撮影に合わせカメラマンの指示に合わせて各スカニアを微調整して位置決めをし、同社本社前に並んだ5台のスカニアという記念すべき写真が撮影された。完璧に近い並び揃えの美しさが写真からも伝わってくると思う。
カシマサッカースタジアムでの撮影を終え、至近距離にある大川運輸本社に出発する3台。こうしてコンボイ走行するスカニアトラクターの後部を見る機会はなかなか無いかもしれない。なお、こうして見るとキャブに追加されたエアデフレクタ(整流板)の様子がよくわかる。
移動先の本社では残り2台も集結、今回導入された5台すべてのスカニアトラクターが本社前の駐車場に見事に並べられた。広い駐車場内も、スカニアが5台入ると一気に狭く感じる。
スカニアが5台揃うと、その迫力に圧倒される。だがスカニアのデザインの美点は、決して威圧的ではないことだ。
そして式次は続き、納車式の要の「キー贈呈式」へと進む。まずは並んだスカニアの前でスカニアジャパンCEO ヨハン・ルンデン氏から大川運輸株式会社 取締役社長 大川 光夫氏へと巨大なレプリカキーが、続いて5台の大川運輸役員にも同じゴールドのレプリカキーの贈呈が行われた。これこそまさにキー贈呈式!しかもスカニアのロゴ入り、さらに5本も。キーを受け取ったみなさんも誇らしげだ。
5台の集結を祝うかのように、いよいよキー贈呈式のスタート。まずはスカニアジャパンCEO・ヨハン・ルンデン氏から、大川運輸株式会社 取締役社長 大川 光夫氏にレプリカキーが贈呈された。ふたりの笑顔が晴れやかなシーンを盛り上げる。
続いて大川運輸役員のみなさんにも、合計5本のキーが渡された。同社ではすでに3台のスカニアを運用しているため、今回の増車で合計8台を保有することになった。
最後に大川運輸、スカニアジャパンのスタッフで記念撮影。地元の常陸国一宮・鹿島神宮を篤く敬い、そして鹿島神宮に護られた鹿嶋の地を拠点とする大川運輸で、今回納車されたスカニアが末永く活躍することを祈りたい。
総保有台数1000台超。 創業82年の伝統を誇る大川運輸株式会社
1935(昭和10)年創業という長い歴史を持つ大川運輸株式会社。倉庫業を事業として持たず、創業以来の“輸送一筋の伝統”を今でも守っている。
今回納車式を行った大川運輸株式会社は、鹿島神宮と鹿島アントラーズで知られる茨城県鹿嶋市に本社を持つ物流企業である。創業は1935(昭和10)年と古く、今年2017年で82年を数える。初代社長は、鹿嶋市の前身・鹿島町で養蚕業を発展させた功労者のひとりとされる大川 小四郎氏で、氏の三男であり現社長・光夫氏の父にあたる大川 三郎氏が蚕をトラックで運んだことが運送業参入への契機となった。鹿島といえば「鹿島臨海工業地帯」という言葉を授業で習ったことを覚えているかもしれないが、当時、そして戦後はまだ鹿島周辺はのどかな田園地帯だったため、このエリアの農作物、海産物、材木などを主に運んでいたという。そして1961年(昭和36)年から鹿島臨海工業地帯の開発がスタートし、それに合わせて1969(昭和44)年に法人格を取得、以降大川運輸株式会社として大きく発展していくことになった。現在では総保有台数はトラック・トラクター・トレーラーが合計1000台、ドライバーは600名を越えるという有数の大規模物流企業に成長しており、車両の約7割がトレーラーとなっている。運搬する品目は化学製品、液体窒素・アルゴンなどの高圧ガス、石油製品、鋼材、食品、建材など様々である。臨海地帯との関わりが深い品目も多い。
大川運輸株式会社 取締役社長 大川 光夫氏。同社の沿革、そしてスカニア導入の経緯をとても丁寧に話してくださった。
今回お話をお伺いした大川 光夫氏は現会長の功氏(大川 三郎氏の長男)の跡を継ぎ、2014(平成26)年に3代目社長に就任された。そこで大川社長に、車両数が多い同社でスカニアがどのように導入されたのか、そして5台が追加された経緯をお聞きすることにした。
