INTERVIEW

京成バスが導入したスカニアエンジン搭載二階建てバスは、成田空港アクセスの新しい顔〜京成バス株式会社様〜

京成バス、成田空港アクセス便にスカニアエンジン搭載の二階建てバスを採用 

観光バスや高速道路を運行する乗合の高速バスなどで一定の需要がある二階建てバス。しかし現在新車の製造が国内トラック・バスメーカーで行われておらず、その代替車選びに悩まされているバス事業者は多いのではないかと思われる。そこで2016年、定期観光および貸切バスを運行する「はとバス」が解決策として『SCANIA(スカニア)』製エンジン・シャーシとベルギーのバンホール製車体という純欧州メーカーの組み合わせを持つ二階建てバスを導入して話題となったことは記憶に新しい。GRIFF IN MAGAZINEでもお伝えしているので、ぜひ改めてご覧になっていただきたい。

日本独自の法規や右側通行の環境から海外製バスが少なかった日本で「二階建てバスの新車が国内メーカーでは無く海外製」という、これまでには考えられなかったあの驚きから2年、はとバスでは好評を受けてさらにスカニアを5両まで増車した。また東京に本社を置く観光バス事業者も2両を導入するなど、この二階建てバスはまさしく“新しい日本の二階建てバス”のスタンダードになりつつある。

京成バスが都心〜成田空港の空港アクセス路線「有楽町シャトル」に導入した二階建てバスは、スカニア製エンジン・シャーシを持つ「アストロメガ TDX24」。同社奥戸営業所に配置される。すでに国内でも数社で観光バスに採用されているが、高速バス仕様としては日本初。

アストロメガの迫力ある後ろ姿。「TDX24」は日本向けの全長12m以下のモデル。欧州には全長13.1mの「TDX25」や、14.1mの「TDX27」などが存在する。

そして2018年春、千葉県市川市に本社を置く「京成バス」がスカニアを新たに導入することになった。京成バスは2017年3月現在の営業キロは約300万km、車両数約800両、路線数131という大きな規模を誇る京成グループのバス事業者で、地域に密着した路線バス以外にも房総半島方面、東京ディズニーリゾートなどを結ぶ便利な高速バスなども数多く運行し、空港アクセス路線にも力を入れている。

最近では2017年12月より東京駅鍛冶橋駐車場〜成田空港(第2旅客ターミナル)間を結ぶ「有楽町シャトル」を新設。2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて国土交通省が推進する公共交通機関バリアフリー化の実証実験路線という側面も持つ有楽町シャトルには、半分以上の運行が車いすリフトを備えたバスで行われている。今回スカニアはこの「有楽町シャトル」路線に投入され、2018年3月29日(木)から1日3往復で運行を開始している。

今回の大きなポイントは日本で初めて「高速(乗合)バス」となったことだ。高速(乗合)バスは基本的には時刻表をベースに運行されるので、乗り場に行けば誰でもスカニアに気軽に乗ることができるのは嬉しい。

なお京成バスは1989年から2000年まで、小岩駅〜葛西臨海公園間で都営バスと共同運行で海外製二階建てバスを運行していたが、高速(乗合)バスへの二階建てバスは初の投入となることも注目される。

愛称は「ELEGANCE DOUBLE DECKER」 

投入された二階建てバスについて、もう少し詳細に説明してみたい。ボディ後部にはスカニア製直列6気筒12.74ℓディーゼルエンジン「DC13 115」が同じくスカニア製シャーシに搭載される。410psの最高出力と2,150Nmのトルクを持ち、日本の平成28年の排出ガス規制をクリアしているクリーンディーゼルだ。組み合わされるトランスミッションは12段半自動AMT「オプティクルーズ」である。車体は全長12m、全幅2.5m、全高3.8mという日本の法規内に収めるべく独自の設計が施されたバンホール製「アストロメガ(TDX24)」で、全長11,980mm×全幅2,495mm×全高3,780mmと寸法的に見ても法規内いっぱい。実際に見ると数値以上のサイズを感じる。乗車定員は二階が51名、一階は2名(2 名(車いす1 名、介助者席 1 名)、乗務員1名の計54名で、二階にはすべて座席が並び、階下は車いすの方の乗車スペースと介助者席、荷物の収納棚、運賃箱、お手洗いを備えている。お手洗いもアストロメガ(TDX24)としては国内初装備となる。

運行にあたっては「ELEGANCE DOUBLE DECKER」(エレガンス ダブル デッカー)という愛称が与えられ、車体両側面にはロゴとイメージイラストが貼られている。エレガンスという言葉には、バリアフリーの優しさや内面の美しさが込められているという。

ボディサイドには愛称である「ELEGANCE DOUBLE DECKER」と外観をイメージしたロゴマークが貼られ、このバスへの期待の大きさや、導入までにかけられた愛情を感じさせる。

