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SCANIAエンジンを積む雪上車、RIZINの組み立て現場、大原鉄工所へ

大原鉄工所とスカニアのタッグで生まれた雪上車『雷刃(RIZIN)』 

2017年で創業126周年を迎える北欧スウェーデンの『SCANIA(スカニア)』は、日本国内において2010年に日本の現地法人SCANIA JAPANを立ち上げて全国にサービスネットワークを展開、トラック、トラクター、バスの販売を積極的に展開していることはご存知の通りである。

そしてスカニアはトラック・バス以外にも耐久性に優れた高性能ディーゼルエンジンを設計出来る強みを生かして船舶や発電機、重機などに搭載する産業用エンジンの製造も行っている。こちらもトラック、バスとともに、スカニアの重要な部門のひとつになっている。

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大原鉄工所が新たに開発した新型ゲレンデ整備車「RIZIN」。スカニア製DC9型エンジンを搭載する。現行モデルの主力機『DF350』の後継として位置づけられる。

日本国内での産業用エンジン導入事例として、GRIFF IN MAGAZINEでは2016年3月にスカニア製エンジンを搭載した雪上車(ゲレンデ整備車)RIZIN(雷刃)をご紹介した。豪雪地として知られる新潟県長岡市に本社を置く『大原鉄工所』が製造するRIZINは、長年にわたる同社の雪上車開発の技術を凝縮した新型車だ。このパワーユニットに、350psの出力を誇るスカニア製9ℓディーゼルエンジン・DC9型が選定されている。

スカニア製エンジンはラジエターなどの補機類に関してモジュール化した既存の部品を組み込むことが出来ること、豊かな低速トルクを持つエンジン特性、そして極寒の地北欧の厳しい環境から生まれた寒冷地での強さなども、RIZINへのスカニア採用の決め手となった。

日本の風土が生んだ雪上車は国内トップシェア

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傾いたように見える写真だが、カメラは曲がっていない。ゲレンデ整備車は、このような急斜面からも起動できねばならない。

雪上車の使用環境はとても過酷である。日が昇らない暗闇の中や吹雪などの悪天候での作業は当然のようにある。もちろん自重で雪に埋もれてはならない。氷点下数十度でもエンジンは始動が可能で、各部の凍結への対策も、急坂であるゲレンデや氷の上でも起動できる性能は必須だ。このように運用に厳しい要求を満たす必要がある雪上車ゆえ、開発・製造が可能なメーカーは現在世界でもなんと3社しかない。1951年に日本で最初に雪上車を開発した大原鉄工所はそのひとつである。

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本社工場のバックヤードに並ぶ、出荷前の大原鉄工所製ゲレンデ整備車たち。日本各地のスキー場で活躍する

同社は地元新潟県の要請で、それまで車両開発を一切していなかった中で雪上車を苦心の末に開発。以来、南極観測隊や自衛隊、電力会社などに雪上車を納入している。場所によってはマイナス90度(!)に達するという極限の環境下の南極でも隊員や物資を滞り無く運搬し、そして災害救難などの厳しい状況の中でもミッションを果たさねばならない自衛隊の車両に、大原鉄工所の雪上車が正式採用され続けているという。

その事実から同社の雪上車の性能の高さが窺えるだろう。国内のゲレンデ整備車においても40%のシェアを持つ。大原鉄工所は日本各地の雪質を知り尽くしているため、それに合わせた雪上車を開発出来ることは大きな強みである。

オールインワンの生産技術力を持つ大原鉄工所

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歴史を感じさせる大原鉄工所本社工場の門柱。

新型ゲレンデ整備車RIZINはまだ発表されたばかりで、2016年11月現在量産に向けての組み立てが行われている。シャーシにスカニア製エンジンが載っている状態は今しか見ることが出来ないということもあり、長岡市の大原鉄工所・本社工場での見学が叶うことになった。

長岡は明治初期から大正期にかけて油田の開発で栄えた。油田の開発が進むにつれ、井戸を掘る機械や各種機械の製作や修理、油田から原油を運ぶ鉄管などが必要となって長岡では機械工業や鉄工業が急速に栄えたという。油田はその後枯れてしまったが、市をあげて工業都市促進の運動を進めた結果、現在でも名を残す企業の工場が次々と建設された。このように工業都市だった長岡で前身の大原鋳造所が創業。1907(明治40)年のことである。そして1940(昭和15)年に大原鉄工所が設立され現在に至っている。

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RIZINのシャーシの上に載った、スカニア製エンジン。これから各種パーツが艤装されていくので、このようにエンジンの姿が完全に見られるシーンは貴重。

