Scania’s History

スカニアの象徴「グリフィン」が刻まれたエンブレムの歴史を辿る

スウェーデンの大型車両メーカー「スカニア」のエンブレムには、空想上の生物と言われる「グリフィン」が描かれています。北欧に息づく伝説と、そのグリフィンがエンブレムに採用された起源について徹底的にリサーチして見ました。

百獣の王・ライオンと鳥類の王・鷲の姿を持つ「力強さの象徴」グリフィン

新モデルスカニアのステアリングホイールに輝くエンブレム。グリフィンは気高さや力強さの象徴として古くからヨーロッパで親しまれてきた伝説の生物で、スカニアの風格あるイメージによく似合う。

グリフィンとは、ライオン(獅子)の胴体に鷲の上半身を持つ空想上・伝説の生物で、前足が鳥類で背中に翼が生えた姿が特徴です。グリフィンの歴史は古く紀元前5世紀頃の古代ローマの歴史書などにもすでに登場していますが、その起源はインドなど東洋であると言われています。フランス語ではグリフォン、スウェーデン語ではグリペン、日本語では「鷲獅子(じゅじし)」など各国で様々な呼び名を持ちます。

日本ではグリフィンにあまり馴染みがありませんが、ヨーロッパでは獅子と鷲という強い生物同士を掛け合わせた存在から風格、力強さの象徴、王の象徴として数多くの王族、貴族、そして都市などで紋章として採用され、長きにわたりペガサス(天馬)、ドラゴン(竜)などとともに親しまれています。

グリフィンはスカニア創業の地・マルメの紋章

トラック、バスそして産業用エンジンを載せた雪上車などで着実に日本での台数を増やしている『SCANIA(スカニア)』。目にする機会が増えたことで、スカニアと言えばグリフィンのエンブレム、という印象も浸透してきたのではないかと思います。戴冠した火を吹く真っ赤なグリフィンが図案化されたエンブレムは、まさにスカニアの象徴と言えるものです。

黄金の王冠を頭上に戴くこのグリフィンは、スウェーデン南部イェータランドにあるスコーネ地方の都市マルメ(Malmö)の紋章で、1437年から続く伝統あるシンボルです。マルメはストックホルム、イエテボリに次ぐスウェーデン第3の大きな都市で、18世紀に世界最大規模の造船所が建設されたことなどから製造業が栄え、早くから産業化に成功しました。スカニアは、そのマルメで1900年に「スコーネ機械製造工場」を意味する「Maskinfabriks Aktiebolaget Scania(スカニアマシンファブリスクア株式会社)」として設立されました。そしてグリフィンエンブレムは早くも設立翌年の1901年から使用されています。

スカニアは自転車の生産から始まった

スウェーデン・マルメに創業した当時のスカニア本社。

1900年のスカニア創業は、その4年前にイギリスの自転車メーカー「ハンバー・アンド・カンパニー」がマルメに子会社を設立したことに端を発します。同社を買収して始まった新会社「スカニア」は、掃除機や歯車、自転車の製造と同時に1901年に「Yellow Peril」と称された自動車(スカニアA1)を試作、さらに1902年には早くも積載量1.5tのトラックを製造。1903年には数台の量産をするまでに至りました。

一時期を除いて連綿と使用され続けているグリフィンを囲む意匠デザインは、自転車のペダルクランク部に由来する。

現在のスカニアエンブレムにも見られる赤いグリフィンを囲む円と特徴的なインバースした三角形のような意匠は、すでに1901年に初登場したスカニアのエンブレムから使われていました。このデザインは創業当時スカニアの製品だった自転車のペダルクランク部から取られています。

スカニアのエンブレムの変遷

1901年から幾度となく変更されてきたスカニアのエンブレム。左上から設立当初の1901年から1911年、ヴァビスと合併した1911年から1954年、全体的にモダンになった1954年から1969年、文字だけの1969年から1984年、当時提携を結んでいたサーブとのダブルネームになった1984年から1995年、そして現在のデザイン。