座り心地抜群の明るい青系のモケットを持つシートを備える。乗車定員は乗務員1名を含んで計54名である。車いす用リフトを持つ空港アクセス用の既存車では車いす利用時の定員が36名(乗務員、補助席は除く)なので、定員増加はそのまま1運行あたりの増収につながる。

整然とした運転席。トランスミッションは12段機械式AMT(セミオートマチック)「オプティクルーズ」で、クラッチレスによるドライバーの操作負担軽減を実現している。窓の脇の直立したレバーはサイドブレーキ。

スカニア導入がもたらす大きなメリットとは 

「ELEGANCE DOUBLE DECKER」の導入に尽力した、京成バス株式会社 業務部 車両課長 石丸 哲也氏。走り始めるまでの約2年間にはご苦心とご苦労があったという。それゆえ愛着、愛情も大きいとのこと。

京成バスがスカニアを選んだ理由は何だったのだろう。同社でスカニア導入を担当した京成バス株式会社 業務部車両課長 石丸 哲也氏に、導入の経緯とそれによって得られる大きなメリットについて語ってくださった。

「『移動円滑化の促進に関する基本方針』では、当初バリアフリー化促進の対象外となっていた適用除外認定車両については、平成32年までに25%をバリアフリー化することが目標として掲げられています。日本の玄関口である成田空港に乗入れするバス事業者の当社ではすでにリフト付き高速(乗合)バスを2両保有していますが、リフトを使用して車いすの方をご案内する際に15分ほどお時間を頂いています。あと、バス停に屋根(上屋)があると、このリフトが使用できません。そして車いす利用時の定員が8名ほど減少して36名になってしまうのです」

そこで京成バスでは、一階に車いすの方に乗っていただける二階建てバス導入のアイデアが生まれた。二階建てバスなら路線バスと同様にドアにスロープをさっと渡して車いすの乗降ができるため、その時間は約3分にまで短縮される。さらに二階が全て座席のため、定員は一般的な高速(乗合)バスと同等になり、輸送力低下の問題もクリアできる。導入のメリットは大きいと判断された。2015年12月のことだったという。選ばれたのはもちろん日本で唯一新車の二階建てバスを用意できるスカニアだった。しかし、走り出すまでにはご苦心とご苦労があった。車両の発注からバンホールでの製造には10か月を要し、上陸したのはつい最近の2月7日だったという。

「既に、はとバス様でスカニアの二階建てバスの導入実績がありますが、定期観光バスと高速(乗合)バスでは運行形態が全く異なっており、車載機器も違うため仕様変更の必要が生じました。また、高速バスはワンマン運行のため保安基準も厳しいのです。製造時に載せる必要のあった機器に関するやりとりには、言葉の壁や考え方の違いなどもあって苦労しました。」

床が高い高速バスでの車いす乗降にはリフト付きバスが必要だったが、二階建てバスなら車いすはスロープを渡すことによって容易に乗降ができる。車いすスペース前方には介助者用シートも。車いすスペースのカップホルダーにも細心の配慮があらわれている。手すり類は視認性の高い色で塗られている。

乗客の荷物は階下に設置された棚に収納する。二階建てバスの構造を上手に活用していると言えよう。

また、今後の二階建てバス使用路線やスカニア追加導入などについても教えていただいた。

「今回は実証も含めた路線に投入されますが、今後は空港アクセス便以外の用途での使用も想定されます。例えば東京ディズニーリゾート発着便のようにテーマ性が高い路線で走らせれば、二階建てバスということが集客効果につながると思います。追加の導入については未定ですが、実証の成果を踏まえて検討したいです。そしてこのバスは京成バスのイメージリーダー、話題にもなると思います。京成バスが最初に高速バスとしてスカニアを導入したことも強調したいです」
とのことで、空港アクセス便以外でもその美しい姿を見ることができるようになるかもしれない。たしかに東京ディズニーリゾートの往復に使われたら一層喜ばれそうだ。

石丸氏は、最後に嬉しそうにおっしゃった。
「ここまではとても大変でしたが、悔いはありません。出来るようでしたらもう一両担当したい。はとバスさんをはじめとしたいろいろな方と作り上げた喜びもあります。この仕事に携われて良かった。」

石丸氏が尽力し約2年情熱を注ぎ込んだ「ELEGANCE DOUBLE DECKER」。春の日差しに輝き美しく佇むその姿には、石丸氏の想いが感じられた。

「ダブルデッカーお披露目会」「試乗会」を開催 

2018年3月29日(木)の運行開始を前に、3月27日(火)に京成バス東雲車庫にて「ダブルデッカーお披露目会・試乗会」が開催された。青空の下に京成バスの高速バスカラーが映える。