「スカニアジャパンからスカニアを紹介されました。そこでスカニアに乗ってみましたところ、以前より大幅に、数段良くなっている。ドライバーにも乗ってもらったのですが、とても気に入ってくれたのです。燃費もかなり良いという話も聞きまして、導入を決めました。スカニアジャパンには国産トラックメーカーに勤めていた方も多く、お互いに以前から顔見知りだったこともありますね。それで信頼関係は築かれていました。納車後、去年は自社の敷地でスカニアの内覧会も行いました。他のドライバーにも積荷状態でスカニアを運転できるようにしたのです。会社としてはこんなに良いクルマがあるよ、と知ってもらい、ドライバーは良いクルマで良い仕事ができるようモチベーションをあげてもらえたら最高だなと思いました。
私はもともとドライバーなのですが、スカニアは走行安定性の高さとスムーズなオートマチック(※註:12段AMT『オプティクルーズ』)が良いですね。他のドライバーも同様の評価です。乗っていて“体が揺すられる”感じがしませんね。キャビンが揺れて“もまれ”ないのです。久しぶりにトラックにパッと乗っても、スカニアはすぐに良さがわかりました。
今回5台追加することにしたのは、すでに乗っているドライバーから好評だったのはもちろんのこと、トラックはある程度台数を走らせてみないと導入した結果がわかりにくいということもありました。今後も、実際に使用してみたトラブル、燃費やコストの成果を確認します。一気に、というのは難しいですが、今後も導入を検討していきたいと思います。」
大川社長とスカニアジャパンCEO・ヨハン・ルンデン氏の破顔一笑のツーショット、同社社長室にて。スカニアが結んだ日本とスウェーデンの強い絆を感じさせる。
これまでも数多くのスカニア導入企業でお話をお伺いしてきた中で、スカニア導入の理由に多くあげられていた「燃費の良さ」は大川運輸でも大きなフォーカスポイントになった。また、スカニアはフラッグシップや看板車としてのイメージももちろん与えられている中、既存トラックの代替え時にスカニア購入を検討していく、と大川社長は語られた。つまりそれは、国産車の代替えに「国産車ではなく、ふつうに輸入車のスカニアが選択肢にあがる」ということになる。日本のトラック市場も、少しずつ変化が進んでいることを実感する。思えば1980年代、輸入乗用車がまだ少なかったとき、輸入車を買うことは特別なことだった。でも現在は次期愛車の候補に、例えば「VWゴルフ」が選択肢として一般的に浮上する時代になった。同じように、近いうちにトラックの市場もそうなる日が来ると思う。
スカニアは、ドライバーのモチベーションをつくり、ドライバーとしての誇りを生み出し、快適なキャビンとイージーなドライビングは労働環境改善をもたらす。このようなスカニア導入の数々のメリットを、大川社長、そして大川運輸が理解されていることを感じた。スカニアを走らせる企業は、ドライバー想いの会社でもあるのだ。
トラックの総保有台数は1000台超(トラクター、トレーラーをそれぞれカウント)という大きな物流企業である大川運輸。本社周辺にもトラックをプールする広大なヤードが点在し、膨大な台数のトラックが整然と並んでいる。
スカニアの運用、今後の展望に関してお話をいただいた大川運輸株式会社 執行役員 本社営業所副所長 本社営業所 輸送第3課長 大木 和男氏。
続いて、スカニア製トラクターを実際に運用する面についての印象や成果や今後について、大川運輸株式会社 執行役員の大木 和男氏にお話をお聞きした。
「今回の追加でスカニアは計8台となりますが、大川運輸とスカニアの良いアピールになることを期待しています。また、弊社では以前から輸入トラックを多数運用して来たのですが、その理由のひとつに『安全性の重視』があります。ドライバーの意見からは、居住性の高さ、力があることが好評な点としてあげられていますね。毎月燃費データを算出しているのですが、確かに平均してスカニアは良いという結果が出ています。これまで運用している限りでは、いまのところ問題やトラブルは起きていませんが、今後、車検などで預けた際にいかに早く戻ってくるかがポイントかと思います。オイル交換のサイクルがスカニア独自なので、そのタイミングを日本の法定検査と合わせたいですね。」
スカニアの良さは何?と聞かれたら、「すべて」と答える
大川運輸ですでに導入されていた3台のスカニアのステアリングを握るドライバーのみなさん。左から久保 三郎氏、内田 政美氏、そして浅野 洋二氏。それぞれスカニアには2017年5月、昨年の10月、そしてまだ2週間ほど乗られているとのこと。3氏とも、スカニアを絶賛!
