運ぶ貨物は一般的な国際コンテナからボート、鉄道車両、建築資材、橋梁、ヘリコプター、レーシングカーなど多岐に渡り、アイデアによって独自開発されたトレーラーも存在するということで、横浜市戸塚区に本社を置く運送会社、株式会社ゴールド・スターを訪ねました。
仕事の相棒であるトラックで大事なこととは
もしあなたが、トラックのドライバーだったとき、仕事の相棒であり道具となるトラックにはどんなことを求めるだろう。快適な車内、豊かなパワー、運転のしやすさなど、いろいろな要望があると思う。快適と言っても人それぞれの尺度があるが、トラックにとっての快適さとは、疲れにくい環境が備わっていることなのではないかと思う。
疲れる、疲れないという意味では、パワーの有無も重要だ。パワーが少ないトラックでは、坂道で何度も変速したりアクセルを目一杯踏んでも登らなかったりして、それだけで疲れてしまう。また、視界、シートの良し悪し、目に入るメーターのデザイン、乗り心地など様々な要素が、疲れるトラック、疲れないトラックという評価を左右する。かくいう筆者は20年ほど前に2-4tトラックのドライバーだったことがある。自分の職場では専用の車種を与えられていたわけでは無かったので、トラックの新旧・車種の差によって快適性、疲労の仕方が大きく違ったことをよく覚えている。
長距離・長時間をキャビン内の運転席に座って過ごすドライバーにとって、相棒であり道具であるトラックが「良いトラック」であることは、仕事をする上でもとっても重要なのだ。
1950(昭和25)年に設立以来、一貫してトレーラー運送を専門としている株式会社ゴールド・スターは、長い年月で蓄積した膨大なノウハウと、同社が保有する300両以上に及ぶ多種多様なトレーラーを駆使して、国際海上コンテナや重量物など様々な輸送に対応している。
一貫してトレーラー輸送に特化する、株式会社ゴールド・スター
今回GRIFF IN MAGAZINEがお邪魔したのは、横浜市戸塚区に本社を置く運送会社、株式会社ゴールド・スター。同社はトレーラー輸送の専門企業として1950(昭和25)年に創業。以来、一貫してトレーラー輸送に特化している。運ぶ貨物は一般的な国際コンテナからボート、重機、産業機械、鉄道車両、建築資材、橋梁、ヘリコプター、レーシングカーなど様々。深海艇や航空機のカットボディなどの輸送を手がけたことも。輸送するためのトラクター(けん引する側)とトレーラー(引っ張られる側)の保有台数は多く、トラクターは69台、トレーラーは300両以上になる。特にトレーラーは輸送する貨物に合わせて低床セミトレーラー、エアサスペンション付きトレーラー、フラットセミトレーラー、タンク専用低床セミトレーラー、最大60tまで積載可能な大型の伸縮セミトレーラーなどの幅広いラインナップを誇っている。特筆すべき点は、同社のアイデアによって独自開発された「ゴールド・スターにしか存在しない」トレーラーも存在することで、トレーラー輸送に特化した同社ならではの車種といえよう。
『SCANIA(スカニア)』のトラクターは2015年から本格的な導入が開始された。2017年11月以降新たに9台が投入されており、今後も続々と同社のフリートにスカニアが加わることが予定されている。
2015年から続々と投入が続いている「R580」トラクター(6×4)。580馬力を発生する16.35ℓのV8エンジン「DC16 102」を搭載する。5台がズラリと並ぶシーンは圧巻。仕様が統一されているので、並んだ姿も美しい。ブラックアウトのグリルと鮮やかなカラーリングの組み合わせもGood。
一番手前のスカニアがけん引するトレーラーは、株式会社ゴールド・スターの自社発注によるオリジナル車だ。長年の経験から顧客のニーズを掴み、必要に合わせて独自の車両も開発していることとは、さすがトレーラー輸送のエキスパート。
こちらが、同社が開発した「伸縮式エアサスペンション低床トレーラー」で、全長は約20m。2017年11月現在3台を保有する。トレーラーの低床荷台部を4m延長することも可能。荷台高さ500mmという超低床なので、高さ・長さがあり分割が難しい製品を輸送するのに適している。製造は日通商事(ALOZ)。
このトレーラーの特徴は数多い。中でも車輪がステア(操舵)する設計は、回転半径を小さくすることに貢献している。
株式会社ゴールド・スターでは69台のトラクター、300両以上のトレーラーを保有する。トレーラーの種類はとても多く、こちらはエアサスペンションを備えて振動の弱い貨物にも対応出来る「中低床トレーラー」。
スカニアはパワーとトルクがスゴイ!