各種雪上車が組み立てられる第2組立工場内では、RIZINが組み立て途中であった。しっかりと工作され美しく黒く塗られたシャーシの上には、オレンジに塗られたスカニア製ディーゼルエンジン「DC9型」がボルトオンされていた。シャーシの上にはこれから補機類、油圧系統、車輪、車体、履帯が装着されていくので、エンジンが載っている状態が観察出来る機会はなかなか無い。

RIZINのキャビン以外の車体のほとんどはエンジンで占められている。そのため、シャーシの状態で見てもエンジンの存在がとても大きい。エンジン自体ももちろんビッグサイズだが、シビアな性能とパワーが要求される雪上車には、これほどの大きなエンジンが必要なのだなと実感。これでも“中型雪上車”というから驚き!

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雪上車の組立を行う第2組立工場。シャーシ、キャビンの骨組み、スノーブレードや圧雪ローターは別の同社工場で製作され、この工場に持ち込まれてから組み立てられる。

第2組立工場の右隣は、機械工場である。設立以来この地に建っているという趣あるこの棟では、各種旋盤や金属加工のための工作機械が並び、雪上車の命綱である履帯の製作も行われている。工作機械の数や規模はそうそうたるものだ。敷地内奥にはキャビンなどのボディ外板に使用されるFRPの工場も備える。雪上車は一概にサイズが大きいので、FRPで製作するパーツも大きめになるがその仕上がりレベルはたいへん高い。耐久性に優れ過酷な状況下で使用することが出来る雪上車をシャーシからボディ、履帯までほぼ一貫して製造・組み立て出来る大原鉄工所の基礎技術力の高さを垣間見ることが出来た。

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設立以来の建物である機械工場。その名の通り、機械加工を主に担当する。こちらでは雪上車の履帯の製作も行われる。

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ボディの基本骨格は鉄で組まれ、パネルはFRPで製作される。完成した車両からは素材の違いがわからないほどにFRPのフィニッシュレベルが高い。

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塗装ブースも完備している。製作しているのは多目的装軌車、『Caliber』。鋼体に載る屋根は一枚もののFRPだ。

高い品質を支える、蓄積されたノウハウと実績

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気さくで明るい「ケンちゃん」こと生産統括部 組立工場グループ長 五十嵐賢二氏。様々な製品がある同社工場のトップゆえのご苦労を教えてくださった。バックに写るのは旧型の雪上車を改造した、社内で除雪や運搬などに使用される万能車。

工業都市・長岡の伝統を受け継ぎ高い技術力を持つ大原鉄工所。同社が手がける製品は雪上車だけではく、本来同社が古くから手がけて来た掘削機やポンプ、水門などのほか、近年では消化ガス発電設備、バイオマス発電設備など多岐にわたる。同社製品は専門性がそれぞれたいへん高く、誰でも組み立てや製造をすぐに担当することは難しい。大原鉄工所の生産部門である生産統括部 組立工場グループ長 五十嵐さんに、雪上車をはじめとした生産についてのご苦労や工夫をお伺いした。

「雪上車を組み立てるグループ(2組)、それ以外の製品を手がけるグループ(1組)がありますが、私はそのどちらも管理をしています。私自身は1組に8年、2組に10年以上所属していましたので、工場内でどのような作業が存在して、どのような工程が必要なのかを把握しています。専門性の高い製品が多いため、技術の蓄積と教育が重要ですね。作業の標準化やマニュアル化を進め、技術の引き継ぎやノウハウの蓄積を進めています。また、現場では組み立て時に間違いがないかをチェックする自主点検表などを活用し、品質の管理を行っています」

各スタッフの高いスキルと正確な技能、そして蓄積された経験と実績が、大原鉄工所の製品の品質を支えているのだ。

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組み立ての進むゲレンデ整備車。専門性の高い製品のため、組み立てにはノウハウやスキルが必要になる。五十嵐氏は、そのノウハウを蓄積し誰もが同じ作業を出来るようにするミッションも担う。

組み立て工程を削減したスカニア製品のメリット

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RIZINの組み立てにあたる生産統括部 組立工場 グループ長補佐 関口 豊氏(右)と、生産統括部 組立工場 倉本大輝氏(左)。抜群の笑顔をカメラに向けてくださった。

続いて、この日RIZINのシャーシにスカニア製エンジンを組み付けていた生産統括部 組立工場 グループ長補佐 関口 豊氏と、生産統括部 組立工場 倉本大輝氏に、スカニア製のエンジンの持つメリットや気がついたことなどついてお話を伺った。