現在に至るスカニアの源流はマルメの「スコーネ機械製造工場」ともう一つ、1891年にストックホルム近郊の都市セーデルテリエに設立された「ヴァビス(VABIS)」があります。ヴァビスは「セーデルテリエ鉄道車両製造会社」を表す「Vagnfabriks Aktiebolaget iSödertelge」が意味する通り、当初は鉄道車両を製造していました。1897年には自社で設計したエンジンを搭載したスウェーデン初の国産車を登場させたほか、1902年にはスカニア同様に同社初のトラックを開発しています。そして1911年、スカニアとヴァビスは合併して「スカニア・ヴァビス」が新たに誕生しました。自動車の開発と生産はセーデルテリエ、トラックや1911年に登場したスウェーデン初のバスなど大型車両の製造はマルメが行うことになりました。現在のスカニア本社はセーデルテリエにあり、研究開発部門もセーデルテリエに一元化されています。

会社がスカニア・ヴァビスとなったことでエンブレムも変更され、VABISの文字が新たに加えられました。しかしグリフィンとそれを囲む意匠はしっかり引き継がれています。このエンブレムは1954年まで使用が続きました。

1901年から1911年まで使用された最初期のエンブレム。すでに「SCANIA」の文字が刻まれ、赤いグリフィンがその中央にいることがわかる。「Maskinfabriks Aktiebolaget」はスウェーデン語で「機械製造工場」を意味する。

スカニアがヴァビスと合併して「スカニア・ヴァビス」となってからのエンブレムでは、VABISの文字も書かれたが赤いグリフィンとペダルクランクをモチーフにしたデザインは継続された。

シンプルな図案になった1954年から1969年までのエンブレム。基本的なデザインは引き継がれている。グリフィンはほぼ現在の姿に。

1969年から1984年までの15年間はグリフィンもペダルクランクもない「SCANIA」の文字だけとなった。

1954年、従来のデザインを残したままでエンブレムの変更が行われました。文字もSCANIAとVABISのみとなり全体的にシンプルでモダンな図案に。グリフィンもほぼ現在の姿が見られるようになりました。そして1969年、スカニアは同じスウェーデンの自動車および航空機メーカー、サーブ(SAAB)と合併、サーブ・スカニアグループの一員となってスカニア・ヴァビスから「スカニア」に。それを受けてエンブレムも変更され、グリフィンとペダルクランクの意匠は消えて「SCANIA」の文字だけになりました。

1984年にグリフィンが復活。スカニアのエンブレムのイメージカラーであるブルーと大きめの赤いグリフィンが印象的。しかし1901年以来の象徴だったペダルクランクはここでは戻らなかった。このエンブレムはサーブの乗用車にも使用されていた。

しばらく文字だけのエンブレム時代が続きましたが、1984年にグリフィンが復活しました。サーブとスカニアのダブルネームを持つこのエンブレムにはペダルクランクの姿はなく、2つの円が組み合わせられた意匠が与えられています。

そして1995年。ついにペダルクランクのデザインがスカニアのエンブレムに戻ってきた。グリフィンはさらに大きくなり、その存在感を増している。

1995年、サーブ・スカニアグループが解消したことによってスカニアは再び独立した企業になりました。現在も使用されているエンブレムはこのとき採用されたデザインで、大きくなったグリフィンの周囲にはペダルクランクの意匠が復活しました。

現在のエンブレムは2016年にリニューアルされたものを使用しています。基本的には1995年のデザインを踏襲していますが、大きく変わったのは金色だった王冠が銀色になり、全体的に陰影が付き立体感が増したこと。この変更によってエンブレムはさらに洗練度をアップしました。2016年に登場した新型スカニアにも、もちろん採用されています。

スカニアのエンブレムに秘められた歴史とその意味や、モチーフであるグリフィンについて今回はお伝えしました。いかがでしたか。

スカニアは創業以来、時代を変えるような革新的な技術やアイデア、そして様々な革新的なトラックやバスを数多く送り出してきました。これらの魅力的なモデルや、それを生み出したスカニアの長い歴史についても、今後取り上げてみたいと思います。

Text:遠藤イヅル
Photos:Scania

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