重量物・長尺物輸送のエキスパートであり、長年に渡る輸送実績から膨大なノウハウを持っている株式会社ゴールド・スターがこれほどの早いペースでスカニアを導入しているのには、きっと大きな理由があるに違いない。そこでさっそく、同社で国際特殊物流事業本部 現場統括マネージャーを務める三宅 栄一氏に、スカニアで仕事をしている中で感じたことをお聞きした。三宅氏は26年前に株式会社ゴールド・スターに入社。現在もなお一線でトレーラー輸送に携わっている他、新人の教育や独り立ちする際の効果測定など、現場全体を見守っている。三宅氏はスカニアドライバーの一人として、スカニアの良さを長年の経験からの視点も交えてこう語った。
「スカニアは580馬力もあるので、やはりパワーとトルクがありますね。私たちが運ぶのは重くて大きいものが多いので、上り坂ではそれまで乗っていたトラクターと比べて力があるのを感じます。ギアの選択も良いですね。ギアはほとんどオートの状態で走れます。パワーのある割に燃費も良いです。そして素晴らしいのが “下り”です。それとキャビンの居住性の高さ。車内で立てるほど余裕があります。小さなことですが、足元がすべてフラットなのも有り難いです。視界もいいですね。あと、スカニアはやはり存在感が違いますねよね!他のドライバーのスカニアへの評判も高いですよ。」
スカニアのトランスミッションは12段OD自動変速機能付トランスミッション「オプティクルーズ」で、ギアの選択の適切さは定評がある。また重量物を輸送する際に一定速度で坂を下る際に威力を発揮するのが「スカニア流体式リターダー」で、どちらもこれまでGRIFF IN MAGAZINE で取材したドライバーの多くが絶賛している装備である。
株式会社ゴールド・スターでトレーラー輸送に携わって26年のベテラン、三宅 栄一氏。現在は国際特殊物流事業本部 現場統括マネージャーの任に就き、新人教育にも力を注いでいる。
インタビューが終わり早速愛用のスカニアに乗り込む三宅氏。スカニアはパワーがあり、運転が楽だと語る。
スカニア導入の経緯は「熱意」
導入が続く理由について、続いて「ドライバーの評判は確かにいいですよ!長距離乗ると、疲れ方が全然違うと言います」と嬉しそうに語る株式会社ゴールド・スター 代表取締役 赤星 興一氏に、スカニアを導入した経緯をお聞きした。
赤星氏は26年前、父親が経営していた同社に入り、ドライバーや配車業務などを行ったのち、後を継いで2代目社長に就任した。現在はトレーラーの種類がとても多い同社だが、かつてはそのバリエーションが少なく、様々なサイズ、形状、重量に即した輸送が難しかった。そこで赤星氏は、ニーズに対応したトレーラーの開発なども行い、「積めないものは無い」ようにしていったという。「でもその結果、今は逆に種類や台数がとても多いので、配車する係は大変です(笑)。」
以前、同社はスカニアジャパン発足前にスカニアを購入しているが、それを経年で交換するタイミングで偶然、スカニアの営業マンが同社前を自転車で通りがかり、飛びこんで来たのがキッカケだという。スカニアの運用はずっと行っていたため良さは熟知していたこともあり、その後スカニア導入の話はどんどん進み、2年前の2015年にR580を1台、2016年に同じくR580を2台、そして今年になってR580を2台とP410が2台(合わせて4台)、続々と導入され、取材時では合計10台のスカニアが稼働している。
そして赤星氏は、導入に関して興味ある話をして下さった。それは、前述の以前購入したスカニアの代替え時のこと…。