「スカニアでは、エンジンを動かすのに必要なラジエターなどの補機類について、既存の部品を活用出来ることが大きいですね。コンプリートされた部品をつけるので補機類の設計の手間が省けることも大きいですし、実際に組み立てるときも手順が少なくなります。」

組み立ては専門性が高く技術の蓄積が重要、と五十嵐さんが仰っていたが、組み立てスタッフの間でも常に情報とノウハウの共有が行われ、設計部門とも密に連携を取っているため、組み立て時に気がついたことなどはすぐに設計に伝達されるという。この風通しの良さもまた、大原鉄工所の製品が持つ品質の高さに反映されていると感じた。

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RIZINのラジエターは、バス用をそのまま使用することが出来た。エンジン、補機類がセット(パック)で使用可能だったこともスカニアが採用された理由のひとつ。従来では別途設計が必要だった。

南極に行ったことがある社員がいる(!)、大原鉄工所

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巨大レンチでボルトを締め付ける、関口氏と倉本氏。9ℓディーゼルエンジンの大きさとシャーシに対する比率がわかるだろうか。

今回大原鉄工所を訪問して気がついたことは、スタッフがみな明るく前向きで、考え方に柔軟性があることだった。そして、日本では唯一無二とも言える雪上車を作っている企業である、という誇りも感じられた。中には雪上車が作りたくて大原鉄工所に入社したスタッフもいるという。そしてびっくりしたのは、今回話をお伺いした3人とも南極に行ったことがある、ということだった!

しかも飄々と、ごく当たり前のように南極観測隊の一員だったお話をされるのだ。果たして日本の中で南極の地を踏んだ人はいったい何人いることだろう。さすがは南極観測隊の雪上車を作るメーカーである。

ちなみに五十嵐さんは第40次、関口さんは第38次、倉本さんは第53次の南極観測隊に参加されたとのことだ(現在は第58次)。

そんな魅力あるスタッフに恵まれた大原鉄工所にスカニア製エンジンを納入したスカニアジャパンの眞山氏は、今後もより一層大原鉄工所とのタッグを組んでいきたいと熱く話してくれた。そして大原鉄工所も、「スカニア製エンジンは最良の選択」とスカニア製品に太鼓判を押している。雪上車を愛し、雪上車への情熱を惜しみなく注ぐ大原鉄工所と、同じく情熱を持って製品を開発し販売するスカニアの組み合わせなら、これからも両社の伝統と技術に裏付けられた素晴らしい製品を次々と生み出していくだろう。

大原鉄工所のスカニア製エンジン搭載モデルの発展と、スカニアの産業用エンジンが国内でより多く採用されることを願いたい。

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画面左端が雪上車を組み立てる第2組立工場、中央のオレンジ色の建物が機械工場、奥が第1組立工場および生産統括部である。機械工場は同社の古い写真にもその存在が確認出来る。雪上車がさりげなく置いてあるのは、雪上車メーカーである大原鉄工所の工場ならでは。

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本社事務所。玄関ロビーには南極から持ち帰られたという「南極の石」が置かれている。

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第2組立工場内に置かれている圧雪ローター。雪上車の後部に装着される。雪をローターで撹拌したのち、綺麗な滑走面を形成するゲレンデ整備車に無くてはならない装備。

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RIZINのシャーシを見る。軽量化と強度を両立させるため、補強をしつつ各部に穴が開けられている。工作精度はとても高い。

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履帯に使用するアルミ製パーツ。製作する履帯の種類を間違わないように、わかりやすく色分けがされている。

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機械工場内には大型旋盤など各種工作機械が多数稼働する。中には数十年にわたり活躍している古いマシンもあり、誇らしい長い歴史を無言で物語っていた。アウトソーシングが進み、昔に比べると自社の機械加工の割合は減りつつあるという。

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大原鉄工所の重要な柱である環境分野の製品のひとつ、バイオガス発電装置。バイオマスのメタン発酵により得られるバイオガス(メタンガス)をエネルギー源として発電をおこなう。こちらは第1組立工場が担当する。

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こちらは空港設備。飛行機の駐機スポットにある給油口である。ハイドラントピットという。

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敷地隅に置かれたかつての雪上車、SM31。この頃はまだボディ外板はFRPではなかったためリベットが打たれて無骨な印象。トラック用のヘッドライトと灯火類を持つ。

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第2組立工場と機械工場の間にある段差は、2004年の新潟県中越地震で出来たもの。長岡市のある中越では、2007年にも大きな地震の被害を受けている。だが大原鉄工所はそれらを乗り越え、高い品質の製品を生み出し続けている。日本はこうした企業の努力と技術力によって支えられていることを実感する。

Text:遠藤イヅル
Photos:横山マサト

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