大川運輸に新たに5台が納車されたスカニアだが、「新たに」としているのは、前述の通り同社にはすでに3台のスカニアトラクターが導入されているからなのだ。いずれも昨年10月から今年2017年にかけて運用を開始している。そこで、実際にこの3台に乗務するドライバーのみなさんに、スカニアってどうですか?とインタビューを行ってみたところ、スカニアの良さをたくさんお話してくださったので、可能な限りこちらに、少々趣向を変えて箇条書きでご紹介したい。
「パワーとトルクはすごくあると思う!東名高速の御殿場の上り坂で、23t積んだ状態でも60km/h出ます。他のトラックを追い抜けることもある。それなのに、これまで乗っていたトラックより、1割くらい燃費がいいよ。」
「パワーがあるので、疲れない。以前だと上り坂でギアを落としていた場面も、スカニアだとそのまま登って行ける。」
「シートが良い。表面は柔らか過ぎず、硬過ぎず。走行時の安定性が高い。キャビンも広いし見晴らしも良い。ドライビングポジションも最適なので、長距離も疲れない。」
「一度に片道10時間ほど乗るので、疲れなさが実感として良くわかる。」
「高速道路でもシフトチェンジはほとんどしないし、オートクルーズ※任せなので、ラクです。前車との距離を一定に保ってくれます(※註:アダプティブクルーズコントロール=ACC)。」
「輸入車だと国産メーカーよりも乗りにくい、という印象があるかもしれないが、スカニアは運転しやすい。ステアリングが少し重いけど、それは安定感を感じるポイントでもある。」
「リターダーがとにかく良く効くね。これは素晴らしい。」
「車内が快適。ベッドもクッション性がいい。」
「キャビン周りの収納が豊富で便利。」
……などなど、3人ともスカニアが大のお気に入りのご様子で、次々とスカニアの美点を、笑いを交えて話してくださる。しかも、こちらがお伺いしなくても、内田氏自ら浅野氏に「注目度はどうですかね?スカニアは目立つので、恥じないように乗られていますか?(笑)」と冗談まじりに質問するなど、インタビューは終始笑顔で溢れ、とても盛り上がった。
そして内田氏は、スカニアは目立つので、実際にパーキングエリアで休憩中などでもスカニアの質問を頻繁に受ける、と話を続けた。
「スカニアってどう?ってよく聞かれるのですが、そのときは『スカニア、良いよ!』って答えています。では何がどういいのか……と伝えようとして考えたら、『スカニアはトータルで良い』ということなのかなあと。ひとつひとつの優れたところが、積み重なってとても良いトラックになっているという印象です。あと、ステイタス感がありますね。乗っていて、誇らしい。いい仕事ができる気がします。」
陽気なインタビュー&撮影だったので、ここでアングルを変えてもう一枚、ドライバー3人のお写真を。明るく楽しい雰囲気が伝わるだろうか。撮影のために愛車3台もこうして並べていただき、ありがとうございます!
「ドライバーの声」はスカニアが優れた製品としての証
ところで、「良い製品」「優れた製品」の何が良いのか、考えてみると意外に答えるのが難しいことがある。ひとつひとつの機能の良さや性能の高さがあっても、それが総合的に良い製品につながらないこともあることは、みなさんも経験があるかもしれない。クルマで言えばどれだけエンジンの性能が傑出していても、シートがイマイチですぐに腰が痛くなったり、ハンドリングがもうひと息だったり、視界があまり広くなくて運転が疲れるクルマだったら、それはどこまでを「優れた製品」と呼べるのか、という疑問に突き当たる。そう考えたとき、長距離運転する機会もある大型トラックという「命を預ける究極の仕事道具」では、「疲れを生む要素」が少ないことも「優れた製品」を判断する重要なポイントになるはずだ。そして今回も実際に長距離を運転してきたベテランドライバーのみなさんから「スカニアは良い」と大絶賛(※脚色はほんとうに一切ありません)していただけたことが、「トラックとしてスカニアは優れた製品」と判断出来る何よりの証ではないか、と思った。
同社内でいちばんスカニア歴が長い内田氏自慢のスカニア。全長は18mにも達するため、トラクター単体で見るのとまた迫力がまったく違ってくる。「STREAM LINE」のロゴが入れられたハイラインキャブでは全高3690mmに達するが、さらにエアデフレクタ(整流板)が追加されることで高さが増し、トレーラーの箱(ウイングボディ)との高さや幅の差が少なくなる。ルーフエアデフレクタは最大3%の燃費を節約し、年間で1080ℓおよび13万円のコストダウンにつながるスカニアは説明する(年間12万キロ走行、燃費を3.3km/ℓとした場合の試算)。
インタビューの最後、内田氏はこんなことも教えてくださった。
「大川運輸はドライバーの数がとても多いのですが、スカニアに乗りたいと思っている人も、多いです。スカニアファンが社内にいっぱいいるんですよ。でもまだスカニアは台数が少ないですので、ドライバーからの会社へのフィードバックを活かして『スカニアが良い』という声を会社にも届けていきたいです。仲間にも良いクルマで良い仕事をして欲しいですものね。」
創建を神武天皇元年とする歴史ある鹿島神宮に護られたこの地で活躍する、鎮守の森のような緑色のコーポレートカラーを纏った大川運輸のスカニア。今回一気に5台が加わり、8台体制となったことでわたしたちの目に触れる機会も増えたかもしれない。もし高速道路などで緑色のスカニアを見て、この記事を思い出していただけたら嬉しい。
大川運輸のスカニアのこれからの一層の活躍、そして同社のさらなる飛躍への期待を願ってこの記事を終わりとしたい。次回はどのようにスカニアをご紹介出来るだろうか。今から楽しみである。
PHOTO GALLERY
Text:遠藤 イヅル
Photos:YosukeKAMIYAMA