「スカニアに乗車していたドライバーが『古くてもいいのでスカニアに乗り続けたい』と強く願い出たのです。話を聞くと、『スカニアじゃなければダメ』というくらい、スカニアに熱意があるんですね。スカニアの性能、快適性、乗り心地など、ひとつひとつが良いとのことでした。」
そのドライバーの熱意もまた、赤星氏がスカニアを導入する契機になったのだろう。そして10台ものスカニアを運用するまでに至った。それは、20t、30tを越える重量物を運搬する、いわばトラックとして極限状態に近い運用を行う同社に「スカニアは良いトラック」だと認められた証明ではないだろうか。スカニアは、「スカニアじゃなければ!」と願ったドライバーが感じていたように、様々な要素の個々の点数が高いので、全体で見たとき・感じたときに「良いトラック」になっているのだ。
株式会社ゴールド・スター 代表取締役 赤星 興一氏。トレーラー輸送のプロフェッショナルとしての誇りや高い行動力、バイタリティを感じさせた。
スカニアは「ドライバー思い」の証
株式会社ゴールド・スターは安全対策、ドライバーの社内教育制度に力を注いでおり、安全対策では全車にドライブレコーダーやアルコールインターロック搭載を設置、社内に運転シミュレーターを設けるなどして運転指導や安全意識向上に務めている。また、社員や家族への福利厚生充実も図っている。これらの制度はいずれも、同社が社員を大切に思う温かい気持ちの表れだ。また赤星氏は、企業の源として「自分の仕事に誇りを持てる会社になる」ことを大切にしていると語った。大きなセミトレーラーを運転しているということは、確かに素晴らしいことだと思う。そして存在感がありトラックドライバーに一目置かれるスカニアで仕事を行えたなら、一層誇りが持てるに違いない。つまり、スカニア導入は同社の「源のひとつ」であり、「ドライバー思い」の証なのだ。
赤星氏の社員の幸せを追求する思いと社風は、確かにドライバーやスタッフに伝わっているように思った。というのも、撮影中もみなさんとにかく元気で、笑顔いっぱいで、明るいのだ。そして会社にスカニアがあること、スカニアで仕事をすることに確かに誇りを持っているように感じた。
今後も、株式会社ゴールド・スターではスカニアの導入を進めていくという。まず近いうちに5台が納車されることが決定している。これからも同社のスカニアは「仕事の誇り」を生み出せる存在であり続けることだろう。
「ドライバーをメインに取り上げてくださいね」と語る赤星氏の言葉には、社員を温かく思う赤星氏と株式会社ゴールド・スターの思いが詰まっていた。
この記事のトップ画像の撮影風景がこれ。ドライバーのみなさんの全面協力で見事な並びが実現。ありがとうございました。みなさんもワイワイガヤガヤ、実に楽しそう。
本来なら全員揃った写真を掲載するべきかもしれないが、とにかくみなさん笑顔が魅力的なので、楽しそうに笑う撮影途中の何気ないワンシーンをチョイスしてみた。彼らの明るさが感じられる1枚だ。
V8エンジンの「Rシリーズ」R580トラクターの他にも、株式会社ゴールド・スターでは価格と性能のバランスに優れ乗降性も良い「Pシリーズ」P410トラクター(4×2)の導入を新たに開始した。P410には12.74ℓの直6エンジン「DC13 115(最高出力410ps)」に「オプティクルーズ」が組み合わされる。2017年11月現在P410トラクターは3台が稼働中で、来年以降もRシリーズを含め台数が増える予定だ。今後の株式会社ゴールド・スターとスカニアの活躍を応援したい。
PHOTO GALLERY
Text:遠藤 イヅル
Photos:横山 マサト