このように京成バスの高速(乗合)バスとしては初の二階建てバスで、バリアフリー対策や定員確保の諸問題を一気に解決するスカニアへの京成バスの期待、そして込められた愛情は大きい。そこで運行開始前の3月27日(火)、京成バス東雲車庫にて来場すれば誰でも参加が可能な「ダブルデッカーお披露目会」が開催された。お披露目会では京成バスの加藤常務取締役、そして石丸氏による二階建てバス導入の経緯・特長などが説明されたのち「ELEGANCE DOUBLE DECKER」の車内を含め自由に見学・撮影する時間が設けられ、小さなお子さんを連れたお母さんなどもみなさん嬉しそうにシャッターを切ったりシートの座り心地を確認していた。またお披露目会当日には試乗会も同時に行われ、事前申し込みによって招待された参加者と報道陣は、東雲車庫〜お台場〜レインボーブリッジ〜東雲車庫という約30分の試乗を楽しんだ。

二階席の高いアイポイントからは、見慣れた景色も全く違うものに見えるのは新鮮だった。一般的な観光バスも着座位置は十分に高いのだが、二階建てバスからの眺望はそのバスの屋根を見下ろすほどなのだ。大げさな言い方かもしれないが、ちょっと高めの空中散歩気分。少し固めで体にフィットする座り心地の良いシート、重厚で揺れの少ない乗り心地も体感することができた。

成田空港から海外や国内に飛び立つ前は、何度飛行機に乗ってもドキドキワクワクするもの。その空港までの往路では楽しい旅の一部分や思い出になり、復路では帰宅までのホッとする気持ちを包み込んでくれる京成バスの新しい空港アクセス便「ELEGANCE DOUBLE DECKER」。多くのみなさんの笑顔や安心を乗せて、いつまでも走り続けて欲しいと思った。

お披露目会ではスカニアのロゴが記された大きなレプリカキーの贈呈式も行われた。なお京成バスでは通常「バスに乗務員が紐づく担当者制」だが、今回は「路線に固定される」こと、海外製バスということもあって当面は決まった乗務員で乗車シフトを組む。乗務員からの評判は高く、「運転しやすい」「運転していて楽しい」という声も聞かれるという。

事前申し込み制の試乗会ではお台場方面に向けて走行。試乗会は東雲車庫を出発してお台場エリアの国際展示場を経由、レインボーブリッジを渡って戻るルートだった。ダブルデッカーの視界の素晴らしさを体感するのには最適なシチュエーション!「ELEGANCE DOUBLE DECKER」は、当面首都高速湾岸線を経由しない東京駅鍛冶橋駐車橋〜成田空港の区間に投入されるため、通常では見ることができない貴重なシーンとなった。

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二階席最前列には、当然ながら運転席はなく、目の前は景色となる。筆者も試乗させていただいたが、着座位置の高さは想像以上で、普段見慣れた景色が全く違って見えて感動した。空港に行くまでの間も楽しくなること間違いなし。

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貸切バスではなく高速(乗合)バスに使用される証を。まずは前ドアの後方に設置された行先表示器。フルカラーLEDを採用し、ご覧のように行き先以外にも様々なグラフィックを表示できる。

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そして後ドアを入ってすぐの料金箱は高速(乗合)バスらしい装備だ。右側の階段は2階へのアクセス。なお乗降は後ドアのみで、通常前ドアは締め切り扱いとなる。階段脇にはお手洗いも設置される。

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座席頭上にはエアコンの個別吹き出し口、照明、スピーカー、緊急時用のコールボタンなどが備わる。スピーカーの音質の良さが印象的だった。

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運転席のドライビングシートはエアサスを備えるドイツのイスリングハウゼン製で、ホールド性と快適性に優れる。

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バスの運行に必要な実務的な装備は使い慣れたシステムが搭載される。こちらは運転席コンソール脇、前ドア側に搭載されたオーディオ、バス用音声合成放送装置、行先表示の設定器。

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運転席側に備えられたミラーはダブル。後方視界だけでなく、奥行きの感覚もサポートする。

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リアは2軸。タイヤはダブルタイヤではなく、バス用のオールシーズンタイヤ、「ミシュラン Xコーチ」が採用される。サイズは295/80 R22.5。

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試乗会の会場となった京成バス東雲営業所には、京成沿線ではおなじみ「京成パンダ」も応援に駆けつけた。京成カードのキャラクターで、「P-78星雲に浮かぶパンダ星を治めるパンダ王家の王子。パンダ星立パンダ大学理工学部大学院で博士号を取得。専門はロボット工学。高校時代は野球部、大学に入って駅伝部に所属。趣味はエコロジー活動。」とのこと。設定が細かい(笑)

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試乗会は平日にも関わらず、多くのファンが駆けつけた。熱心にカメラを向ける小さな姿が微笑ましい。

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スカニアエンジン搭載の二階建てバスは、着実に日本でも台数を増やしている。このたび「ELEGANCE DOUBLE DECKER」として高速(乗合)バスへの投入も開始された。“日本の新しい二階建てバス”の活躍の幅がより広がったことを祝したい。

Text:遠藤イヅル
Photos:YosukeKAMIYAMA

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